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御成門界隈に勤め始めて二ヵ月目くらいに、この店を発見した。表通りにちょっとした和食処を見つけ(週替わりのおかず3品を選ぶシステム、「酒菜屋」だったか)、量が少ないのを除けば包丁仕事が丁寧で、どの駅からも離れたこういう界隈にはいい食べ物屋がありそうに思えてきた。人の流れに気を配るようになり、何軒かの失敗の後ようやくここに辿りつくことができた。客の出の早い店で、11時40分だと少々待つことになる。12時過ぎだと、外にも行列ができている。大半がいい年のこのお客が、なんといっても店の財産だろう。料理がいいのはもちろんだが、陣頭指揮をとる女将さんが時々びっくりするような対処をしたり、言葉をかけたりするので、そういう方向の興味にも引っ張られ、発見後の3ヶ月ほとんど毎日通った。食べ歩きのこういうサイトを見て残念に思うのは、達人とかいう連中のやっているのは検索findで、発見discoverでは決してない、ということだ。他人の発見によりかかったり、すでに築かれたブランドに突進して行くだけなのだ。それでは本人も面白くないし誰も尊敬してくれないので、外国にあるそれには自分は何回も行っている、だから国内に支店ができれば排他的権利を主張できる、と思い込んでそのように振る舞う。しかしその外国の店のことは、自分ではなくガイドや噂ですでにその者は存在を知っていたはずだ。こうしてdiscoveryのない、精神の痩せこけた連中が、上げ底の感じを冬場であればコートで隠しながら大手を振って歩いて回り、こういうグルメガイドの成立当初のなんでもありの醍醐味が薄れて、どこか頭の悪い連中がキーキーやっている、とことんふざけた者どもの寄り合い所帯、とこの店で知り合ったS氏は多いに批判的だった。無論そこまでは言えまいと名誉にかけて私は反論したが、あんた、携帯で写真とっているようだが、俺の目の黒いうちはこの店のせちゃ絶対駄目だぜ、と念を押された。だが、S氏が指摘するまでもなく、手作り感が失せた東京の食の風景に危機感を感じ取り、反対に知ってもらうのもいいことだと感じ始める自分がいた。ところで、別に格別優れた料理屋ではないかもしれない。毎日通わせるものがある、ということが唯一の相違点なのかもしれない。しかし女将さんの「端近ですみません」の一言、相席になり、先の客が腰を上げて声が聞こえない距離になって「ごあいせきありがとうございました」という従業員の声かけにはなんとも言えない味わいがある。あるとき女将がティッシュお渡しして、と奥に向かった客に従う接客係に告げたが、その客がガムを噛みながら入店しからだった。チェーンの和食ダイニング、券売機を置くラーメン屋ではトータルコーディネートされていて、服装も同じだし、接客はマニュアル通りだから、一つのチームに見えて当然なのに、醸し出される雰囲気はまとまりがない。逆にパリのビストロとは似ていないのについ連想が働くこういう店は、接客のスタイルがおのおの違うのにチームスピリットがある。外国に出たらこういう店に遭遇しなければならない。失敗は多くなるだろう。それでもつづければ最終日に偶然行きつくということもあるようだ。そういう辛抱や、人同様に街に対する観察眼を鋭くする必要がある。初めて日本にやってきた外人が、この店を探し当てたら間違いなく一生の財産になることだろう。そういう外人にも二三度出会い、ほっとした。同じことを外国に出た日本人ができないはずはない。現地の人からなんとも思われていない、日本人客がひけば潰れるかもしれないチョコ屋、マカロン屋が今年もこれからの時期東京を席巻するだろうが、それはいったい何を意味しているのだろうと思う。さて具体的に料理の話をしたいが、まず金曜日の特製弁当から入るのが妥当だと言いたい。重箱の右に鶏や魚の照り焼き、中央に刺身、左側に卵焼き、揚げ物、おひたしなどのおかずを詰めているが、特に左側が好きだ。千円でごはんと味噌汁のお代わりができ、高級素材というのでもないがこの上もなく贅沢な気分を味わえる。(つづく)
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花たろう 虎ノ門店赤坂・溜池山王(虎ノ門)/ 和食一般[ 平均:
0.0pt ]
御成門界隈に勤め始めて二ヵ月目くらいに、この店を発見した。表通りにちょっとした和食処を見つけ(週替わりのおかず3品を選ぶシステム、「酒菜屋」だったか)、量が少ないのを除けば包丁仕事が丁寧で、どの駅からも離れたこういう界隈にはいい食べ物屋がありそうに思えてきた。人の流れに気を配るようになり、何軒かの失敗の後ようやくここに辿りつくことができた。客の出の早い店で、11時40分だと少々待つことになる。12時過ぎだと、外にも行列ができている。大半がいい年のこのお客が、なんといっても店の財産だろう。料理がいいのはもちろんだが、陣頭指揮をとる女将さんが時々びっくりするような対処をしたり、言葉をかけたりするので、そういう方向の興味にも引っ張られ、発見後の3ヶ月ほとんど毎日通った。食べ歩きのこういうサイトを見て残念に思うのは、達人とかいう連中のやっているのは検索findで、発見discoverでは決してない、ということだ。他人の発見によりかかったり、すでに築かれたブランドに突進して行くだけなのだ。それでは本人も面白くないし誰も尊敬してくれないので、外国にあるそれには自分は何回も行っている、だから国内に支店ができれば排他的権利を主張できる、と思い込んでそのように振る舞う。しかしその外国の店のことは、自分ではなくガイドや噂ですでにその者は存在を知っていたはずだ。こうしてdiscoveryのない、精神の痩せこけた連中が、上げ底の感じを冬場であればコートで隠しながら大手を振って歩いて回り、こういうグルメガイドの成立当初のなんでもありの醍醐味が薄れて、どこか頭の悪い連中がキーキーやっている、とことんふざけた者どもの寄り合い所帯、とこの店で知り合ったS氏は多いに批判的だった。無論そこまでは言えまいと名誉にかけて私は反論したが、あんた、携帯で写真とっているようだが、俺の目の黒いうちはこの店のせちゃ絶対駄目だぜ、と念を押された。だが、S氏が指摘するまでもなく、手作り感が失せた東京の食の風景に危機感を感じ取り、反対に知ってもらうのもいいことだと感じ始める自分がいた。ところで、別に格別優れた料理屋ではないかもしれない。毎日通わせるものがある、ということが唯一の相違点なのかもしれない。しかし女将さんの「端近ですみません」の一言、相席になり、先の客が腰を上げて声が聞こえない距離になって「ごあいせきありがとうございました」という従業員の声かけにはなんとも言えない味わいがある。あるとき女将がティッシュお渡しして、と奥に向かった客に従う接客係に告げたが、その客がガムを噛みながら入店しからだった。チェーンの和食ダイニング、券売機を置くラーメン屋ではトータルコーディネートされていて、服装も同じだし、接客はマニュアル通りだから、一つのチームに見えて当然なのに、醸し出される雰囲気はまとまりがない。逆にパリのビストロとは似ていないのについ連想が働くこういう店は、接客のスタイルがおのおの違うのにチームスピリットがある。外国に出たらこういう店に遭遇しなければならない。失敗は多くなるだろう。それでもつづければ最終日に偶然行きつくということもあるようだ。そういう辛抱や、人同様に街に対する観察眼を鋭くする必要がある。初めて日本にやってきた外人が、この店を探し当てたら間違いなく一生の財産になることだろう。そういう外人にも二三度出会い、ほっとした。同じことを外国に出た日本人ができないはずはない。現地の人からなんとも思われていない、日本人客がひけば潰れるかもしれないチョコ屋、マカロン屋が今年もこれからの時期東京を席巻するだろうが、それはいったい何を意味しているのだろうと思う。さて具体的に料理の話をしたいが、まず金曜日の特製弁当から入るのが妥当だと言いたい。重箱の右に鶏や魚の照り焼き、中央に刺身、左側に卵焼き、揚げ物、おひたしなどのおかずを詰めているが、特に左側が好きだ。千円でごはんと味噌汁のお代わりができ、高級素材というのでもないがこの上もなく贅沢な気分を味わえる。(つづく)