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ひげおじさんさんの自己紹介

ひげおじさんさんの写真  「カフェ セレクト」の窓際に陣取って、今年もまた11月をパリで迎えられるという幸せに酔う。サンジェルマン大通に面したこのカフェからは、秋から冬へと素早い変体を遂げる街という「一匹の不定形の虫」のありようをつぶさに観察することができる。東京が、紺、黒、灰色で覆われた街なら、パリの街には、白、ベージュ、茶色、モスグリーンがいい具合に交じり合い、石造りの建物に映える。やはりこの生物(いきもの)には何にも換え難い魅力がある。その内部にこうして巣食うのはもう一匹の虫だ。
 カトラリーをめぐる乱雑な議論の種はまだ尽きそうにない。ふとした弾みから考え始めたことだから仕方がないが、論旨の展開が相変わらずに唐突で不明確、例示が不十分なのはわかっている。2杯目のエスプレッソを飲み干し、担当のギャルソンに合図をする。アイスクリームの盛り合わせを、と頼む。異なる色の球形を三個入れたグラスは、南米出身らしきギャルソンが、手首の内側に彫り込んだ蠍の刺青を見せつけながら右手でテーブルに置いた。左手で紙で作った飾りの小さなパラソルをパッションに突き刺してうっすら微笑んだ。添えたカトラリーは、柄の長いスプーン――少しの間また通りを眺め、目と目が合ったから、向こうがそうするのでこちらも少し顔を曲げて微笑んでみる。「手首の蠍」は、パリではホモセクシャルを意味する符丁として通用する。
 パッションのパラソルを取り去り、柄の長いスプーンで、その下のポワール、さらに下のカシスを緩やかな手つきで混合する。このカトラリーは、ヨーロッパ料理の後進性の現れだろうかと自問する。そう思いたいところだが、これは手の延長、すなわち手食ではないか。3種がほどよく混ざり、しかもカシスのつぶつぶが切り混ざるのだ。摂食手段の原初的形態は手食で、そこから西のカトラリー、東の箸に分化して行ったが、一神教の国々の中で特にキリスト教文化圏に属する国のいくつかが科学の分野で圧倒的な勝利をおさめ、かれらはそれを鼻にかけて文化の高低にも嘴をつっこみ、自国優位の物差しを勝手にふるい、あたかもカトラリーの使用が洗練、不使用が非洗練、箸はカトラリーの亜種(不十分なカトラリー)との見解を公にし、料理そのものの高低もこれに準ずるとした。しかし、西の極、英国の食がもっとも洗練されているのか。手食の国々は、自国の経済がふるわなくとも、経済力の強い国でレストラン業を営み、成功している。英国が出稼ぎ労働者を出す国になったとして、かれらはインドでレバノンで「英国料理店」の看板を掲げて営業が成り立つのか、考えるまでもないことだ。カトラリーの種類がもっとも多く使い方にもやかましいのは英国だ。「シルバーをずらりと並べられるのでフランス料理はちょっと…」こんな台詞をかつては聞いたが、これは英国流のテーブルセッティングで、フランスではそんなことをしない。英国の料理は、世界でもっとも水準が低い。それが米国に、オーストラリアやニュージーランドに飛び火して、もっとひどいことになった。こうなったことの根拠を「カトラリーの発達」ただ一つに求めるのは冒険だろうが、しかし多くの部分で当たっているだろう。料理は、手食→箸の図式の中で発展し、手食→カトラリー の経過において発展が阻害され、20世紀後半から衰退の一途を辿ったと考えるのは、我田引水の謗りをまぬがれないにしろ、検討に値する仮説であろう。しかし、
 ギャルソンがさっきから流し目を送ってくるので、こっちも顔を左側に向けつつ瞳を男のほうに流してやる。男との距離がどんどん縮んでくる。実際の距離も、ココロの距離も。「手首の蠍」氏は脈あり、「自分の友達」として今夜のことに思いをはせ、ダブルベッドに置いた三つの縫いぐるみや、壁に貼ってある美少年のヌード写真がそのままの位置で良いかに思いを巡らせてる(はず)。案の定、次に男の取った行動はこの推測を裏書した。伝票の裏に何事か書きつけ、かさつき加減で皺だらけの浅黒い頬に笑いを大きく広げ、テーブルに伏せて置いた。
 しかし、「カトラリーの国」が手食を完全に捨てたのではない。手食が原初的形態である以上、それが消えることはない。グラスに盛りつけたアイスクリーム用の柄の長いスプーンは、手食の延長である。そもそもカトラリーの中でもっとも手に近いのはスプーンだ。フォークは先が五つに分かれていても、指で何かを突き差す行動を人間が取ることはめったにない。それに比べて手で窪みを作ることは頻繁に行われる。中国のレンゲ、韓国で発達したスプーンの文化は、同じように手食の補助手段であり、手食→箸 の流れの中間地点に位置すると考えられる。箸とスプーンの共存は無理がないのだ。
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どれにも当てはまらない
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性別
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ひげおじさんさんの評価の高いお店

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ひげおじさんさんの最新クチコミ

ジャンポール・エヴァン 伊勢丹新宿店新宿/ ケーキ

2009/11/19 評価:11pt
チョコの帝王JPがかつてはボルシチなどのロシアっぽい料理を看板メニュにした喫茶店を営んでいたことをご存知だろうか。実際にJPがボルシチを仕込んでいる様子を肉眼で確認したわけではないが、自著で「プチ・ブレ」を開店した、とあるから間違いない。7区モットピケ通りの「プチ・ブレ」と同じ場所に現在のJPはある。「プチ・ブレ」はJPの前身だったのだ。…(続きを読む

揚子江 多摩/ 中華料理一般

2009/10/21 評価:00pt
 居住地からは、三鷹も吉祥寺も東小金井もほぼ等距離にあるが、小金井を自分のテリトリーに含めて考えたことはほとんどない。虫が多く、蛇が木からぶら下がっている、といった貧困なイメージしか浮かばない。これだけの町のはずはない。いいソーセージ屋があると聞いて、ある日そっちに向かった。太ったチョリソーを調達し、3時すぎで店はどこもみんなしまっている…(続きを読む

ジークレフ 中野-三鷹/ 紅茶専門店

2009/10/07 評価:55pt
最近ダージリン以外の紅茶が良くなってきていて、その代表が、アッサム。この店でセレクトした、昨年のメレン農園、ハルマリ農園は、ミルクを入れるとかえって持ち味が失われた。ストレートで飲むべきタイプの新しいアッサムは、在来品種をもとにして、掛け合わせで作ったクローナル種から作られるらしい。あのアッサムの太い骨格がないのは、遺伝子のレベルで別モノ…(続きを読む

シニフィアン・シニフィエ 東急沿線/ パン

2009/03/16 評価:55pt
 出が遅いせいで、狙いの「チャバタ」たいてい売りきれている。その日は渋谷から歩こうと思い立ち、おかしいおかしい、ないないと思っているうちに駒澤大学を通り越していた。後戻りにしてようやく左折の(引き返したので実際には、右折)ポイントを見つけ、日が暮れたころに辿りついた。めぼしいものはなく、消極的に食パン、すなわちパンドミのハーフを頼んでみた…(続きを読む

そば処港屋 赤坂/ そば

2009/01/03 評価:00pt
インテリアに凝っていて、立ち食い蕎麦屋にしては広い店内は、中央に不忍池が蓄えられている。広さを生かさずじまいで、客は睡蓮の代わりに海苔が散った水面を眺めながらもくもくと蕎麦をすすっている。昼時には付近の店から嫉妬されそうな大行列ができるが、そこはGlassdoorが11000社の中から選んだ「いい会社」ランキング、ベストテン入りを果したV…(続きを読む

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リュスティックいろいろ

リュスティックいろいろ

~見直される古いパン~

微量のイーストによる長時間発酵、薄い皮、成形なし、気泡たっぷり、水分たっぷり、持った感じからして軽い、というのがリュスティックの特徴。本来「田舎風の、粗野な」という意味だから、最先端をゆくパン屋さんの…

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