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東神田・岩本町のうらぶれた商業地区のとある一角、路地裏にひっそりとたたずむインド料理「ナーランダ」。 夜ともなれば、近隣界隈の勤め帰りのサラリーマンならいざ知らず、人通りもまばらで場末の寂寥感が漂うこの路地裏にぽつねんと一軒灯りが点る。赤提灯の居酒屋でも酔客相手のらーめん屋でもない。よーく、目を凝らしてみれば、インド料理の文字が。。。 現在、都内で有に500店は数えようというあまたひしめくインド料理界に2006年12月、突如として彗星のごとく現われたのが、この「ナーランダ」だ。 オープンして1年余り。この「ナーランダ」の秘めたる非凡なる実力に、実際に虜となるインドカレー・フリークの方も多いと推察する。場違いな喩えや物言いかも知れず恐縮であるが、相撲で言えば、新入幕の平幕力士が実力のある並み居る上位陣、横綱をはじめ、大関・関脇をことごとく破り、大金星をあげるくらいの「殊勲賞」・「技能賞」力士に匹敵するといっても過言ではない。都内、あるいは近郊に住んでいるインドの同胞にも厚く支持されており、日印問わず着実にファンは増えているのだ。かく言う私も何を隠そう「ナーランダ」信奉者である。 私がはじめて「ナーランダ」を訪問したのが、ちょうど1年ほど前の2007年2月末。晩冬の底冷えのする夕刻、じんわりと足元から忍び込むような寒さで思わずコートの襟を立てながら、店のある場所がわからず、東神田・馬喰町の界隈をウロウロとさまよったことを覚えている。カレー激戦区の銀座や神保町でもなく、この神田の外れにある、人通りもまばらなこんな場所に、唸るようなスゴイ店があるというのだ。その情報源は、エスニカン氏の東グルへのクチコミ投稿記事。(*「ナーランダ」のオープンをレポートされていたので確か2006年12月中旬頃の投稿記事だったかと思います。)氏の記事内容を拝見し、「ナーランダ」に少なからず行ってみたいと思う理由が2つあった。一つ目は、「ナーランダ」のオーナー関係者がインド料理・飲食業経営だけでなく、もともとスパイス卸業に携わっているということ。本業でスパイス商を営んでいるのであれば、店で使うスパイスも質の高い共通のものが料理にも用いられているはずで、客側からみれば、まがい物やごまかしがないだろうというのが、これまでの経験であり、私見である。都内・某所で飲食店を経営するある外国人オーナーの方から聞いた話であるが、都内の一般のインド料理店、とくに多店舗展開をしているような大手チェーン店では、毎日の各店舗での仕込みでスパイスの使用量が半端にならないくらい大量に使うので、仕入れコストの安い中国製のターメリックやチリ・パウダーなど各種スパイス類を業務用で大量に買い付けているのは半ば当たり前という。委細詳細は忘れてしまったが、化学調味料なし・混じりけなしのインド産天然のスパイスと中国産のそれらのものとは卸売り末端価格でも大そうな開きがあるらしい。 二つ目は、昨今この何かと世知辛い世の中で、困った仲間を同胞どうしで助け合うという人情味にあふれる、「ナーランダ」が2006年暮れ、師走も押し迫ったこの東神田の場所で、どうにか開店まで漕ぎ着けたという誕生秘話だ。以前の勤務先から不運にも解雇?されてしまい、職も住むところも失った料理人を仲間のインド人がなけなしの資金を出し合って空き店舗を買い取り、新生インド料理「ナーランダ」として、再出発させたという。なんだか、泣けてくるような話じゃねーか。とばかりに、これは一度くらいは行ってみないとという気持ちになってしまった。 で、実際に訪問をしてみると、やはり噂に違わず、出てくる料理の質の高さに正直、舌を巻いた。界隈の商店や人づたいに聞き回って、ようやく辿り着いたのが、くだんの路地裏にあるさえない外観の「ナーランダ」である。引き戸の入り口から入って右奥のカウンター席の端に着く。以前は中華料理屋か、らーめん屋であったのであろうと思しき店舗をそのまま居抜きで使っている。こうした非インド料理屋的外観とそこからイメージされる料理の内容と、しかし実際に提供される料理とのギャップに面食らってしまった。以来、昨年1年で、10回ほど訪問する機会を数える。いずれも夜の勤め帰りか、あるいは土曜の昼の訪問だ。 さて、前置きが長くなってしまったが、肝心の料理は実際にはどのようになっているのだろうか。「ナーランダ」では、いつもディナーのCセット(1,280円)が私のお決まりの注文パターンだ。パパドに小ポーションのカレー2種、炊きたてのサフラン・ライス、ミニ・サラダ、焼きたてのナンに、ジューシーであつあつのタンドリーチキン、アフタードリンクのチャイまで付いて、盛りだくさんでこの値段である。ランチ価格ではなく、ウソでもない正真正銘の夜のディナー・セット(ターリ)がである。こんなにCPが高い店は、都内広しと言えど、ちょっとやそっとではないだろう。これが、「ナーランダ」ではデファクト価格なのだ。まず、ポイントの1点目、CPが高いこと。 2点目であるが、やはり、「ナーランダ」の一番の長所である一品一品の料理に対する丁寧な作りを挙げねばなるまい。最初の訪問の時から、いつも関心するのが、この料理作りへの姿勢、仕事の丁寧さである。これは、違う種類のカレーをオーダーする際、小ポーション・カレーでもひとつ、ひとつきちんと丁寧に調理の工程を省略することなく、きちんと作っているということ。それと味のブレがさほど出ないということは、重要な要素だ。都内のインド料理屋でシェフが変わるととたんに、味が落ちてしまうということは日常茶飯事である。あるいは、同じ店のチキンカレーなのに、今日のは出来がシャバシャバ系で汁っぽかったのに、別の日はこってりオイリーだったとか、塩気が強すぎるとか、よくある話だ。本場のインド料理がどうの、という一括りの話ではなくて、そもそも料理人としての腕前のレベルの話である。 「ナーランダ」では、そういう心配がない。カウンター席のもう目の前が厨房なので、キングフィッシャーや中ジョッキ生をちびちび飲みつつ、料理している様が客の目線でもよく見えるのである。一度など夏の頃、そろそろ秋なすが食べたくなったので、ベイガン・アルー(なすとじゃがいものカレー)をオーダーしたところ、生の新鮮な素材・野菜から、皮むき、ダイス・カットして、油で素揚げして、たまねぎ、生姜ににんにくのウェット・スパイスと合わせて、油で炒めて調合スパイスで整え・・・、と、こんな流れでカレーを作って頂いた。ちょっと時間はかかったのだが、実際に私の目の前でこうした調理を行っているので、出来立てのベイガン・アルーは、新鮮野菜の彩りも鮮やかで、野菜の滋味深い味が染み込んでおり、マズかろうはずがない。サイド・ディッシュのタンドリーチキンやシークカバブにいたっても然り。客の注文を受けてから、シーク(鉄串)に刺して、丁寧にタンドールで焼いてくれる。チキンは、あつあつのジューシーで、余分な油分が落ちてカラリと焼きあがっている。カバブも、各種スパイスと混ぜ合わせたミンチ肉の状態からハンバーグを捏ねるがごとく、鉄串に挽肉を手で握りながら棒状に伸ばして焼いてくれる。焼き上がりは素晴らしく、マトン肉の質感・ふわっとした柔らかな歯応えが最高だ。これで1本180円とは驚きである。ディナーCセット(1,280円)にシークカバブ1本を付けて、1,500円払ってもなお、お釣りが来るのである。こうした「ナーランダ」のタンドリーチキンやシークカバブを体験してしまうと、他店の作り置きしたものや電子レンジでチンして温めただけのものとは違いが一目瞭然にわかろうというものだ。 ポイントの3点目は、わがままな選択を聞いてくれること。もちろん、客側の基本マナーとして、先客の注文などが立て込んでしまい、厨房が忙しい時は控えるべきであるが、「ナーランダ」では、客の注文に小回りの効く対応サービスはかなり好感が持てる。私の場合、先ほどのグリーン・サラダをプレーン・ヨーグルト(ダヒ)に代えてほしいといったオーダーの他、10回ほど食べた中では、実は一度も「ナーランダ」ではナンを食べたことがない。大抵は全粒粉タイプの小麦粉(アタ)を捏ねて、タンドリー・ロティを焼いて頂いている。Cセットでは、小ポーションのカレーが2種付くのだが、最近では、2種類は要らないのでレギュラーサイズでどちらか1種だけにしてみたり、今日はロティは食べないので、その代わりサフラン・ライスを大盛りで、といったことに結構、細やかに対応して頂いているのだ。(いつも、うるさい注文でスミマセン。この場をお借りしてお詫びします。) 4点目のポイントは、「ナーランダ」の顔でもあるジャグ(Jaggu)さん・ピーさん兄弟(インド東部・ビハール州のナーランダーご出身)の人柄だろうか。料理人としての腕前もさることながら(*以前は都内・文京区など中心にチェーン展開しているインド料理Dでも勤務されたご経験あり)、「ナーランダ」を介して、いまではちょっとしたインド人・コミュニティを形成している。お店に入ってみると、カウンターの周りは全員インド人、あっ、隣は昨夜、お店でお会いした近辺のインド料理店Sの接客担当の方だったりと、日本人客は私ひとりだけで、ヒンディ語の会話が飛び交っており、ココは本当にトーキョーのインド料理やさん?という状況もしばしば。 やはり、在留の同胞のクチコミが広がって、大勢のインド人客が引きも切らずに来店してくる。味が確かだし、価格も良心的でおまけにサービスも良い。と、まあここまでは顧客に支持される人気店の基礎条件であるが、「ナーランダ」の人的ソーシャル・ネットワークは、さらにその上を行っている。例えば、昨年秋の一時期、ジャグさんが郷里に戻られていた間、厨房に助っ人として入っていた東インド・コルカタ出身のハイダル・アリ氏(*氏の名前は歴史好きな方ならご存知、南インド・マイソール王国の君主で18世紀半ばから末にかけて、4次にわたる英国とのマイソール戦争を指揮したインドの英雄ハイダル・アリとティプー・スルタン親子の父王のほうの名に因んでいる)の作るカレーは素晴らしいものがあり、11月中旬から下旬にかけては、会社の同僚とともに週2回は「ナーランダ」通いをしていたくらいだ。普段、インド料理など食べない同僚も「ナーランダ」のカレーで開眼したと見えて、確かにこれは美味しい!の連発である。(最近では、都内のインド料理10数店食べ歩きした模様。)掲載した画像の「パニール・マタル(カッテージチーズとグリンピースのカレー)」や「パラク・パニール(ほうれん草とカッテージチーズのカレー)」は私の好きな北インド系ヴェジカレーであり、氏が12月初旬にコルカタへ帰省される前までに、それぞれ2回作って頂いたほど。話を伺うと以前は、横浜にあるインド料理有名店Mの厨房で働いていたとのこと。「ナーランダ」では、こうしたベテラン・クラスの料理人との人的ネットワークも構築しており、ジャグさん不在の間でも、彼らの実力がピーさんとのコラボレーションで「ナーランダ」の厨房でも遺憾なく発揮されている。 昨年最後は12月21日クリスマス直前の金曜・夜にくだんの会社の同僚と訪問。オープンして1年を迎え、ますます提供する料理に鋭さと安定感が増している。パニプリやアルティキといった、これまで味わったことのないような地元インドの郷里の料理・スナックも「ナーランダ」で出合うことができた。これからもファンのひとりとして、「ナーランダ」に期待していきたい。 こんな記事を書いていると、そろそろまた「ナーランダ」のカレーが恋しくなってきた。。。
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ナーランダ 東京・日本橋・大手町(馬喰横山)/ インド料理[ 平均:
4.4pt ]
東神田・岩本町のうらぶれた商業地区のとある一角、路地裏にひっそりとたたずむインド料理「ナーランダ」。
夜ともなれば、近隣界隈の勤め帰りのサラリーマンならいざ知らず、人通りもまばらで場末の寂寥感が漂うこの路地裏にぽつねんと一軒灯りが点る。赤提灯の居酒屋でも酔客相手のらーめん屋でもない。よーく、目を凝らしてみれば、インド料理の文字が。。。
現在、都内で有に500店は数えようというあまたひしめくインド料理界に2006年12月、突如として彗星のごとく現われたのが、この「ナーランダ」だ。
オープンして1年余り。この「ナーランダ」の秘めたる非凡なる実力に、実際に虜となるインドカレー・フリークの方も多いと推察する。場違いな喩えや物言いかも知れず恐縮であるが、相撲で言えば、新入幕の平幕力士が実力のある並み居る上位陣、横綱をはじめ、大関・関脇をことごとく破り、大金星をあげるくらいの「殊勲賞」・「技能賞」力士に匹敵するといっても過言ではない。都内、あるいは近郊に住んでいるインドの同胞にも厚く支持されており、日印問わず着実にファンは増えているのだ。かく言う私も何を隠そう「ナーランダ」信奉者である。
私がはじめて「ナーランダ」を訪問したのが、ちょうど1年ほど前の2007年2月末。晩冬の底冷えのする夕刻、じんわりと足元から忍び込むような寒さで思わずコートの襟を立てながら、店のある場所がわからず、東神田・馬喰町の界隈をウロウロとさまよったことを覚えている。カレー激戦区の銀座や神保町でもなく、この神田の外れにある、人通りもまばらなこんな場所に、唸るようなスゴイ店があるというのだ。その情報源は、エスニカン氏の東グルへのクチコミ投稿記事。(*「ナーランダ」のオープンをレポートされていたので確か2006年12月中旬頃の投稿記事だったかと思います。)氏の記事内容を拝見し、「ナーランダ」に少なからず行ってみたいと思う理由が2つあった。一つ目は、「ナーランダ」のオーナー関係者がインド料理・飲食業経営だけでなく、もともとスパイス卸業に携わっているということ。本業でスパイス商を営んでいるのであれば、店で使うスパイスも質の高い共通のものが料理にも用いられているはずで、客側からみれば、まがい物やごまかしがないだろうというのが、これまでの経験であり、私見である。都内・某所で飲食店を経営するある外国人オーナーの方から聞いた話であるが、都内の一般のインド料理店、とくに多店舗展開をしているような大手チェーン店では、毎日の各店舗での仕込みでスパイスの使用量が半端にならないくらい大量に使うので、仕入れコストの安い中国製のターメリックやチリ・パウダーなど各種スパイス類を業務用で大量に買い付けているのは半ば当たり前という。委細詳細は忘れてしまったが、化学調味料なし・混じりけなしのインド産天然のスパイスと中国産のそれらのものとは卸売り末端価格でも大そうな開きがあるらしい。
二つ目は、昨今この何かと世知辛い世の中で、困った仲間を同胞どうしで助け合うという人情味にあふれる、「ナーランダ」が2006年暮れ、師走も押し迫ったこの東神田の場所で、どうにか開店まで漕ぎ着けたという誕生秘話だ。以前の勤務先から不運にも解雇?されてしまい、職も住むところも失った料理人を仲間のインド人がなけなしの資金を出し合って空き店舗を買い取り、新生インド料理「ナーランダ」として、再出発させたという。なんだか、泣けてくるような話じゃねーか。とばかりに、これは一度くらいは行ってみないとという気持ちになってしまった。
で、実際に訪問をしてみると、やはり噂に違わず、出てくる料理の質の高さに正直、舌を巻いた。界隈の商店や人づたいに聞き回って、ようやく辿り着いたのが、くだんの路地裏にあるさえない外観の「ナーランダ」である。引き戸の入り口から入って右奥のカウンター席の端に着く。以前は中華料理屋か、らーめん屋であったのであろうと思しき店舗をそのまま居抜きで使っている。こうした非インド料理屋的外観とそこからイメージされる料理の内容と、しかし実際に提供される料理とのギャップに面食らってしまった。以来、昨年1年で、10回ほど訪問する機会を数える。いずれも夜の勤め帰りか、あるいは土曜の昼の訪問だ。
さて、前置きが長くなってしまったが、肝心の料理は実際にはどのようになっているのだろうか。「ナーランダ」では、いつもディナーのCセット(1,280円)が私のお決まりの注文パターンだ。パパドに小ポーションのカレー2種、炊きたてのサフラン・ライス、ミニ・サラダ、焼きたてのナンに、ジューシーであつあつのタンドリーチキン、アフタードリンクのチャイまで付いて、盛りだくさんでこの値段である。ランチ価格ではなく、ウソでもない正真正銘の夜のディナー・セット(ターリ)がである。こんなにCPが高い店は、都内広しと言えど、ちょっとやそっとではないだろう。これが、「ナーランダ」ではデファクト価格なのだ。まず、ポイントの1点目、CPが高いこと。
2点目であるが、やはり、「ナーランダ」の一番の長所である一品一品の料理に対する丁寧な作りを挙げねばなるまい。最初の訪問の時から、いつも関心するのが、この料理作りへの姿勢、仕事の丁寧さである。これは、違う種類のカレーをオーダーする際、小ポーション・カレーでもひとつ、ひとつきちんと丁寧に調理の工程を省略することなく、きちんと作っているということ。それと味のブレがさほど出ないということは、重要な要素だ。都内のインド料理屋でシェフが変わるととたんに、味が落ちてしまうということは日常茶飯事である。あるいは、同じ店のチキンカレーなのに、今日のは出来がシャバシャバ系で汁っぽかったのに、別の日はこってりオイリーだったとか、塩気が強すぎるとか、よくある話だ。本場のインド料理がどうの、という一括りの話ではなくて、そもそも料理人としての腕前のレベルの話である。
「ナーランダ」では、そういう心配がない。カウンター席のもう目の前が厨房なので、キングフィッシャーや中ジョッキ生をちびちび飲みつつ、料理している様が客の目線でもよく見えるのである。一度など夏の頃、そろそろ秋なすが食べたくなったので、ベイガン・アルー(なすとじゃがいものカレー)をオーダーしたところ、生の新鮮な素材・野菜から、皮むき、ダイス・カットして、油で素揚げして、たまねぎ、生姜ににんにくのウェット・スパイスと合わせて、油で炒めて調合スパイスで整え・・・、と、こんな流れでカレーを作って頂いた。ちょっと時間はかかったのだが、実際に私の目の前でこうした調理を行っているので、出来立てのベイガン・アルーは、新鮮野菜の彩りも鮮やかで、野菜の滋味深い味が染み込んでおり、マズかろうはずがない。サイド・ディッシュのタンドリーチキンやシークカバブにいたっても然り。客の注文を受けてから、シーク(鉄串)に刺して、丁寧にタンドールで焼いてくれる。チキンは、あつあつのジューシーで、余分な油分が落ちてカラリと焼きあがっている。カバブも、各種スパイスと混ぜ合わせたミンチ肉の状態からハンバーグを捏ねるがごとく、鉄串に挽肉を手で握りながら棒状に伸ばして焼いてくれる。焼き上がりは素晴らしく、マトン肉の質感・ふわっとした柔らかな歯応えが最高だ。これで1本180円とは驚きである。ディナーCセット(1,280円)にシークカバブ1本を付けて、1,500円払ってもなお、お釣りが来るのである。こうした「ナーランダ」のタンドリーチキンやシークカバブを体験してしまうと、他店の作り置きしたものや電子レンジでチンして温めただけのものとは違いが一目瞭然にわかろうというものだ。
ポイントの3点目は、わがままな選択を聞いてくれること。もちろん、客側の基本マナーとして、先客の注文などが立て込んでしまい、厨房が忙しい時は控えるべきであるが、「ナーランダ」では、客の注文に小回りの効く対応サービスはかなり好感が持てる。私の場合、先ほどのグリーン・サラダをプレーン・ヨーグルト(ダヒ)に代えてほしいといったオーダーの他、10回ほど食べた中では、実は一度も「ナーランダ」ではナンを食べたことがない。大抵は全粒粉タイプの小麦粉(アタ)を捏ねて、タンドリー・ロティを焼いて頂いている。Cセットでは、小ポーションのカレーが2種付くのだが、最近では、2種類は要らないのでレギュラーサイズでどちらか1種だけにしてみたり、今日はロティは食べないので、その代わりサフラン・ライスを大盛りで、といったことに結構、細やかに対応して頂いているのだ。(いつも、うるさい注文でスミマセン。この場をお借りしてお詫びします。)
4点目のポイントは、「ナーランダ」の顔でもあるジャグ(Jaggu)さん・ピーさん兄弟(インド東部・ビハール州のナーランダーご出身)の人柄だろうか。料理人としての腕前もさることながら(*以前は都内・文京区など中心にチェーン展開しているインド料理Dでも勤務されたご経験あり)、「ナーランダ」を介して、いまではちょっとしたインド人・コミュニティを形成している。お店に入ってみると、カウンターの周りは全員インド人、あっ、隣は昨夜、お店でお会いした近辺のインド料理店Sの接客担当の方だったりと、日本人客は私ひとりだけで、ヒンディ語の会話が飛び交っており、ココは本当にトーキョーのインド料理やさん?という状況もしばしば。
やはり、在留の同胞のクチコミが広がって、大勢のインド人客が引きも切らずに来店してくる。味が確かだし、価格も良心的でおまけにサービスも良い。と、まあここまでは顧客に支持される人気店の基礎条件であるが、「ナーランダ」の人的ソーシャル・ネットワークは、さらにその上を行っている。例えば、昨年秋の一時期、ジャグさんが郷里に戻られていた間、厨房に助っ人として入っていた東インド・コルカタ出身のハイダル・アリ氏(*氏の名前は歴史好きな方ならご存知、南インド・マイソール王国の君主で18世紀半ばから末にかけて、4次にわたる英国とのマイソール戦争を指揮したインドの英雄ハイダル・アリとティプー・スルタン親子の父王のほうの名に因んでいる)の作るカレーは素晴らしいものがあり、11月中旬から下旬にかけては、会社の同僚とともに週2回は「ナーランダ」通いをしていたくらいだ。普段、インド料理など食べない同僚も「ナーランダ」のカレーで開眼したと見えて、確かにこれは美味しい!の連発である。(最近では、都内のインド料理10数店食べ歩きした模様。)掲載した画像の「パニール・マタル(カッテージチーズとグリンピースのカレー)」や「パラク・パニール(ほうれん草とカッテージチーズのカレー)」は私の好きな北インド系ヴェジカレーであり、氏が12月初旬にコルカタへ帰省される前までに、それぞれ2回作って頂いたほど。話を伺うと以前は、横浜にあるインド料理有名店Mの厨房で働いていたとのこと。「ナーランダ」では、こうしたベテラン・クラスの料理人との人的ネットワークも構築しており、ジャグさん不在の間でも、彼らの実力がピーさんとのコラボレーションで「ナーランダ」の厨房でも遺憾なく発揮されている。
昨年最後は12月21日クリスマス直前の金曜・夜にくだんの会社の同僚と訪問。オープンして1年を迎え、ますます提供する料理に鋭さと安定感が増している。パニプリやアルティキといった、これまで味わったことのないような地元インドの郷里の料理・スナックも「ナーランダ」で出合うことができた。これからもファンのひとりとして、「ナーランダ」に期待していきたい。
こんな記事を書いていると、そろそろまた「ナーランダ」のカレーが恋しくなってきた。。。