直近でも5月には「はみでる!アジフライバーガー」、6月は24日から「とろけるチーズカレーバーガー」を販売するなど、毎月個性的な新商品を世に出し続けるドムドムハンバーガー。どの商品も“ドムドムらしい“と表現したくなるようなオリジナリティとインパクトを持っており、いうまでもなくSNSとの相性も抜群だ。
ドムドムのメニューはどのように開発されているのか、SNS時代に大切にしているユーザーとのコミュニケーションとは何か、ドムドムフードサービス取締役で開発部門の長でもある浅田裕介さんに聞いた。
おいしいのは当然、驚きや発見をもたらしたい
――「はみでる!アジフライバーガー」はSNSでも注目されています。
アジフライバーガーは3回目で、ドムドムでは同じ商品を販売するのが珍しいんですけど、ユーザーの要望もあって。当時はもう少し小さいサイズでしたが、それでも企画会議で「どうやって尻尾を包むんだ」といった指摘があったり、ボツになったときは「パンに挟まれてない部分はどうやって食べるんだ」と言われたり。そういった難しい点をクリアして販売しているので、ハンバーガー界の常識に捉われてないと見えるのかもしれません。
アジフライも20種類くらい試食して、アジフライのおいしさを知ってほしいとの思いから、原価は一番かかりましたが、一番おいしいものを使って出しています。ただ、3回目となると見た目のインパクトやはみ出すことが話題になるより、単純に「おいしい」という声が多いなと感じています。
――限定メニューなど個性的なハンバーガーが多いドムドムですが、メニュー開発で大事にしていることはありますか?
ドムドムでは新商品は毎月出していますが、実は根本から新しい、斬新なメニューの発売は3か月から4か月に1度くらいという位置付けなんです。そうやって安定的なものも出しながら、インパクト系のメニューを発売しているイメージで。
ドムドムの商品開発のキーポイントは、まずはおいしくて当たり前ということ、その上でドムドムハンバーガーを通して、外食するお客さんに驚きや発見とか、誰かに言いたくなる・教えたくなる何かがある、そんなハンバーガーにできればいいなと考えています。
――「驚きや発見がある」ことを大事にしているというお話は、SNSとの相性の良さにも繋がりますね。新商品のアイデアはどこにアンテナ張って、生まれるのでしょうか。
大きく二つあります。一つは、おもしろい食材を見つけたらそれを中心に組み立てていくパターンで、構成とソースの量を頭の中で考えてメモして、実際に全て作ってみるやり方ですね。もう一つは、外国の料理雑誌やレシピサイトを見て、見た目に面白い組み合わせなど気になったものからヒントを得ることもありますね。
――SNSなどで上がるお客さんの反応で嬉しいものはありますか?
内容もそうですが、やはりネットで反応の声が多くあると、やってよかったなと思います。販売数自体が多くても、ネットでの反応が小さいものも時々あるので、お客さんがアップしてくれて、その情報が共有されて広がっていくのはとても嬉しいです。
おいしいのは当たり前と言いましたが、おいしいだけだと写真を撮ってTwitterやInstagramにアップしませんからね。おいしさに加えて、おもしろい、誰かに言いたくなるようなことがないと。
「丸ごと!!カニバーガー」苦労の末の大ヒット
――これまで発売した開発メニューで、一番手応えがあったものはどれになりますか?
一番数が売れたのは「丸ごと!!カニバーガー」で、こういった商品がしっかりと売れる素地を作ったという意味ではブレークスルーとなる商品でした。
元々、ソフトシェルクラブのハンバーガーをドムドムで出したら売れそうだなと考えていたのですが、値段が高すぎるだろうなと商品化までは検討していなくて。オペレーション的にも店内でカニを揚げるのは難しいだろうと。
たまたま、その前の年にTVの“没メニュー”を取り上げる企画で紹介されたことをきっかけに「丸ごと!!カマンベールバーガー」を税込み990円で発売しました。テレビの影響もあったと思いますが、これがすごく売れたんです。
確かに値段は少し高いかもしれませんが、見た目にわかりやすいし、コスパを考えたら家で作るよりずっと安い。これが受け入れられるなら、カニもありなんじゃないか、いけるんじゃないかと、レシピ作り込んで企画会議で提案しました。
――なるほど。「丸ごと!!カニバーガー」はここから誕生したと。
いや、それが企画会議ではグロテスクさがダメなんじゃないか、と反対されました。カニが丸々入っているので、確かに人によってはそう受け取る人もいるかもしれないんですけど。なんでこんなハンバーガー作ったの、価格も高いし売れると思えない、ソフトシェルクラブなんてほとんどの人は知らないよ…など厳しい反応でしたね。
確かに少し奇抜だったとは思いますが、海外だとソフトシェルクラブをパニーニに挟んだ料理とかを見たことあったので私の中では手応えがあって。それで、最初はダメって言われたけど、何度か出すうちにいいねっていう人も出てきて、結果的に企画が通りました。
――そしていざ発売すると、大ヒットしたと。
SNSでバズって、実際に大ヒットして会社の業績もその後2ヶ月は前年比120%くらいで動いて。その後の変化として、新商品の意見が通りやすくなったり、比較的変わった商品でも出しやすくなったりしました。
あとは店舗との信頼関係ですよね。カニバーガーは、カニを揚げてチリソース絡めて、野菜を挟んでマヨネーズかけて…って工程が多く、オペレーション負荷を考えると他のチェーン店ではできないと思うんです。
それでもドムドムでできるのは店舗と開発部門を含めた本部との間に信頼関係があるからです。この信頼感はヒットメニューを繰り返し作ることで生まれているんですけど、プラス私が現場上がりなのでオペレーションの組み立てやすさも把握できていることが良い方向に働いているかなと思っています。
お客さんに喜んでもらえるヒット商品を作り続ける
――新しいメニューが生まれるまでには社内ではどんなステップがあるんでしょうか。
他の飲食チェーンであれば、今から冬のメニュー開発の準備に入るとして、「今年はチーズで」や「次の冬はきのこで」など大枠があって、そこに向けて新商品を開発することが多いと思います。一方、ドムドムは常に新作を開発していて、どんどんまだ世に出てないメニューをストックしている状態です。テーマはなく、これを作りたい、いい食材があるから使いたい、といったところからスタートして。
もう一つ、他のバーガーチェーンなどとの違いで言うと、市場調査をそれほど行わないことです。普通は競合他社の似た商品を全て揃えて、材料や量まで細かく分析すると思いますが、ドムドムの場合は自然に入ってくる情報を使うくらい。軽めの調査がベースで、固定概念にとらわれずいいものを作っていくというスタンスです。
――開発チームのミッションはどう考えていますか?
まず、目指すこととして一番大きいのは、お客さんに喜んでもらおうというのが全てです。外食の場面でドムドムを選んでもらったからには、おいしいものを食べてもらって、楽しんでもらいたい、ドムドムはおいしいって思ってもらうこと、これは絶対に譲れないところですね。
飲食チェーンの基本はお客さんからの売上なので、おいしいものを作って食べてもらって満足してもらう。これで初めて働く人間の給料が生まれるので、ここは絶対に必要だと思っています。ドムドムハンバーガーは、運営会社が数度変わって現在の体制になっているのですが、おいしくて面白いハンバーガーを売っている、という風土は変わってないと思いますね。
――会社内ではどのようなことを期待されていますか?
最近は社内的なプレッシャーが大きくて大変です(笑)。というのも、新商品を作るときは売上に寄与するように価格も少し高く設定するため、売上へのインパクトが大きいんです。予算策定の時に過去の売り上げを見ていくと、売上が伸びている月には売れた商品があるんですよね。そうすると、会社的にも同じ売上を期待するので、また売れるヒット商品を作らないといけないんです。
確かに新商品を発売するとお店の売り上げは上がります。これは開発側の施策として、価格を少し高く設定しているという理由があります。付加価値をつけて少し高い値段で売れるようにしないと、お店の中で同じ価格帯の商品の買い替えになってしまって、売上が変わりませんよね。
ただ原価率からすると、仮に通常が30%程度だとすると限定商品は50%を超えることもあります。一方で価格は倍とまでは上げていないケースも多くあります。こうした点がお客さんにわかるような設定にしてあげると、値段にも納得感を感じてもらえると考えています。
――原価率50%超はすごいですね。今後、どういったメニューを開発してお客さんに届けていきたいですか?
ドムドムはこれからもお客さんに喜んでもらえるヒット商品を作り続けることは変わらないと思います。カニバーガーを超えるものも早く出さないと、とも思っています(笑)。
お客さんには、ドムドムを通じて新しい食材を発見してもらえるように、飲食店でしかできない食材、調理方法、食べ方といったことは提案していきたいなと思います。ドムドムでの体験で、お客さんの食事の体験が広がればとても嬉しいですね。
※「丸ごとカニバーガー」や「フィッシュバーガー」などはドムドムハンバーガーPLUSでグランドメニューとして食べられます。
この記事の著者
ライブドアグルメ編集室
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