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滋賀県東近江に本店をおく「招福楼」の御主人、中村秀太良氏は「椀の成功は懐石の成功を意味する。」との名言を吐かれた。まだ滋賀の本店には伺ったことはないが、東京丸の内ビルディング三十六階にある「招福楼 東京店」は、その料理の味と接客の良さにひかれて何度も訪れている。本日訪問した日本料理「赤寶亭(せきほうてい)」の主人も名店「招福楼」の御出身であるときいた。 八月の上旬、地下鉄表参道駅A2出口を上がると、外はむされたように暑い曇天の昼下がりである。地図をたよりに本通りから脇道に入り、噴出す汗に抗うように牛歩の如く歩んでいくと、十分ほどで目当ての料理店を見つけた。赤地に白抜きの「赤寶亭」の店名が灯る門柱から、打ち水の行届いた石畳を飛び越えて、白紗の暖簾を押し分け遣り戸を開けると、玄関先には居住いを正して客を出迎える女将と、若い板前見習いの姿があった。 私達は階段を上った二階テーブル席(三卓)の奥にある、八畳ほどの掘り炬燵式の和室に案内される。料理をゆっくり楽しもうと希望しておいた個室は別途個室料(座敷・五千二百五十円)がかかる。「赤寶亭」の昼餐は「昼のコース」(五千二百五十円)が主体となるようだが、私は日本料理とはプライス・イコール・クオリティが顕著に具現されるものと思っているので、予め「おまかせコース」(一万八千九百円)をお願いしておいた。 飾り団扇が掛けられた床の間には、信楽焼きの花器に、水引の赤い小花と純白な一輪の槿(無窮花)の花が活けられて、一服の清涼剤のように私達を持て成した。まずはエビスビール(八百円)で喉を潤した。料理に合わせた日本酒は、岐阜の三千盛(純米酒 千百円)と高地の司牡丹(純米大吟醸 二千円)など冷酒で嗜んだ。本日供された料理はつぎのとおりだ。 ・先付け「胡麻豆腐 生海胆添え(紫蘇の葉・山葵)」 ・椀物「牡丹鱧と冬瓜のお椀(隠元)」 黒に塗られた汁椀は、身は外側に蓋は両面に、夏の風物詩、花火が沈金模様でほどこされている。鱧の細かな脂がキラキラ浮かぶ透明なだし汁は、「招福楼」の系譜に従って、滋賀の水に、拘りの鰹と昆布の旨みが引き出されたもので、出汁の余韻に長くひたれるものだ。 ・お造り「鯛の薄造り、鮪中トロ、車海老(花胡瓜・おかひじき)」 鯛の薄造りは、添えられたオカヒジキを巻いてポン酢で食べる。大変上質な造りである。 ・焼物(魚)「山形産天然アユ、青森産天然ウナギ」 ・八寸「煮鮑、銀杏、蓴菜、鯵の小袖寿司、山桃の赤ワインゼリー」 数枚の団扇を組み合わせたデザインの皿で八寸は供される。蓴菜は兵庫県三田産、山桃赤ワインゼリーはホオズキのオレンジ色の袋状の萼が器となった。 ・焼物(肉)「米沢牛、アスパラ、トマト、ミョウガ」 牛肉は辛子醤油、付け合わせの野菜は手間を惜しまぬ黄身酢で賞味する。 ・炊き合わせ「茄子、オクラ、南京、厚揚げ(針生姜添え)」 ・ご飯「新生姜の炊き込みご飯、トロロ昆布の赤出汁、茄子・胡瓜の漬物」 ・水菓子「葡萄、メロン、スモモ(貴陽)、パッションゼリー」 ・甘味「黒豆の水羊羹、薄茶」 料理全体の印象は、コース値段に見合った材料が惜しみなく提供され、品数もボリュームも十分満足できるものに思えた。供された料理は、どれも私の口には合って美味しく感じられる。料理は当然に「招福楼」を彷彿とさせるものも多かった。比較すれば卓越した味わいは互角であり、絢爛さにおいては「招福楼」の方が勝っている。配膳などは女将、熟年仲居、若い板前見習いの三名が担当されたが、そのサービスレベルは高いものに感じられる。特に感心したのは一年前から入ったという、板前見習いの凛とした躾の良さである。店の主人の高潔な人柄が推察された。 ミシュランガイド東京の掲載店には首を傾げたくなるような料理店も多いのだが、ここ日本料理「赤寶亭」は、正に星付きに相応しい料理店である。店は隠れ家のように小ぢんまりとしてはいるが、素晴らしい和食店に思えた。 ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。 http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/
昼 15,000~25,000円
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赤寶亭 原宿・表参道・青山(外苑前)/ 懐石料理[ 平均:
4.0pt ]
滋賀県東近江に本店をおく「招福楼」の御主人、中村秀太良氏は「椀の成功は懐石の成功を意味する。」との名言を吐かれた。まだ滋賀の本店には伺ったことはないが、東京丸の内ビルディング三十六階にある「招福楼 東京店」は、その料理の味と接客の良さにひかれて何度も訪れている。本日訪問した日本料理「赤寶亭(せきほうてい)」の主人も名店「招福楼」の御出身であるときいた。
八月の上旬、地下鉄表参道駅A2出口を上がると、外はむされたように暑い曇天の昼下がりである。地図をたよりに本通りから脇道に入り、噴出す汗に抗うように牛歩の如く歩んでいくと、十分ほどで目当ての料理店を見つけた。赤地に白抜きの「赤寶亭」の店名が灯る門柱から、打ち水の行届いた石畳を飛び越えて、白紗の暖簾を押し分け遣り戸を開けると、玄関先には居住いを正して客を出迎える女将と、若い板前見習いの姿があった。
私達は階段を上った二階テーブル席(三卓)の奥にある、八畳ほどの掘り炬燵式の和室に案内される。料理をゆっくり楽しもうと希望しておいた個室は別途個室料(座敷・五千二百五十円)がかかる。「赤寶亭」の昼餐は「昼のコース」(五千二百五十円)が主体となるようだが、私は日本料理とはプライス・イコール・クオリティが顕著に具現されるものと思っているので、予め「おまかせコース」(一万八千九百円)をお願いしておいた。
飾り団扇が掛けられた床の間には、信楽焼きの花器に、水引の赤い小花と純白な一輪の槿(無窮花)の花が活けられて、一服の清涼剤のように私達を持て成した。まずはエビスビール(八百円)で喉を潤した。料理に合わせた日本酒は、岐阜の三千盛(純米酒 千百円)と高地の司牡丹(純米大吟醸 二千円)など冷酒で嗜んだ。本日供された料理はつぎのとおりだ。
・先付け「胡麻豆腐 生海胆添え(紫蘇の葉・山葵)」
・椀物「牡丹鱧と冬瓜のお椀(隠元)」
黒に塗られた汁椀は、身は外側に蓋は両面に、夏の風物詩、花火が沈金模様でほどこされている。鱧の細かな脂がキラキラ浮かぶ透明なだし汁は、「招福楼」の系譜に従って、滋賀の水に、拘りの鰹と昆布の旨みが引き出されたもので、出汁の余韻に長くひたれるものだ。
・お造り「鯛の薄造り、鮪中トロ、車海老(花胡瓜・おかひじき)」
鯛の薄造りは、添えられたオカヒジキを巻いてポン酢で食べる。大変上質な造りである。
・焼物(魚)「山形産天然アユ、青森産天然ウナギ」
・八寸「煮鮑、銀杏、蓴菜、鯵の小袖寿司、山桃の赤ワインゼリー」
数枚の団扇を組み合わせたデザインの皿で八寸は供される。蓴菜は兵庫県三田産、山桃赤ワインゼリーはホオズキのオレンジ色の袋状の萼が器となった。
・焼物(肉)「米沢牛、アスパラ、トマト、ミョウガ」
牛肉は辛子醤油、付け合わせの野菜は手間を惜しまぬ黄身酢で賞味する。
・炊き合わせ「茄子、オクラ、南京、厚揚げ(針生姜添え)」
・ご飯「新生姜の炊き込みご飯、トロロ昆布の赤出汁、茄子・胡瓜の漬物」
・水菓子「葡萄、メロン、スモモ(貴陽)、パッションゼリー」
・甘味「黒豆の水羊羹、薄茶」
料理全体の印象は、コース値段に見合った材料が惜しみなく提供され、品数もボリュームも十分満足できるものに思えた。供された料理は、どれも私の口には合って美味しく感じられる。料理は当然に「招福楼」を彷彿とさせるものも多かった。比較すれば卓越した味わいは互角であり、絢爛さにおいては「招福楼」の方が勝っている。配膳などは女将、熟年仲居、若い板前見習いの三名が担当されたが、そのサービスレベルは高いものに感じられる。特に感心したのは一年前から入ったという、板前見習いの凛とした躾の良さである。店の主人の高潔な人柄が推察された。
ミシュランガイド東京の掲載店には首を傾げたくなるような料理店も多いのだが、ここ日本料理「赤寶亭」は、正に星付きに相応しい料理店である。店は隠れ家のように小ぢんまりとしてはいるが、素晴らしい和食店に思えた。
ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/
昼 15,000~25,000円