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ひげおじさんさんの自己紹介

ひげおじさんさんの写真  パリの路地を歩いていると、両側の建物が古い家具のように思えてくることがある。それは無数の引き出しを持っていて、これで終わりかと思えばまだどこかに隠し戸を持っているといったふう。中身を取り出し、隅々まで洗い出したつもりになって、元の鞘に収めてしばらくすると、引き出しの裏側が問題だったんじゃないか、と後悔したりする。ぱっと見た感じから言えば、静かだったり沈んでいたりするだけなのに、一本の小道が奥のほうに箱をいくらでも持っていて、引き出しを自分で開けようとしない限り、それを見せようとしない。またその人の開け方次第で中身は違って見える変幻自在さがある。
 東京の路地も似たようなものかもしれないが、引き出しの数がまるっきり違う。これはフランス人が、フランスという国が、というより、パリという一個の都市が異常だということだろう。
 この半年くらい、小旅行を思い出しながらいろいろ書き連ねてきて、以前ならすぐにでもまたあの場所に帰りたいという気がしたが、今はそうでもない。少なくとも食べ物への関心はだいぶ薄くなった。あれこれ食べてもうそれなりに食べ尽くしたということもあるし、しばらくはパリの食は発展しない、革新への萌芽が見られない、と決めてかかっているからだろうか。ミシュランが悪い方向にシフトしてしまい、ロブション、デュカス、ガニエールらのセカンドレストランが星を取るという事態が、保守性の象徴というふうに思われる。一言で言えばプロデュース派がのしてきて、職人の居場所が少なくなってきた。モードと同じく食もブランド力の時代に突入したのだ。
 路地裏という日陰で地道に求道精神を発揮する料理人もいるのだろうが、発掘するだけの条件が自分には整っていない。機会や条件に恵まれたとしても、そういうことはもうしないかもしれない。やるとすれば、レストラン探訪よりも、惣菜屋の探検のほうが面白そうだ。
 レストラン料理としてのフランス料理は、フランス革命以後、宮廷お抱えの料理人が食を失い、街場に店を構えたのが始まりといわれる。宮廷料理は、見映えのするよう宴会を盛り立てる役割が強調されていたから、現在の「何もかもその場で、オーダーが入ってから一手ずつ」とは正反対の性質を持っていた。もう一点、「一度に大量に」と「一組の客のために少しずつ」という二項対立もある。美食の観点からいえば、新しいやり方のほうが優れているが、「冷めても食べられる」、「大量に仕込む」ことの利点も捨てがたい。伝統料理の良さが唯一残るのは、レストランではなく、惣菜屋ということになり、これが街の宝物として輝きが増してきた。
 かつては(およそ二十年前までは)ビストロに古い料理が温存されていたが、今では見事に刈り取られてしまったといえるだろう。ヌーベルキュイジーヌの時代を生き抜いた料理人の技術がメソッドとして確立され、若い料理人志望者は、古い時代の料理を知ることなく、最新の技術を短期間で習得し、うまくいえば30歳前後で自分の店を持てるようになっている。これがジャーナリズムの言う「ネオ・ビストロ」という潮流だ。だが、こうした傾向がこちらの意欲をさらに減退させているところもある。やはりただ通過すると、脆弱さが際立つことになる。
 お菓子はもう充分食べた、食べ尽くした。惣菜屋も、かなり開拓した。そしてだいぶ枯れてきた(もう老人の域)。パリのことを思い出し思い出し綴っても、あれを食べたい、という欲求がめったにおこらない。今ぼくのパリへの興味と言ったら、魔法道士、グノーシス、ヘルメス学、隠秘主義、錬金術、といった言葉から想起されるイメージの総体になった。パリはこうした主義、思想の実践道場だったのだ。サンシュルピス大聖堂は、ピエール・エルメへの入口ではなく、二十五歳の若さでこの教会の伝道師になった「エリファス・レヴィ」ゆかりの地に変わった。ただ、ピエール氏のエルメHermesという苗字はちょっと気にかかる。本名でなければ、エルメ、すなわちヘルメス(学)であり、彼は菓子職人として錬金術に日々勤しんでいる、魔法道士の一人という主張になるのだから。
年代
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得意ジャンル
どれにも当てはまらない
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性別
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ひげおじさんさんの評価の高いお店

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ひげおじさんさんの最新クチコミ

揚子江 多摩/ 中華料理一般

2009/10/21 評価:00pt
 居住地からは、三鷹も吉祥寺も東小金井もほぼ等距離にあるが、小金井を自分のテリトリーに含めて考えたことはほとんどない。虫が多く、蛇が木からぶら下がっている、といった貧困なイメージしか浮かばない。これだけの町のはずはない。いいソーセージ屋があると聞いて、ある日そっちに向かった。太ったチョリソーを調達し、3時すぎで店はどこもみんなしまっている…(続きを読む

ジークレフ 中野-三鷹/ 紅茶専門店

2009/10/07 評価:55pt
最近ダージリン以外の紅茶が良くなってきていて、その代表が、アッサム。この店でセレクトした、昨年のメレン農園、ハルマリ農園は、ミルクを入れるとかえって持ち味が失われた。ストレートで飲むべきタイプの新しいアッサムは、在来品種をもとにして、掛け合わせで作ったクローナル種から作られるらしい。あのアッサムの太い骨格がないのは、遺伝子のレベルで別モノ…(続きを読む

シニフィアン・シニフィエ 東急沿線/ パン

2009/03/16 評価:55pt
 出が遅いせいで、狙いの「チャバタ」たいてい売りきれている。その日は渋谷から歩こうと思い立ち、おかしいおかしい、ないないと思っているうちに駒澤大学を通り越していた。後戻りにしてようやく左折の(引き返したので実際には、右折)ポイントを見つけ、日が暮れたころに辿りついた。めぼしいものはなく、消極的に食パン、すなわちパンドミのハーフを頼んでみた…(続きを読む

そば処港屋 赤坂/ そば

2009/01/03 評価:00pt
インテリアに凝っていて、立ち食い蕎麦屋にしては広い店内は、中央に不忍池が蓄えられている。広さを生かさずじまいで、客は睡蓮の代わりに海苔が散った水面を眺めながらもくもくと蕎麦をすすっている。昼時には付近の店から嫉妬されそうな大行列ができるが、そこはGlassdoorが11000社の中から選んだ「いい会社」ランキング、ベストテン入りを果したV…(続きを読む

花たろう 虎ノ門店赤坂/ 和食一般

2009/01/02 評価:00pt
御成門界隈に勤め始めて二ヵ月目くらいに、この店を発見した。表通りにちょっとした和食処を見つけ(週替わりのおかず3品を選ぶシステム、「酒菜屋」だったか)、量が少ないのを除けば包丁仕事が丁寧で、どの駅からも離れたこういう界隈にはいい食べ物屋がありそうに思えてきた。人の流れに気を配るようになり、何軒かの失敗の後ようやくここに辿りつくことができた…(続きを読む

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ひげおじさんさんが企画した特集

リュスティックいろいろ

リュスティックいろいろ

~見直される古いパン~

微量のイーストによる長時間発酵、薄い皮、成形なし、気泡たっぷり、水分たっぷり、持った感じからして軽い、というのがリュスティックの特徴。本来「田舎風の、粗野な」という意味だから、最先端をゆくパン屋さんの…

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