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達磨 雪花山房
いつも主に北関東でお蕎麦をいただいて、まあ田舎蕎麦は別物として(田舎蕎麦には田舎蕎麦のあらがえない魅力が有るのです)、一茶庵系のお蕎麦が好きでたまらない私には、全国に今の形のお蕎麦を広めた片倉康雄(友蕎子)の片腕を務めた高橋名人のお蕎麦をいただくのは念願でした。友蕎子もですが高橋名人もそば打ち教室を開いてそば打ちの極意を広く伝授しています。いつもいただいている北関東のお蕎麦は、昔はぶっとくあか抜けない蕎麦が多かったですが、今では名人達の蕎麦打ちの技がこんな北関東の田舎にも根付いて、東京にも負けないお蕎麦をいただけるようになりました。もともと北関東では蕎麦を栽培してますし(八溝系の常陸秋蕎麦は大変有名です)、各家庭で蕎麦を打つ事が多く、かつての母の手打ち蕎麦はつなぎ分(山芋など)の多いもっさりしたお蕎麦でした。現在では末端まで蕎麦打ちの技は広まり、田舎のばあさんの母でさえ、蕎麦粉は三たて(挽き・打ち・茹でたて)だとつなぎ無しでも繋がるんだよと言い放ち、昔とは違う細めのお蕎麦を打ってくれるようになりました。それもこれも名人達が旨い蕎麦を打つ極意を、分け隔てなく一般人にまで広げてくれたおかげですね。
近年、高橋名人の人気は凄まじいものが有り、名人は新蕎麦の頃に各地の蕎麦祭りに「達磨・雪花山房」として出店されますが、どこでも「達磨」は大人気で大行列のようです。一般のお客さんもですが、出店されてるお店の方々も名人が蕎麦を打つ所が見たくて、名人が蕎麦打ちしている周りは黒山の人だかりです。私も昨年(2006年)、名人を追いかけて常陸太田(旧 金砂郷)で行われた常陸秋蕎麦祭りに行きましたが、高橋名人は、素人蕎麦打ち名人決定戦の審査委員長を務めていたので、2日目は店を早じまいしていて蕎麦が売り切れでいただけませんでしたー。その蕎麦打ちコンテストの高橋名人の総評を聞いたのですが、総評は厳しくも心温かいものでした。激しくかいつまむと、「常陸秋蕎麦は蕎麦粉自体が素晴らしいので、それにあまり頼らず精進しなさい。そうすればもっとうまい蕎麦を打つことが出きる。」と言う内容だったような。まあ、本当にその通りで、常陸秋蕎麦祭りでもちろん蕎麦もいただきましたが、蕎麦の色だけで判断して(あまりに美しいグリーンだったので)選んだ店はイマイチで有ったり、こちらのそば祭りコンテストの歴代名人の店の蕎麦は、見た目からもはっきりと旨さが分かるような蕎麦でした。美味しい蕎麦って見た目が美しいのですよ。このお祭りでは、どの店も最高級の常陸秋蕎麦のそれも新蕎麦の粉を使ってるわけで、それでこんなに差が出てしまうなんて、蕎麦打ちは奥が深いなあと心に刻みました。
「達磨・雪花山房」は広島のお店は月に数える程しか開いておらず、各地を蕎麦行脚しています。各地の蕎麦祭りなど環境が整っていない場所でも最善の蕎麦が打てるように、蕎麦打ちの設備の整った特注車「達磨号」で廻ってます。常陸秋蕎麦祭りでは、お蕎麦をいただけなかったんですが、関東地区でも新蕎麦の時期以外にもデパートの催事の目玉として出店するので、その際にようよういただく事が出来ました。
初めていただいた「達磨」のお蕎麦は、文句無く美味しかったです。蕎麦粉の香りはやや弱めかなと思いましたが、蕎麦の太さといい喉ごしの良さといい、うーん、オイシーですよう。汁もまた鰹の香り高く、蕎麦を汁につけて手繰ると、初めはしゃっきりした蕎麦の食感と香りを楽しみ、その後にまったりしたような旨味が追っかけてきます。いやー、この旨味はなんなんでしょう。蕎麦粉と汁の相乗効果だと思いますが分かりませんです。もともと「達磨」はせいろしか置いてなくて、上限が三枚までで枚数でオーダーします。私は、二枚でお願いしました。一枚いただくと絶妙のタイミングで二枚目が出されます。一枚目も二枚目もほぼ同じ蕎麦です。もう一回食べたくて次の週にまた行って二枚いただいたので合計四枚いただきましたが、どの蕎麦にも差を感じませんでした。いや、これって凄い事ですよ。「達磨」のお店の方達は、本当にきっちりと持ち場が決まっているようで催事の混雑にも関わらずなんのカオスもなく整然と蕎麦を提供して下さいます。なんて言うかな一流ってこう言う事なんでしょうね。
デパートの催事の楽しみとして、蕎麦打ちのブースが有って、高橋名人の蕎麦を打ってる様子がガラス越しに拝見出来ました。流石に粉から丸く纏めるまでは手伝いに来てるお弟子さん達がやってましたが、昼休憩を取ったりする以外、名人が一人で黙々と打っていました。いやー、この蕎麦打ちの様子は何度見ても面白いですよ。無駄の無いなめらか動作で見惚れてしまいました。蕎麦打ちシロウトだもんで感銘を受ける場所が違うだろうと言うお叱りの声が聞こえてきそうですが、丸く伸ばした蕎麦を、あっと言う間に四つ出ししちゃう所なんて、何度見ても魔法みたい。
2007年もそろそろ新蕎麦の時期ですね。あちこちの新蕎麦祭りで、「達磨」のお蕎麦がいただけると思います。私も、またどちらかでいただきたいわあ。もう有名になりすぎて高橋名人無しでも人が呼べるからなのか、2007年は常陸秋蕎麦祭りには不参加なのですね。私が関東在住なので関東地区の事ばかりで恐縮ですが、11月の横浜そごうか、年末の永田町黒澤そば会で「達磨」の蕎麦がいただきたいなあと思っています。北関東で蕎麦をあちこちいただいてますが、どうしても思い込みや固定観念に支配されてましたが(蕎麦粉は、金砂郷 赤土地区、海苔は不可、必ずせいろを薬味無しで食べるべしとか)、私の中で「達磨」の蕎麦がスタンダードとなった今は、ツマラナイ概念から解放されてお気楽極楽でゴザイマスよ。もうサラダ蕎麦だの、へんてこな変わり蕎麦食べても、揺るぎない蕎麦のスタンダードが有るから大丈夫だあ。(07年10月)