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インディアンレストラン リム 六本木・麻布・広尾・白金(乃木坂)/ インド料理[ 平均:評価:4.0pt4.0pt ]

2008/11/10 総合4pt4pt

赤坂7丁目付近の区立赤坂小学校から国道246青山通りへと抜ける裏道沿いにある、とある雑居ビルの地下1Fの奥まった一室に2008年8月、一軒のインド料理店が赤坂の街に静かに誕生した。インド国旗が掲げられていなければ、まずそれとは気づかずに素通りしてしまうかもしれない。

赤坂界隈でインド料理と言えば、王者の風格が漂う「The TAJ」を筆頭に、老舗の「モティ」をはじめ、あまたの数のインド料理店が軒を連ねては、レベルを競い合う都内でも屈指のカレー激戦区である。場所柄、各国大使館や日本に駐在する外国人ビジネスマン、外資系企業も集中しているため、有名店ではこうしたエグゼクティブ層の接待に利用されることも多く、特にディナーの客単価もそれなりの内容に見合う価格ではある。

 今回ご紹介する店は、今年8月にオープンしたばかりのインディアンレストラン「リム」。
赤坂の街に地盤・看板・鞄(かばん=顧客)の地歩を確立したこれらの老舗格の有名店を大企業に例えるならば、誕生したばかりの「リム」は、さしずめ駆け出しのベンチャー企業である。都内で貿易・卸売業を営むイスラム・マテウル氏(インド・西ベンガル州コルカタ出身)がホール接客(厨房も兼務)担当、そしてメイン厨房は、ロイ氏(インド・ウッタルプラデーシュ州ラクナウ出身)という2人の若きインド人コンビが本場インドの味を知ってもらおうと腕を振るう小さな店だ。

 私がはじめて「リム」を訪問したのは、10月中旬の平日のランチ時である。赤坂7丁目界隈には以前、「ラ・スコリエーラ」というシチリア料理店が赤坂小学校前にあって、南イタリアの風土や食文化が好きな私にとっては、ガラス張りの角面を利用して外からの柔らかな日差しが差し込む店の概観や、天井が高く、白い壁面に海や漁をモチーフにした店内の雰囲気を含め、お気に入りの一軒であったが、残念なことに2008年3月に移転してしまい、それ以来、抱えている仕事案件が出張を伴い多忙を極めた時期も重なって、何ともなしに足が遠のいていたロケーションにある。

本投稿記事の冒頭書き出しは、そのときの初回訪問時の私の印象である。アルバイトらしき女性が道行く人にチラシを配っていた。印刷業者に作ってもらった立派なチラシではなく、いかにもPCから直接プリントし、ハサミで用紙を切っただけの手作りのものだった。紙面には、
☆ランチバイキング☆ 11:00 〜 15:00
1050円で食べ放題!
☆ ランチメニュー☆ サラダ、ナン、ライス、野菜カレー、豆カレー、チキンカレー、マトンカレー等から3種類、毎日日替わりカレーメニューになります。
と書かれていた。

くだんの雑居ビルの階段を降り、地下1階の奥まったところに店はある。時刻は12時半を過ぎた頃でちょうど近辺にあるオフィスからのサラリーマンやOLで混み合っているかと思いきや、廊下で列を作っていたのは地下1階の途中にある焼きそば屋で、実際に来店してみると、先客1名が食事を終えて会計に立つところであった。他の客は誰もいない。
店内は以前、スナックかカラオケパブであったろうと思われるスペースを居抜きで利用している。 やや照明を落とした雰囲気で席数は、25席前後はあろうか。

 その日のランチバイキングであるが、カレーは3種類(エッグ・ヴェジタブル・豆)が用意されていた。よくバイキングで見かけるようなステンレス製のフードウォーマーではなく、家庭用の電気式耐熱鍋が3つと炊飯ジャーが置かれていた。客は、各自で傍らにある白い陶器の器にカレーやサラダを盛り、お皿にライスを盛り付けて着席すると、厨房に据え付けたタンドール土釜から焼きたてのナンが運ばれてくる仕組みである。この店では、チキンティッカだの、シークカバブといった焼き物はランチバイキングでは提供していない。で、メインのカレーであるが、3種類とも汁気の多いさらさらタイプのカレーである。
こういうタイプのカレーは、個人の好みもあるだろうが、ナンではなくやはりご飯のほうが合わせやすい。私は2種類のカレーを選んでみた。ひとつは豆(ダル)カレー、もうひとつは卵カレーである。色い合いが黄色な豆カレーはシンプルな挽き割りのマスール豆やチャナ豆にクミン等を加えたマイルドで優しい味わい。まさにインド版おふくろの味を醸し出している。白いご飯にぶっかければ、そのまま現地の簡易食堂で供されるシンプルなダール・ライスだ。もうひとつの卵カレーであるが、こちらはトマトベースにガラムマサラ、レッドチリがアクセントとなっている赤褐色の色合いをしたサラサラしたカレーである。

その後、チャイを飲んだので、バイキング1050円に150円が追加されて、ランチの会計は1200円であった。どの店にも当てはまることであるが、たったランチのバイキング1回だけでの評価では、その店の本当の実力度は推し量ることは無理である。インド料理に限らず、ディナーの料理には本領を発揮する店は少なくないからである。
初回訪問時の印象としては、可もなく不可もなくで、敢えて評価すると☆3つといったところであろうか。

その後、3回ランチ訪問をしてみた。提供しているカレーは常時3種類で、ヴェジタブルカレーと豆(ダル)カレーは毎日(月−金)あり、日替わりでチキンであったり、マトン、あるいはエッグ(卵)カレーが加わる。特徴といえば、ランチで提供されるカレーが総じて汁気の多いさらさらタイプであること。普通、北インド料理系統に見られるカレーの、グレイビーでスパイスリッチなこってりしたソースに舌が慣れ親しんでいる方であれば、個人的な好みも変わるし、評価も分かれることだろう。因みに厨房担当のロイ氏の出身を伺ってみると、北インドはウッタル・プラデーシュ州(*同州は、北インド観光のハイライト、タージ・マハルのあるムガル帝国時代の古都アグラや、ヒンドゥ精神世界の最大の聖地バラナシを擁する)にある州都ラクナウのご出身。ラクナウは、18世紀に爛熟したムガル帝国文化が華開き、食文化においても、今日のインド料理のジャンルに「ムグライ」と呼ばれる宮廷料理、当時の王族や太守クラスの高官、上流階層の人びとが好むとされる「シャーヒ(高貴な)コルマ」と呼ばれる生クリームを多用し、アーモンドやカシューナッツ等のナッツ類でとろみとつけてこってりとしたスパイスリッチで甘いソースを生み出したことで有名である。また、同氏は以前、青山(骨董通り)や銀座で店舗を展開している高級インド料理「S」の厨房も担当されていた方。

 そんな中、ランチ訪問時にオーナーであるマテウル氏から、耳よりな話を聞いた。店がオープンして数ヶ月、多くの人に本場のインド料理の味に触れて欲しいとの思いを込めて30人規模のパーティを近く開催するという。氏の郷里は、東インドはベンガル地方コルカタである。厨房のロイ氏が得意とするオーセンティックな北インド料理に加えて、当日は、ベンガル家庭料理も来店客にぜひふるまいたいという。

こんな会話をしていたら、通常は夜メニューのアラカルトメニューであるが、特別に「ベイガン・バルタ」(*タンドールで焼いた米ナスを細かく刻み、トマトベースのソースにタマネギとピーマンを炒めたドライタイプのカレー)を作っていただいた。その日は、ライスではなく、丸く焼いてもらったナンだけで合わせてみた。ほんのりと柔らかいが芯の残るナスに炒めたタマネギの甘みが加わり、素材としての野菜を充分に感じさせる「ベイガン・バルタ」だ。マテウル氏が、カレーに添えると味により深みが増しますよと、グリーン・チャトニを勧めてくれた。グリーンチリ(青唐辛子)をベースにフレッシュ・コリアンダ、レモン汁を加えたものだろうか、摺りおろしたての緑がみずみずしい。池袋にあるパキスタン料理「M」、銀座一丁目のタンドール料理専門店「K」や、萱場町の人気インド料理店「J」では、シークカバブやペシャワーリ・シャーミカバブにはミントソースを添えてもらっているが、カレーにグリーンチリ・チャトニを添えて食べるのは初めての体験だ。「ベイガン・バルタ」自体、トマトベースのソースで辛さはさほど感じられないものの、このグリーンチリ・チャトニを少量付けて食べると、チリ特有のシャープなキレのある辛さが要素として加わり、確かに味わいは深まるし、おいしい。ミントソースやチャトニの味わい方は、何もカバブ類だけにとどまるものではないことを実感することしきり。

 ここまででこの店の実力の一端をチラリ垣間見ることができたわけであるが、最後に思わぬ驚きが待っていた。マテウル氏との会話で、私がベンガル料理のファンで、いろいろと都内のバングラデシュ料理店を訪問しては食べ歩きしているのだと話すと、なんと、ベンガル人の垂涎の魚である「イリッシュ」もあるという。
(注:ご関心のある方は、私の投稿記事で錦糸町にあるインド・バングラデシュ料理「バスモティ」でイリッシュについて記述していますので、宜しければご参照ください。)
さすがに通常メニューにある訳ではなく、常連客向けに「イリッシュ」が入手できる時に用意するのだという。しかもこれ、冷凍ものではなく、しっかりと脂がのったものであった。(イリッシュは身に細かい小骨がいくつもあるので、食べるにあたって注意が必要)

 と、正式にディナー訪問をしたわけではないが、北インド・ラクナウ出身のシェフの作る料理といい、ベンガル地方コルカタを故郷とするマテウル氏の、ありきたりでないインド料理を提供したいという思いはストレートに伝わってきた。
チャレンジャーである彼らの店が、ここ赤坂の街を舞台にこれから新しい序章を開いていくことを応援したい。これからの期待の意味を込めて、☆4つということで。

最後に、11/26(水)に開催される予定のパーティ(定員30名:可能であれば事前予約)にご関心のある方は、オーナーであるイスラム・マテウル氏までご連絡・お問合せ下さい。
ウェブ:http://limuinter.com
TEL:03−6913−6535 (営業:昼11:00  15:00、 夜18:00 − 23:00)

料理
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サービス
4pt4pt
雰囲気
3pt3pt
CP:コストパフォーマンス
3pt3pt
金額

昼 1,000~3,000円

目的
一人ご飯 一人ご飯
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フィッシュ 六本木・麻布・広尾・白金(六本木一丁目)/ カレー・カレーライス[ 平均:評価:4.1pt4.1pt ]

2008/04/03 総合4pt4pt

 赤坂アークヒルズ3Fにあるカレー専門店「フィッシュ」。
昼休みともなればEat-in、テイクアウトを含め、サラリーマンやOLの行列が出来る人気店として知られるカレーショップだ。

 毎朝9時にアークヒルズにあるオフィスに出勤してくる途中、隣接するANAインターコンチネンタル東京の2階通路あたりまでスパイスの良い香りが風に運ばれて漂ってくる。お店の入り口、レジ横の窓際にはステンレス製の大きなボウルが二つ。山盛りの生たまねぎが見える。聞くところによれば、「フィッシュ」で一日に材料として仕込みに用いられるたまねぎの量は、驚くなかれ、なんと30kg。数時間かけて、艶のあるアメ色になるまでじっくりと炒められるのだという。この店の看板メニューのひとつでもあるカリーコンビネーションの「チキン&キーマカリーライス」(普通盛り:980円)を一口食べてみて、なるほど合点がいった訳である。ベースとなるたまねぎに、生姜やニンニクのすりおろしペーストなどを加えてじっくりと炒めた旨みに、野菜を加えて煮込んだコクが加わり、一方ではスパイスのシャープでキレのある辛さがしっかりと調和しており、人気店たる所以の実力の片鱗を伺わせるような味わいだ。

 さて、私が着目しているもうひとつの点は、ヴェジタリアンメニューの充実度である。野菜カレーがあるところまでは、他のカレーショップとなんら変わるところはないが、通常の「ヴェジタブル・カリー」のさらに上をいく「ストリクト・ヴェジタリアン」なるものがメニューにあり、この「フィッシュ」、只者ではない雰囲気をプンプン漂わせている。純正インド料理屋であれば、サイド・ディッシュメニューに見かけることもある北インド風の野菜料理「サブジ」、はたまた、南インドではおなじみの全粒粉タイプの小麦粉を捏ねて油で揚げたパフ状の「プーリ」もあるではないかい!
これはますます怪しい。。アヤシイ。ということで、六本木近辺のインド料理屋から心は離れ、最近の関心はもっぱら、この「フィッシュ」に引き寄せられている。

 普通のカレーショップでは、見かけることのないこうしたヴェジタリアンメニューが充実している背景のひとつは、六本木・赤坂という場所柄、欧米系のオフィスワーカーが多いことも多分に影響しているのではないかと推察する。とくに、アークヒルズは外資系企業も多く、インド人のオフィスワーカーもちらほら。当然、彼らのライフスタイルのニーズにマッチしたメニュー構成を店側で考え出した帰結と考えてもおかしくない。そのひとつのキーワードがヘルシーな食生活だ。ということで、ここはひとつ、彼らインド人に見習って、半ば強引にも、なりきりインド人となり、「ストリクト・ヴェジタリアン」(普通盛り:900円)なるものを食べてみることに。

 余談であるが、現在、インドの総人口12億人のうち、イスラム系人口は約10%の1億2,000万人(=ほぼ日本の総人口に匹敵する!)、ヒンドゥ教徒は8割超の約10億人。一説には、ヒンドゥ教徒の約7割は、菜食主義者(ヴェジタリアン)と言われているので、少なく見積もっても7億人もの人々が普段の食生活は野菜を取り入れたオカズにチャパティやゴハンを食べていることになる。一方、ヒンドゥ教徒の残りの3割の人が非菜食主義ということになるが、彼らは何も毎日、マトンやチキンをガッツリとたらふく食べている訳ではなく、家族や親戚で何かの慶事があるときには、おおっぴらに肉食をすることが許されているという意味で、やはり普段の食事はヴェジタリアン中心であることが多い。これはおそらくイスラム系の人たちも同じような事情なのだろう。と、すると、インドは、やはり世界に冠たる「菜食主義(ヴェジタリアン)大国」なのである!

 さて、「ストリクト(Strict:厳格な、きびしい、完全な、全くの)」と言うからには、「ピュア・ヴェジタリアン」のピュアよりも語調がキツく、何やら狂信めいた宗教上の教義のような「原理主義者」的な響きを感じる。インドのジャイナ教だったか、詳細は忘れたが、彼らの宗教上の教義は一切の殺生をタブーとしているため、大根やカブといった野菜類でも根菜類は摂取しないんだとか。なぜか?根菜類は土中に根を張って植生しているため、土を掘り返して収穫することになる。とすると、土を掘り返す過程で誤って土中の虫を殺してしまう恐れがあるからだという。

 さてさて、カウンターでしばしオーダーした「ストリクト・ヴェジタリアン」と「プーリ」を待つ。「プーリ」は、メニューにあるものの、そうそうカレーと一緒にオーダーする人はさほど多くないらしく、「10分少々、お時間を頂きますよ。」とのこと。昼のピーク時間を外した遅めの時間帯だが、サラリーマンやOLがポツポツと途切れることなく来店してくる。注文はカリーコンビネーションの「チキン&キーマカリーライス」(980円)、あるいは「大辛チキンのカリーライス」(1,000円)がやはり人気の中心のようだ。注文が多いチキンやキーマは、カウンター手前に炊飯ジャーからライスを盛り付け、ポーション区画に分かれたカレー・ルゥのフード・ウォーマーから直にカレーをかけて、あまり待たせずに客に提供している。で、「ストリクト・ヴェジタリアン」はと言うと、少々、工数が異なるようだ。楕円形の白いシチュー皿のような器にライスを盛り付けるところまでは一緒だが、具材の野菜類である予めボイルした温野菜(じゃがいも、にんじん、いんげん、たまねぎ、セロリなど)をタッパーウェア容器から取り出してライスの上に盛り付け、そこに、カリーソースを厨房奥で盛り付けて運ばれてきた。トッピングにはフレッシュコリアンダーが刻まれており、ツンとよい香りが。ルゥの色も、以前食べてみたチキンカリーのダークな茶褐色とは異なり、明るい黄土色だ。一口食べてみると、たまねぎにウェットスパイス(生姜、ニンニクのペースト)を加えてじっくりと炒め、シーズニングにクミンシード(ジーラ)、さらに野菜のだし汁を加え、南インド風のカレーのようにココナッツミルクで煮込んだような、マイルドな仕上げではあるが、深みのあるコクと素材としての野菜の旨みが十二分に感じられる。ヴェジタブル・カレー好きな方にはハートに響く味だろう。実際にはココナッツミルクではなく、牛乳を加えている。「プーリ」(1枚150円)は、他の南インド料理専門店でミールスと一緒に出される全粒粉タイプの小麦粉を用いた、キャメル色の皮の薄くて軽いプーリと比べると、やや油がべちゃっと残る揚げ方をしており、まあまあというところだが、特徴的なのは、生地にメティの葉(フェヌグリーク)を加えているところか。

 この「ストリクト・ヴェジタリアン」、普通の「ヴェジタブル・カリー」(900円)と何が違うのか、比較のため後日食べてみた。「ヴェジタブル・カリー」のルゥは、チキンカリーほどのシャープでキレのよい辛さはないものの、普通にLittle Hotくらいのスパイシーさ加減はある。やはりカレーのベースとなるものは、たまねぎにウェットスパイスを加え、じっくりと炒めて旨みを引き出しているところは同じなのだが、野菜のだし汁とともに鶏ガラ(後で取り出す)を加えて煮込んでいるという。具材はほぼ同じく、ボイル温野菜のじゃがいも、にんじん、いんげん、ピーマン、スライスたまねぎだ。一方の「ストリクト・ヴェジタリアン」はこの作る過程において、全ての素材は野菜のみで作られている。牛乳を加えて煮込むことで、こちらはよりマイルドな仕上がりとなっている。
普通の「ヴェジタブル・カリー」がごくオーソドックスな作りに対して、「ストリクト・ヴェジタリアン」がベースも素材もすべて野菜、南インド風のマイルドな仕上がりといったところだろうか。どちらも平均以上においしいと思える味だ。

 さて、この「フィッシュ」のヴェジタリアンメニューには、もうひとつ最後に思わぬ伏兵が潜んでいた。それは、チャナ豆たっぷりの「豆カリー」(880円)。画像でもおわかりのように、見た目はスープカレーとまではいかないものの、ベンガル系カレーのようにゴハンと相性のいいシャバシャバ系で、盛られている器は厚手のスープボウルのような容器だ。トッピングは同じくコリアンダーが散らしてある。ライスは、白く丸い平皿に盛り付けられて、そこにブロッコリーとカリフラワーのピクルスが添えられる。ちょっと意外性があったのは、その酸味のあるブロッコリーとカリフラワーのピクルスで、これだけでゴハン一杯はかるく進むくらいにうまいのだ。チャナ豆もどっさり入っており、平均的なインド料理屋でフツーの豆(ダル)・カレーを食べるよりは、はるかに食べ応えと満足度は高い。最近では、このチャナ豆のカレーとカリフラワー&ブロッコリーの酸っぱいピクルスをゴハンに混ぜこぜにして食べるスタイルが気に入っている。即席で南インドの気分を味わいたい分には、そこにメティ入りのプーリを追加したり。

 と、こんな風に、人気のカレーショップで定番のスパイシーなチキンやキーマ・カリーとはちょっぴり離れて、また一味も二味も違うヴェジタリアンメニューをいくつか試してみると、実はかなり奥深いインドの菜食主義の世界の一端が見えてくるかもしれない。

広大なインド亜大陸のこと、こうした食文化やカルチャーの違い、あるいは東西南北といった軸の見方でインド料理に接すると、これがまた一括りで語ることのできないこのジャンルの食べ歩きの醍醐味でもあり、尽きることのない魅力でもあると思います。



料理
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サービス
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雰囲気
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CP:コストパフォーマンス
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ナーランダ 東京・日本橋・大手町(馬喰横山)/ インド料理[ 平均:評価:4.4pt4.4pt ]

2008/03/23 総合5pt5pt

 東神田・岩本町のうらぶれた商業地区のとある一角、路地裏にひっそりとたたずむインド料理「ナーランダ」。
夜ともなれば、近隣界隈の勤め帰りのサラリーマンならいざ知らず、人通りもまばらで場末の寂寥感が漂うこの路地裏にぽつねんと一軒灯りが点る。赤提灯の居酒屋でも酔客相手のらーめん屋でもない。よーく、目を凝らしてみれば、インド料理の文字が。。。

 現在、都内で有に500店は数えようというあまたひしめくインド料理界に2006年12月、突如として彗星のごとく現われたのが、この「ナーランダ」だ。

 オープンして1年余り。この「ナーランダ」の秘めたる非凡なる実力に、実際に虜となるインドカレー・フリークの方も多いと推察する。場違いな喩えや物言いかも知れず恐縮であるが、相撲で言えば、新入幕の平幕力士が実力のある並み居る上位陣、横綱をはじめ、大関・関脇をことごとく破り、大金星をあげるくらいの「殊勲賞」・「技能賞」力士に匹敵するといっても過言ではない。都内、あるいは近郊に住んでいるインドの同胞にも厚く支持されており、日印問わず着実にファンは増えているのだ。かく言う私も何を隠そう「ナーランダ」信奉者である。

 私がはじめて「ナーランダ」を訪問したのが、ちょうど1年ほど前の2007年2月末。晩冬の底冷えのする夕刻、じんわりと足元から忍び込むような寒さで思わずコートの襟を立てながら、店のある場所がわからず、東神田・馬喰町の界隈をウロウロとさまよったことを覚えている。カレー激戦区の銀座や神保町でもなく、この神田の外れにある、人通りもまばらなこんな場所に、唸るようなスゴイ店があるというのだ。その情報源は、エスニカン氏の東グルへのクチコミ投稿記事。(*「ナーランダ」のオープンをレポートされていたので確か2006年12月中旬頃の投稿記事だったかと思います。)氏の記事内容を拝見し、「ナーランダ」に少なからず行ってみたいと思う理由が2つあった。一つ目は、「ナーランダ」のオーナー関係者がインド料理・飲食業経営だけでなく、もともとスパイス卸業に携わっているということ。本業でスパイス商を営んでいるのであれば、店で使うスパイスも質の高い共通のものが料理にも用いられているはずで、客側からみれば、まがい物やごまかしがないだろうというのが、これまでの経験であり、私見である。都内・某所で飲食店を経営するある外国人オーナーの方から聞いた話であるが、都内の一般のインド料理店、とくに多店舗展開をしているような大手チェーン店では、毎日の各店舗での仕込みでスパイスの使用量が半端にならないくらい大量に使うので、仕入れコストの安い中国製のターメリックやチリ・パウダーなど各種スパイス類を業務用で大量に買い付けているのは半ば当たり前という。委細詳細は忘れてしまったが、化学調味料なし・混じりけなしのインド産天然のスパイスと中国産のそれらのものとは卸売り末端価格でも大そうな開きがあるらしい。

 二つ目は、昨今この何かと世知辛い世の中で、困った仲間を同胞どうしで助け合うという人情味にあふれる、「ナーランダ」が2006年暮れ、師走も押し迫ったこの東神田の場所で、どうにか開店まで漕ぎ着けたという誕生秘話だ。以前の勤務先から不運にも解雇?されてしまい、職も住むところも失った料理人を仲間のインド人がなけなしの資金を出し合って空き店舗を買い取り、新生インド料理「ナーランダ」として、再出発させたという。なんだか、泣けてくるような話じゃねーか。とばかりに、これは一度くらいは行ってみないとという気持ちになってしまった。

 で、実際に訪問をしてみると、やはり噂に違わず、出てくる料理の質の高さに正直、舌を巻いた。界隈の商店や人づたいに聞き回って、ようやく辿り着いたのが、くだんの路地裏にあるさえない外観の「ナーランダ」である。引き戸の入り口から入って右奥のカウンター席の端に着く。以前は中華料理屋か、らーめん屋であったのであろうと思しき店舗をそのまま居抜きで使っている。こうした非インド料理屋的外観とそこからイメージされる料理の内容と、しかし実際に提供される料理とのギャップに面食らってしまった。以来、昨年1年で、10回ほど訪問する機会を数える。いずれも夜の勤め帰りか、あるいは土曜の昼の訪問だ。

 さて、前置きが長くなってしまったが、肝心の料理は実際にはどのようになっているのだろうか。「ナーランダ」では、いつもディナーのCセット(1,280円)が私のお決まりの注文パターンだ。パパドに小ポーションのカレー2種、炊きたてのサフラン・ライス、ミニ・サラダ、焼きたてのナンに、ジューシーであつあつのタンドリーチキン、アフタードリンクのチャイまで付いて、盛りだくさんでこの値段である。ランチ価格ではなく、ウソでもない正真正銘の夜のディナー・セット(ターリ)がである。こんなにCPが高い店は、都内広しと言えど、ちょっとやそっとではないだろう。これが、「ナーランダ」ではデファクト価格なのだ。まず、ポイントの1点目、CPが高いこと。

 2点目であるが、やはり、「ナーランダ」の一番の長所である一品一品の料理に対する丁寧な作りを挙げねばなるまい。最初の訪問の時から、いつも関心するのが、この料理作りへの姿勢、仕事の丁寧さである。これは、違う種類のカレーをオーダーする際、小ポーション・カレーでもひとつ、ひとつきちんと丁寧に調理の工程を省略することなく、きちんと作っているということ。それと味のブレがさほど出ないということは、重要な要素だ。都内のインド料理屋でシェフが変わるととたんに、味が落ちてしまうということは日常茶飯事である。あるいは、同じ店のチキンカレーなのに、今日のは出来がシャバシャバ系で汁っぽかったのに、別の日はこってりオイリーだったとか、塩気が強すぎるとか、よくある話だ。本場のインド料理がどうの、という一括りの話ではなくて、そもそも料理人としての腕前のレベルの話である。

「ナーランダ」では、そういう心配がない。カウンター席のもう目の前が厨房なので、キングフィッシャーや中ジョッキ生をちびちび飲みつつ、料理している様が客の目線でもよく見えるのである。一度など夏の頃、そろそろ秋なすが食べたくなったので、ベイガン・アルー(なすとじゃがいものカレー)をオーダーしたところ、生の新鮮な素材・野菜から、皮むき、ダイス・カットして、油で素揚げして、たまねぎ、生姜ににんにくのウェット・スパイスと合わせて、油で炒めて調合スパイスで整え・・・、と、こんな流れでカレーを作って頂いた。ちょっと時間はかかったのだが、実際に私の目の前でこうした調理を行っているので、出来立てのベイガン・アルーは、新鮮野菜の彩りも鮮やかで、野菜の滋味深い味が染み込んでおり、マズかろうはずがない。サイド・ディッシュのタンドリーチキンやシークカバブにいたっても然り。客の注文を受けてから、シーク(鉄串)に刺して、丁寧にタンドールで焼いてくれる。チキンは、あつあつのジューシーで、余分な油分が落ちてカラリと焼きあがっている。カバブも、各種スパイスと混ぜ合わせたミンチ肉の状態からハンバーグを捏ねるがごとく、鉄串に挽肉を手で握りながら棒状に伸ばして焼いてくれる。焼き上がりは素晴らしく、マトン肉の質感・ふわっとした柔らかな歯応えが最高だ。これで1本180円とは驚きである。ディナーCセット(1,280円)にシークカバブ1本を付けて、1,500円払ってもなお、お釣りが来るのである。こうした「ナーランダ」のタンドリーチキンやシークカバブを体験してしまうと、他店の作り置きしたものや電子レンジでチンして温めただけのものとは違いが一目瞭然にわかろうというものだ。

 ポイントの3点目は、わがままな選択を聞いてくれること。もちろん、客側の基本マナーとして、先客の注文などが立て込んでしまい、厨房が忙しい時は控えるべきであるが、「ナーランダ」では、客の注文に小回りの効く対応サービスはかなり好感が持てる。私の場合、先ほどのグリーン・サラダをプレーン・ヨーグルト(ダヒ)に代えてほしいといったオーダーの他、10回ほど食べた中では、実は一度も「ナーランダ」ではナンを食べたことがない。大抵は全粒粉タイプの小麦粉(アタ)を捏ねて、タンドリー・ロティを焼いて頂いている。Cセットでは、小ポーションのカレーが2種付くのだが、最近では、2種類は要らないのでレギュラーサイズでどちらか1種だけにしてみたり、今日はロティは食べないので、その代わりサフラン・ライスを大盛りで、といったことに結構、細やかに対応して頂いているのだ。(いつも、うるさい注文でスミマセン。この場をお借りしてお詫びします。)

 4点目のポイントは、「ナーランダ」の顔でもあるジャグ(Jaggu)さん・ピーさん兄弟(インド東部・ビハール州のナーランダーご出身)の人柄だろうか。料理人としての腕前もさることながら(*以前は都内・文京区など中心にチェーン展開しているインド料理Dでも勤務されたご経験あり)、「ナーランダ」を介して、いまではちょっとしたインド人・コミュニティを形成している。お店に入ってみると、カウンターの周りは全員インド人、あっ、隣は昨夜、お店でお会いした近辺のインド料理店Sの接客担当の方だったりと、日本人客は私ひとりだけで、ヒンディ語の会話が飛び交っており、ココは本当にトーキョーのインド料理やさん?という状況もしばしば。

やはり、在留の同胞のクチコミが広がって、大勢のインド人客が引きも切らずに来店してくる。味が確かだし、価格も良心的でおまけにサービスも良い。と、まあここまでは顧客に支持される人気店の基礎条件であるが、「ナーランダ」の人的ソーシャル・ネットワークは、さらにその上を行っている。例えば、昨年秋の一時期、ジャグさんが郷里に戻られていた間、厨房に助っ人として入っていた東インド・コルカタ出身のハイダル・アリ氏(*氏の名前は歴史好きな方ならご存知、南インド・マイソール王国の君主で18世紀半ばから末にかけて、4次にわたる英国とのマイソール戦争を指揮したインドの英雄ハイダル・アリとティプー・スルタン親子の父王のほうの名に因んでいる)の作るカレーは素晴らしいものがあり、11月中旬から下旬にかけては、会社の同僚とともに週2回は「ナーランダ」通いをしていたくらいだ。普段、インド料理など食べない同僚も「ナーランダ」のカレーで開眼したと見えて、確かにこれは美味しい!の連発である。(最近では、都内のインド料理10数店食べ歩きした模様。)掲載した画像の「パニール・マタル(カッテージチーズとグリンピースのカレー)」や「パラク・パニール(ほうれん草とカッテージチーズのカレー)」は私の好きな北インド系ヴェジカレーであり、氏が12月初旬にコルカタへ帰省される前までに、それぞれ2回作って頂いたほど。話を伺うと以前は、横浜にあるインド料理有名店Mの厨房で働いていたとのこと。「ナーランダ」では、こうしたベテラン・クラスの料理人との人的ネットワークも構築しており、ジャグさん不在の間でも、彼らの実力がピーさんとのコラボレーションで「ナーランダ」の厨房でも遺憾なく発揮されている。

 昨年最後は12月21日クリスマス直前の金曜・夜にくだんの会社の同僚と訪問。オープンして1年を迎え、ますます提供する料理に鋭さと安定感が増している。パニプリやアルティキといった、これまで味わったことのないような地元インドの郷里の料理・スナックも「ナーランダ」で出合うことができた。これからもファンのひとりとして、「ナーランダ」に期待していきたい。

こんな記事を書いていると、そろそろまた「ナーランダ」のカレーが恋しくなってきた。。。

料理
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サービス
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雰囲気
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CP:コストパフォーマンス
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プリヤ 六本木・麻布・広尾・白金(広尾)/ インド料理[ 平均:評価:5.0pt5.0pt ]

2008/03/20 総合5pt5pt

 広尾商店街の奥まった一角にあるインド・レストランプリヤ
2007年6月にオープンした北インド・ムグライ宮廷料理を提供する、まさに正統派と呼ぶにふさわしいディナー・レストランだ。
昨年夏にHiroo PLAZA明治屋に立ち寄った帰りに見つけて以来、気になっていたお店のひとつであり、先日ようやくはじめて訪問する機会があったので、今回ご紹介したいと思います。

 店舗は商店が立ち並ぶビルの3Fフロアにあり、店内に足を踏み入れると、テーブル・シートの清潔感のある白と、落ち着いたトーンのダーク・ブラウンのパネル壁面のコントラストが美しく、計算し尽したかのように統一感があって好感が持てるシックな内装。インド的なオブジェや装飾は一切なしで、後で運ばれてくる料理がタンドール料理やカレーでなければ、広尾界隈にある上質なイタリアン・リストランテか、小粋なフレンチ・レストランと言ってもそのまま通用するような控えめでシンプルなインテリアである。

 私が訪問したのは平日のディナー・タイムで時刻は19時半を少し回った頃。来店時間がまだ早いためか、先客は黒いアタッシェ・ケースにスーツ姿のインド人男性と思しきビジネスマン1名のみ。25-30席はあろうかという店中の一番奥まったテーブル4名掛けの壁側シート席に着く。目の前の壁面は、ベルギーの高級ブランド・ショコラを彷彿とさせるようなダーク・ブラウン色をした木目が美しい寄木調パネルとなっており、南イタリア・ナポリ近郊にあるポンペイのモザイク画から、まるで剥ぎ取ったような、魚をモチーフにした白いタイル画が3組、壁面に掛けられてある。他には来店客がいないので、ゆったりとした空間と喧騒感のない静かな時間がゆっくりと流れてゆく。これでオーダーした料理が期待通りであれば、それはもう充分に申し分なしであるが。。

 私の場合、初回訪問だと通常では、料理レベル水準が未知であることへのリスク・バランスを考えて、ターリ(セット・メニュー)を頼むことが多い。そのほうが焼き物系のタンドリーチキンやシークカバブ、2-3種の小ポーション・カレーに、ミニ・サラダ(あるいはプレーン・ヨーグルト)、ミニ・ライスに焼きたてのナン、アフタードリンク付きとお試し価格でいろいろな料理をちょっとずつ楽しめる。メニューを開くと、ここ「プリヤ」でもディナー向けのターリが、3,000円前後で、ヴェジ(菜食)、あるいはノン・ヴェジ(非菜食)と何種類か用意されている。が、しかし、今日は何か期待が持てそうな予感がするので、敢えて趣向を変えてみることに。アラカルトでは、カレーはヴェジタブル11種、チキン9種、マトン(ラム)5種、シーフード系5種の計30種ほどある。メニューを見ているとやはり、ターリで供される小ポーション・カレーでは飽き足らず、オーセンティックなムグライ料理を存分に味わいたいという気持ちにかられてしまった。できれば、2種類くらい試したい。しかしながら、ご存知のとおり、北インド・ムグライ料理は、クリームやバター、アーモンドやカシューナッツをふんだんに用いて、こってりと濃厚でクリーミーかつスパイス・リッチに仕上げた料理を特長としているため、ボリューム感を考えると他にサイド・オーダーする料理とのトレード・オフのバランスも考えねばなるまい。今回は、タンドリーチキンやティッカ類、シークカバブといった「焼き物」系と、ナンは、泣く泣く残念ながら最初から諦めた。

 メニューと睨めっこすることしばし、さんざん悩んだ挙句、オーダーした料理はカレーが「パラク・パニール(ほうれん草と自家製カッテージ・チーズのカレー)」(1,400円)、「チキン・カダイ(骨付き鶏もも肉のドライタイプカレー)」(1,400円)、全粒粉タイプの薄いタンドリー・ロティ1枚(500円)とバスマティ・ライス(600円)を選ぶ。おそらくは、「パラク・パニール」がマイルドで、「チキン・カダイ」が、生姜やにんにく、オニオンをベースにじっくり炒めたウェット・スパイスと赤唐辛子で辛めのドライタイプなので、違うタイプのカレーをそれぞれ味わうにはバランスの組み合わせとしてはオーソドックスな選択のはずである。お皿に置かれたパパドを食べながら、料理を待つことに。厨房の方角からは、おそらく「チキン・カダイ」」の具材とソースを合わせている段階だろうか、中華鍋みたいなもので強火で炒めているような、カンカンという乾いた金属音が聞こえてくる。料理への期待は嫌がおうにも高まる。

 しばらくして、オーダーしたすべての料理が運ばれてきた。
まずは、「パラク・パニール」であるが、ペースト状態のほうれん草の艶のある濃緑色が美しく、素材は、新鮮なものを使っているのが一目瞭然だ。冷凍保存の青菜類がベースでは、くすんで色褪せたうぐいす色のペーストになるものが多い。自家製のパニール(カッテージ・チーズ)を小さくキュービックにカットされたものが散らされており、濃い目のグリーンと白の彩りが綺麗だ。味わいはどうだろうか。ロティと合わせてみる。ルゥは、素材の粒やざらつきがなく、舌触りがあくまでなめらかな食感がある。生クリームやバターが、くどくならない程度に練りこまれて乳製品のほんのりとした甘味を足しており、こってりとした濃厚かつマイルドな味わい。ルゥの中には、さらに大振りにキュービック・カットされたパニールがあり、食べ応えは充分だ。
かつてのムガル帝国の貴族階級や太守クラスの高官、現代でもインドの上流階級の人々が好むといわれるテイストは、まさにプリヤの「パラク・パニール」の味わいに見られるように、決して香辛料の辛さだけを一辺倒に追求したものではなく、むしろ、素材の旨みを充分に引き出し、引き立たせるように調合された控えめなスパイス使いにその本質があると聞く。こうした上品な味わいを提供しているインド・レストランは都内でも何軒かあり、南青山のレストランS、あるいは西麻布のレストランKが得意とする北インド料理にその系統が似ている。いずれも本場インドで名だたる高級ホテルで経験を積んだシェフが厨房で腕を振るう店として知られる。

 さて、もう一皿の「チキン・カダイ」はどうであろうか。都内の他のインド料理店でも何度か食べており、私の好きな料理のひとつでもある。
まず見た目は、奥にじわじわとくる「辛さ」が巧妙に仕組まれているような赤褐色の色合いをしたドライタイプのカレーである。トッピングには細く千切りにした生姜にコリアンダーであろうか、香菜のみじん切りが散らされてある。お皿のフチには薄っすらとオレンジ色の油膜が張っている。こちらは、バスマティ・ライスに合わせてみた。こってりとしたルゥの中には骨付きの若鶏もも肉(ドラム・スティック)が3本。フォークとスプーンでライスの上に乗せ、骨と身をフォークで外しにかかると、肉がバラリと容易にほぐれるほど柔らかい。パラパラと炊き上げたバスマティ・ライスは、ほのかに漂う上品な香りがよい。

 ルゥのかかった鶏肉とライスを一口食べてみると、まず最初にたまねぎを生姜やにんにくといったウェット・スパイスとともに加え、じっくりとアメ色になるまで油で炒めた野菜の醸し出す素材の旨みやコクが舌に感じられる。ストレートに美味しいと感じられる味だ。続いて感じられるのは、ホール・スパイスのグリーン・カルダモン(粒が大きなブラウン・カルダモンも入っていました)のさわやかな芳香、シナモンのほのかな甘味とともに粗挽きした黒胡椒や調合されている香辛料マサラが醸し出す重厚に層を重ねたような深い味わい。悪くない。舌に粒で感じるのはクミン(ジーラ)・シードだ。他にも肉料理などに風味付けで使われるクローブも見え隠れする。「チキン・カダイ」をライスとともに食べ進むうちに、予想通り、じわじわと心地よい辛さが後追いのごとく襲ってきて、額や襟もとが汗ばんでくる。生姜やにんにくなどのウェット・スパイスや種を抜いた赤唐辛子も辛さの中に旨みを添えている。

 と、こんな感じで、交互に異なる味わいの素晴らしいカレー料理を堪能することが出来た。ドリンクやアルコール類もオーダーせず、純粋に料理だけ食べたという感じだ。両方ともこってり感のあるカレー料理なので、当然のごとく、もうすでに満腹状態。お昼を軽めに済ませれば、男性であれば何とか完食できるボリュームであるが、さすがにタンドリーチキンやティッカ、カバブなどの焼き物類も食べるとなると、よほどの大食漢か健啖家でもなければよしたほうが無難だろう。食後は、サービスでミニ・デザートのタピオカ・ゼリーを頂いた。こうした小さな気配りは、客側としてやはり嬉しく感じられる。冷やしたタピオカはココナッツ・ミルクとカルダモンの風味が効いており、爽やかでさっぱりとした甘い味わいでとても美味しい。

 会計はカレー2品(各1,400円)に、ロティ500円、バスマティ・ライス600円の4品でしめて、3,900円になるが、事前にプリヤのWebページに掲載されているディナー・タイム食事10%割引クーポンをプリントアウトして持参してきたので、割引きで3,510円に。

お店のWebはこちらです http://priyajapan.tripod.com/

 小1時間ほど食事をして店を出たのが、21時ちょっと前であるが、私の後に来店したのは、欧米系の男性とその同じ会社関係の方らしきアジア系の女性の一組のみ。おそらくは木曜・金曜と週末の夜は、もう少し来店客が増えるのであろうが、幸い週初めの平日であったので、隣り席も気にせずリラックスしてゆったりと上品な北インド料理を充分に堪能することができた。先ほどの割引きのほか、インド人店長をはじめ、スタッフのさりげないサービスや気配りも嬉しく、良い印象を感じてお店を後にした。

 お店は、控えめかつシンプルな白とダーク・ブラウンを基調としたシックな雰囲気があり、ドレッシーな街・広尾というロケーションで正統派・北インド料理が楽しめるということでは、彼女とのデートや大切な人と共にするディナーの機会にも使えそうであるし、これは是非グルメ・リストに加えておきたい一店だ。

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ロイヤルカレー 高田馬場店池袋-高田馬場・巣鴨(高田馬場)/ インド料理[ 平均:評価:3.8pt3.8pt ]

2008/03/14 総合4pt4pt
ロイヤルカレーの写真

 高田馬場は栄通りにあるインド料理レストラン・ロイヤルカリー高田馬場店。学生街という場所柄もあり、セット・カレー(カレー1種とナンor ライス付き)が500円から食べられる、いわゆる「ワンコインカレー・ショップ」として、知る人とぞ知るお店である。
今回ご紹介するロイヤルカリー高田馬場店には、「マスタードチキンカレー」という看板メニュー的なカレーがあり、都内のインド料理屋さんをいろいろと食べ歩きしてきた中では、やはり印象に残る一皿だ。

 さて先日、約1年半振りに訪問してみると、いつの間にか店内は改装されており、以前の、まるでうなぎの寝床のような通路の幅が狭く、カウンター形式の主体の席が、テーブルを挟んで対面4名掛けの内装に変わっていた。キッチンもレジも入り口からテーブル客席を経て、ずっと奥まったところに。カウンター形式だった頃は、もう目の前がキッチンでオーダーしたカレーが出てくるまで、コック氏の作るカレーの調理の仕方や、ナン生地を手のひらでパンパンと叩いて伸ばして、タンドール(土釜)の内側にペタっと貼り付けたり、ふっくらと焼けたナンをシーク(鉄串)でガリガリはがしたりする様をつぶさに観察することができたりしたことを思い出す。充分に余熱で一定の温度を保ったタンドールであれば、ナンはものの1分少々で焼きあがるのである。サラリーマンを引退して悠々自適の生活がもしもおくることができるのなら、八王子か山梨の甲府あたりの山の麓あたりに、インド人に大きくて立派な土釜を作らせて、日がな一日、ナンを焼いてみたいなぁと思ったりもする。ナンを焼く人、kiewpieくんか、悪くないけど、まぁ、いつになることやら・・・ 


 で、空想はさておき、果たして店内が改装されたことを契機にメニューも変わっていた。以前よりもメニュー品数は増え、アラカルトもセット・メニューも充実したような感じであるが、看板メニューである「マスタードチキンカレー」がメニューから消え、ワンコイン・ショップ的なプライシング設定でもなくなっていた。うーん、もはやあの「マスタードチキンカレー」の味には出会えないのだろうか・・・一抹の不安が頭をよぎる。

 一人で切り盛りしているコック氏がコップをもってオーダーを取りに来る。以前、キッチンでカレーを作っていた見覚えのある西ベンガル・コルカタ出身の方ではない。
以前、この店には「マスタードチキンカレー」というメニューがあったのだけど、いまもありますか?と恐る恐る尋ねてみると、片言の日本語で、もうメニューには出していないが、材料はあるという。おおっと、これはラッキーだぞ。と内心思いながら、店内を見渡すと幸いにも学生らしき先客1名はすでに食事を終え、お茶をしながら、何かのテキスト本のようなものを読みふけっている。先客の注文が立て込んでいる様子でもなかったので、時間はどのくらいかかりますか?と聞くと、10分程度という。これは、ありがたい。新宿と池袋に挟まれた中間にあるババには普段あまり立ち寄ることもないので、それではと、コック氏の好意に甘えて、くだんの「マスタードチキンカレー」を作って頂くことにした。カレーには、サフランライスを合わせることにした。嬉しいことに、キャベツの千切りのミニ・サラダもサービスだという。

 オーダーした料理が出来るまで、再びメニュー表を眺める。北インド系のオーソドックスなメニュー構成である。「ジャルフレジ」(香味野菜のドライタイプカレー炒め)、「パニール・マタル」(カッテージ・チーズとグリンピースのカレー)、骨付きチキンの「チキン・カラヒ」なんかもあり、何とも食指を動かされそうだ。焼き物系では、ティッカ類に「アチャール・チキン」(3ピース:600円)という目を引くようなメニューがあった。アチャールは文字通り、インドのピクルスのことであり、そのマサラか何かで漬け込んだチキン・ティッカだろうか。次回、再訪した際には試してみたい感じがする一品だ。
と、メニューをぼんやりと眺めていると、後ろの厨房では、ミキサーがガーっと振動する音が聞こえ、続いて、中華鍋みたいなものでカンカンと具材を炒める音が聞こえてきた。おー、やってる。やってる。(笑)さて、どんな出来栄えだろうかと期待が弾む。

 しばらくして、お待ちかねの「マスタードチキンカレー」と白いお皿に平たく盛られたサフランライスが運ばれてきた。
おぉ~、これ、これ。以前に食べた「マスタードチキンカレー」の視覚的な記憶が蘇るようだ。カレーは鮮やかでビビッドなイエローに、トッピングの万能ネギの散らした緑が映える。ソースは、いわゆるしゃばしゃば系である。ナンも合いそうであるが、ここはやはりサフランライスで正解だろう。ゴハンにソースが染みてうまそうである。画像でもお分かりのとおり、鮮やかな黄色のカレーソースに鶏肉がゴロゴロと入り、ところどころ茶褐色の斑点のようなものが目視レベルで容易に確認できる。これが、「マスタードチキンカレー」のネーミングの言われだろう。よく高級スーパーなどで売られている仏・ディジョン産のガラス瓶入りの粒マスタードを見かけるが、あの粒々のマスタード・シードをそのまま粒で使ったものではなく、見る限りでは、細かく粉砕して茶褐色の「斑点」状態でカレーソースに溶け込んでいる。あとで調べてみると、粒マスタードは主に黒、茶色、白の3種があり、インドでは通常、ブラウン・マスタードを料理に利用するという。最近では、バングラデシュ料理(ベンガル料理)にハマっているので、ベンガル料理にはマスタード・シードから抽出されるマスタード・オイルが多用されており、結構、オイリーなことは知っている。が、しかし、こちらのようにブラウン・マスタードの粒を粉砕してソースと混在一体化した状態で提供されるカレーは、正直初めてだ。ガゼット出版から出ている世界探訪・食と風土 おいしいバングラデシュという紀行本には、シェフの作るバングラデシュ料理というセクションがあり、その中で「マスタード味のイリッシュ(魚)」カレーがカラー写真付きで紹介されている。注釈には、イリッシュもマスタードも、バングラデシュではよく使われる食材。その二つを合わせたシンプルなカレーです。との説明書きがある。

 なるほど、以前、同店に勤務していたコルカタ出身のインド人コック氏にとっては、郷里・東インドはベンガル地方でよく食べられるカレーなのだ。しかも、そのカレーソースは、ゴハンとの相性がいいサラサラ系である。

で、前置きはこのくらいにして、冷めないうちにさっそくカレーをサフランライスにかけて食べてみることに。うーん。これはなかなか体験したことのないような新しい味覚である。多分、カレーソースはターメリックやコリアンダーパウダー、多少のチリパウダーをミックス調合したものなのだろう。こうした香辛料の醸し出すスパイシーさとオイルで炒めてデリケートな甘さや香ばしさをうまく引き出しているマスタードの味覚が舌に交差する。後からじわじわとくるような辛さではなく、最初にスゥ~と入り込むようなやや優しい感じのスパイシーさだ。一口大の鶏肉もちょうどよい柔らかさだ。サラサラ系で優しいスパイシーさ加減のカレーソースで一気にゴハンが進む。こちらでは、ターメリック・ライスではなく、きちんと高価なサフランで炊き上げた、ほんのりと黄色く色づいたジャポニカ米である。ホールスパイスでは、グリーンカルダモンが爽やかな芳香で味覚にちょっとしたアクセントを添えている。例によって、あっという間に完食だ。
今回は大盛りにはしなかったが、結構、満足できる内容だった。ごちそうサマでした。
会計は、「マスタードチキンカレー」と「サフランライス」にサービスのミニ・サラダ付きで、1,050円でした。

 自宅に戻り、改装前の昔の(多分、2006年6月頃の)50円引きのチラシが残っていた。
記載内容をよく見てみると、
・ セットカレー(ナンor ライス付き)500円~
・ ワンコインカレー(野菜と豆のカレー)
・ チキンカレー
・ ほうれん草とチキンのカレー
・ マスタードチキンカレー(ナスとほうれん草入り、マスタード風味)
・ キーマカレー(鶏の挽肉)
・ モツカレー(鶏の砂肝、レバー、ハツ)
・ 骨付きラムカレー(骨付きなのでおいしい!!)
・ 骨付きビーフカレー(骨付きなのでおいしい!!)
・ ライス(プレーン・サフランライス)
・ ナン(プレーン・ガーリック・ココナッツ・チーズ)
と記載されている。(*記載情報はそのまま原文どおり)

そうか、以前に食べた「マスタードチキンカレー」の具材にはナスとほうれん草が入っていたのだ。今回、たまたま材料があって作って頂いた「マスタードチキンカレー」の具材は鶏肉のみであったが、もしかしたら、以前、お店にいたコルカタ出身のコック氏が作るオリジナルのナス・ほうれん草入り「マスタードチキンカレー」の作り方を覚えていたのかもしれない。ナス・ほうれん草抜きでも充分に美味しく、期待していたとおりであったが。
調理してくれたコック氏にお礼を述べ、店を出た。

 こうした名物カレーがメニューから消えるのは、本当に残念でならない。またどこかの機会に、あのコルカタ出身のコック氏と、彼が作る「マスタードチキンカレー」に再会できることを祈りつつ帰路につく。
仕事もプライベートも、人間関係もいろいろ複雑で大変疲れる毎日ですが、今日という平凡な一日を締めくくる自分への「小さなご褒美」みたいなものでした。
今日という一日、また再び思い出のカレーと巡り会うことができ、ありがとうございます。

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デリー  東京ミッドタウン店六本木・麻布・広尾・白金(六本木)/ インド料理[ 平均:評価:4.2pt4.2pt ]

2008/03/08 総合4pt4pt
デリー の写真

 2007年3月、ちょうど1年前に鳴り物入りで開業した東京の新名所、六本木ミッドタウン。そのミッドタウン地下レストラン街のテナントの1店舗にカレー専門店デリーの2つめの姉妹店であるインドカレー&レストランデリー東京ミッドタウン店がある。六本木一丁目付近にある勤務先からだと、幸いにも容易に徒歩圏内にあるので、平日のランチタイムに訪問してみた。

 ミッドタウン店としてオープンする以前、デリー赤坂店に何度か訪問したことがある。2006年1月末に残念ながら赤坂店はいったん閉店したのだが、1年余りの準備期間を経て、昨年3月に装いも新たにミッドタウン店としての再オープンである。以前の赤坂店を訪問した方であれば、よくご存知と思うが、赤坂店には上野・本店と銀座店にはない純南インド料理がメニュー・アイテムとして提供されていた。当時、同店のシェフで、南インドはカルナータカ州・バンガロールにあるアショカ・ホテルのレストランでチーフ・シェフを務めたというA.J.スワミ氏が得意とする南インド料理の数々がランチをはじめとして楽しめたのだ。そのスワミ氏がいま再びミッドタウン店の厨房で腕を振るっているというので、お目当てはすでにヴェジタリアン・メニューだろうと、予めおおよその目星をつけてやって来た。

 早春の陽気に誘われて、てくてくと散歩がてら、ミッドタウンに向かうこと10分程でB1Fにあるお店に到着。時刻はちょうど12時半過。すでに入り口でOLらしき先客が2組、入店待ちかと思いきや、店員サンが「おまちどうさま~」と、ランチ・ボックスのテイクアウト客だった。店頭の立て看板にランチメニューが掲載されている。カレー2種セット(ライス&チャパティ付き)の下に、デリーでは初めて見るナンとのカレー2種セット(1,600円)もある。上野・本店も銀座店もタンドール(土釜)を厨房に設置していないため(*銀座店では、チャパティとロティは提供しているが。。)、基本的にナンはメニューに提供していないはず。

 へぇ~、ミッドタウン店にはナンがあるのか。。。などと、深く考えずに北インド系のメニューに何となく目が奪われそうになってしまった。が、よくよく、他のメニューをみてみると、「新ランチメニュー:おすすめピュア・ヴェジタリアンターリ ¥1,000円」との表示が写真付きで出ているではないですか。迷わず、もうコレで決まりです。

 店内に足を踏み入れると、イマどきの明るくカジュアルなカフェ・スタイルの内装で、銀座店のようなガネーシャ(象の神様)のオブジェがあったり、木彫りのヒンドゥの神々といった視覚的にインド・インドを醸し出す雰囲気は一切なし。かろうじてインドを連想させるのは、店内のアイボリー・ホワイトの壁に装飾されたメヘンディ・アートのデコラティヴなデザイン画だろうか。(*メヘンディとは、ご存知のように植物のヘナから抽出した黒褐色の顔料をといて、手のひらや手の甲に施す幾何学文様の美しいインドのデザイン模様です。)そのデザイン画も白い壁に控えめに同系色で優美な曲線を施した装飾がなされているため、よく見なければそれとは分からないほどだ。まるでフランスの19世紀末から20世紀初頭に流行したアール・ヌーヴォーをモチーフに現代風にアレンジしたような感じである。さすがミッドタウン店、ミッドタウンのテナント店舗に恥じないお洒落な作りである。(そういえば余談であるが、1Fの庭園側に面したNY発 インド料理の有名店Nもフレンチ・レストランのようでもあり、コース・ランチも盛り付けがヌーヴェル・キュイジーヌの感覚を取り入れたような感じであった。)

 さて、くだんのランチを注文し、待ち時間に参考までにディナータイム・メニューを見せて頂いた。
六本木ミッドタウンという流行のショッピング街というロケーション、若い女性客を中心とした客層からマーケティング的に推察すると、果たして、メニュー構成も上野・本店や銀座店とは異なる内容を採り入れているようだ。デリーを代表する伝統的かつ代表的なカシミール、コルマ、デリー、インド、ベンガルといったおなじみの定番メニュー以外にも、野菜カレー、例えば、「アル・ゴビ」(カリフラワーとじゃがいものスパイス炒め)、ドライカレータイプの「ヴェジタブル・ジャルフレジ」、ほうれん草や青菜系の「サグカレー」、「ビンディ・マサラ」(オクラのカレー)など北インド系でおなじみのヴェジタリアン・カレーのメニュー・アイテムに混じって、南インド料理を代表するカレー・スープ「ラッサム」や、常備野菜で作る優しい味わいの「サンバル」などもある。これらのアラカルト以外にも、A.J.スワミ特製コース「ヴェジタリアン・コース」(スープ・野菜の前菜・ドーサorプーリ、サブジ(野菜の炒め物など)、ヴェジ(野菜)カレー、デザート、マサラチャイの内容で2,800円)というのもある。やはり、メインターゲットの客層に訴求するアイテムとして、油を多用しない、さらっとしたヘルシーな野菜料理を上手く採り入れているようだ。隣のOL客3人組のランチ内容をチラ見してみると、小さな白い容器にもられたカレー2種、白いプレート皿に盛られたライス、チャパティもカフェ風で、分量的にも心もちやや少なめだろうか。普段、上野店や銀座店でとっぷりと盛られたコルマ・カレーやバターチキンをライス大盛りでオヤジの早食いよろしく、がっつり食べている身にとっては、何とも同じデリーの店舗でも極めて対照的である。そうそう、ここは「カフェ風」なのだと、自分に言い聞かせる。

 さて、ややしばらしくて、お待ちかねの純南インド式「ピュア・ヴェジタリアンターリ」が運ばれてきた。(*「ミールス」との表記ではなく、「ターリ」と記載されています)ステンレス製のターリー盆は、よくネパール・レストランで見かける国民的定食ダルバートを盛るような小さくポーション区画がされた容器である。中央に本日の日替わりダル(豆)カレー、その左にほうれん草のサブジ(野菜炒め)・トッピングに赤唐辛子1本添え、自家製アチャール(ピクルス類)、反対側の右側ポーションにデザートのスウィート、インドの豆の粉でつくった和菓子のような感じの小さなバルフィ(かなり甘い)、中央下の一番大きなポーションにライス(パラパラとしたインドのインディカ米 or 普通の日本米どちらかを選択できる)とデリーの薄っぺらいチャパティが3枚付きである。見た目は、現地・南インドの食堂で供される雰囲気を出していて、Goodである。

 さっそく、ダルカレーをパラパラ、ふかふかのインディカ米にかけて食べてみた。ダルは、挽き割りのムング豆か、マスール豆だろうか。チャナ豆(ひよこ豆)よりは小粒で白っぽく、小豆色で赤金時と呼ばれる粒のやや大きなラジマ豆ではない。カレールゥは少しねっとりとした感じがあり、スパイスよりも甘味を感じ、やや褐色みを帯びた土草色をしている。クミン(ジーラ)シードも見える。このねっとり感と豆の甘さは、北インドを旅行した際、ラジャスターン州のジャイプール、現地レストランのヴェジタリアン・ターリで食べたブラックウダド豆のカレーの味わいに似ている感じがした。首都・ニューデリーの中心地、コンノート・プレイスにある「アルカ・ホテル」内の菜食主義レストラン「ヴェガ」でもこれと同じブラックウダド豆を使ったカレーを食べた記憶がある。もっとも、こちらの北インドのダルカレーには、生クリームやバターを使っているので、こってり感があり、カレーが少し冷めてくるとルゥが固まってきて、チャパティやロティにつけて食べていると重たい舌触りがあった。サブジはどうであろうか?赤唐辛子の辛味がほんのり効いているので、ダルカレーとサブジをライスに混ぜこぜにして食べるとちょうどよい。自家製アチャールの酸味も手伝って、チャパティをちぎりながら食べ、ゴハンが進む。最後のチャパティをちぎり、ダルカレーのポーションのフチをぬぐう。完食~。

 と、こんな具合でいつものペースで、あっという間に平らげてしまい、ターリー盆はきれいに片付いてしまった。隣を見ると、OL3人組はおしゃべりしながらまだ食事の最中である。そうか、ここは「カフェ風」であった。ターリー盆が運ばれて食事に夢中になり、「カフェ風」に食べることなど、すっかりハナから忘れてしまっていた。

 オフィスに戻るまで少し時間的余裕がありそうなので、追加でチャイ(400円)をオーダー。スウィーツがかなり甘いので、スティック・シュガーを入れずともチャイにちょうどよい。

 会計は、ピュア・ヴェジのターリ1,000円に、豆カレー大盛り(200円増し:カレー容器は別盛り)とライス大盛り(100円増しですが、上野店のようなライスの分量ではなく、画像にあるくらいです)にチャイでしめて1,700円なり。今日は追加オーダーしたが、南インドのヴェジタリアン・ターリを1,000円で、しかも六本木ミッドタウンで食べれることを考えると、それなりの納得感と満足感は感じられる。私のオフィスの近場では、神谷町の南インド料理店N のバイキングランチ(1,100円と、こちらもかなりお徳)と並んで、かなり使い勝手が良さそうだ。A.J.スワミ氏特製の「ヴェジタリアン・コース」も内容的に気になることだし、これはまた近々、再訪することになりそうです。

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カイバル 銀座、新橋、有楽町(銀座一丁目)/ インド料理[ 平均:評価:4.8pt4.8pt ]

2008/03/04 総合5pt5pt

 銀座一丁目、銀座らしい賑わいから人足が少し外れる「境界」近く、昭和通沿いの一角にたたずむタンドール料理専門店カイバル

 カレー地帯激戦区のひとつである銀座界隈で、人気店・北インド料理グルガオン、京橋にある実力店・南インド料理ダバ・インディアを手掛ける会社が巧妙に仕掛けた戦略が、2006年11月に満を持してオープンした、このグループ3店目となるタンドール料理専門のカイバルである。銀座にひしめく競合店やグループ姉妹店との差別化という観点での店のコンセプトは、きわめて明瞭だ。本場のタンドリー・チキンをはじめ、シークカバブや各種タンドール料理がメインであり、カレーはあくまでサブであって、提供する品目は絞り込み、副次的なメニュー・アイテムに過ぎないとまで言い切る。その意味では、都内初、いや、日本初の「タンドール料理専門店」誕生へのチャレンジだ。

 ほう、では見せてもらおうか。その実力とやらを。と、当時感じたインドカレーフリークの方は多いはずだ。何故か?

昨今のインド・ブームが追い風となっているという背景はあるにせよ、消費者の間には、中華料理のように地方料理(例:北京・上海・広東・四川料理など)の違いが一般に定着している訳ではなく、インド料理全般に限って言うならば、実態として、圧倒的に北インド系(パンジャブ料理、ムグライ宮廷料理系統の店)の店が全体の9割を占めている中で、さらにそのサブ・カテゴリで、メイン・サブを逆転させたメニュー・アイテムで店のウリを差別化して訴求しようという試みに果たして死角はないのだろうか。要は、マーケティング的に最大の標的セグメントに参入するのは無難なアプローチ方法のひとつとしてOK、本来であれば、「焼き物」類がサブで、豊富なバラエティーに富む多くの種類のカレー料理を、おいしくふっくらと焼き上げたナンとともにメインで提供するのが日本でインド料理店を成功裡に展開する上での通常のセオリーであると思う。が、反面、この定石コンセプトでは、従来の北インド系の店となんら変わらない内容になってしまう。しかも、数ブロック先には銀座の中心地に北インド系料理のコンセプトで人気を博しているグルガオンをすでに展開している。新宿や池袋で、それなりの平均的な味と低価格を武器に隣接・多店舗展開をしているチェーン・グループSやGIなどとは、少なくとも同じビジネス・モデルを考えているとは思えない。

 2つ目の着目点は、何だろうか。カイバルの真骨頂であり、最大のセールスポイントは、本場さながらのレベルの高い各種タンドール料理と、こうしたインディアン・バーベキューの肉類、ウェジ類に合わせる豊富な種類を揃えたというワインとの組み合わせによる新しいインド料理の楽しみ方の提案である。

 本場の純インドカレー料理にワインを合わせるという組み合わせは、従来の常識的な価値観からすれば、オーソドックスではない考え方である。各種スパイスをふんだんに用いたカレーに、ブドウの個々の品種がもつ自然で繊細な味わい、上品な香りと芳醇でふくよかな余韻を楽しむワインとは、お互いがお互いの味わいの個性や香りを打ち消してしまうために、本来は料理の組み合わせとしては難しいはずである。とは言え、都内のインド料理屋には、一般にビールもワインもごく当たり前に提供しているが、こうした価値観や味覚の議論以前に、そもそも客側の需要があるから、店にとっては商業主義的に売上の一部になるからという需要と供給の関係がその背後にある。本家大元のインドには、スパイス料理とワインは合わないという、紀元前にさかのぼる先人の長い生活経験上の知恵もあるのだろうが(*古代インドでは、南インドや西インドの海岸地域では、海のシルクロードを通じて、ギリシアやローマとの胡椒交易が古くから開けていた)、それに加えて宗教上の理由から、普段の食事にアルコール類の飲酒は一般的でない。現在でも、ヒンドゥの聖地とされる都市、例えば北インドのハリドワールやリシケシュといった町では、現地の一般的なレストラン・食堂は厳格にノン・アルコール、ピュア・ベジタリアン(純菜食主義料理)を提供している。(*ただし、外国人旅行客しか行かないようなホテルやレストランでは一部例外はある)

 しからば、「カレー」にワインを合わせるという組み合わせは、個人の味覚の趣味や価値観の範疇の話になるので、それらを敢えて否定する訳ではないが、「カレー」にではなく、店のメインのウリである「焼き物」を中心とした料理にワインをマリアージュさせるということを前面に押し出したコンセプトで捉えるならば、消費者にとっては、従来の発想には囚われない新しいインド料理の食事の楽しみ方であって面白いかもしれない。私見ではあるが、成熟化した都内の外食産業で昨今、勢いづいているのは、スペイン・バルである。手ごろな価格帯のリオハの赤に、イベリコ豚の生ハムの切り落としと、つまみのピンチョスで気の置けない仲間と一杯楽しむスタイルが流行している。カイバルの提唱する「焼き物」&「ワイン」の組み合わせは、この「スペイン・バル」スタイルをインド料理版にアレンジしたものと感じるのは私だけだろうか。

 で、それはさておき、肝心な料理はどのようになっているのだろうか。2006年11月のオープン以来、ランチ・ディナーともに数回づつ、計6-7回は訪問したので、その中からいくつかレポートしてみたい。

【ランチタイム訪問:平日】

2006年11月オープン当初のメニュー構成および価格設定が見直され、現在は、下記のように改定されている。

A: 本日のカレー(日替わり3種から1種)900円
B: 3色カレー(日替わり3種)1,100円
C: タンドーリチキンセット(日替わりカレー1種、骨なしチキンティッカ2種と野菜のグリル)1,300円
D: タンドーリヴェジセット(日替わりカレー1種、詰め物をしたポテト、カリフラワー、トマトのグリル)1,300円
E: カイバルスペシャル(日替わりカレー3種、骨なしチキンティッカ2種、シークカバブ、海老)1,500円
すべてのメニューにミニナンとサフランライス付き。(*ライス大盛り無料、プラス100円でミニナンはチーズクルチャ、カブリナンに変更可能)

 で、この日オーダーしたのは、C:タンドーリチキンセット1,300円。カレー1種は、大豆に似た「ロビア豆」を使ったダル・カレーを選択した。ランチで提供されるナンは小振りであることは知っているので、これとは別に「ルーマリ・ロティ」(1枚360円)を1枚追加する。この小麦の薄力粉を塩と少量の水で捏ねて焼いた素朴なロティは私のお気に入りで、ティッカなどを巻いて食べるのに相性がいい。ハンカチのように薄いので、ナンをおかわりしたときのような食べ過ぎにならず、ちょうどよいのだ。

 暫くして、ターリー盆に小ポーションの豆カレー、ミニ・サフランライス、ミニ・ナンと大根とタマネギ、ニンジンの薄切りマリネが添えられて、別の皿にチキンティッカ2種と焼きトマトがスライス・レモン、ミント・ソースを添えた状態で運ばれてきた。ティッカは、通常のタンドリー・マサラに漬け込んだ赤橙色の骨なしチキン2片と、マライ・ティッカのようにヨーグルトに漬け込んだような白いガーリック・チキンティッカ2片が付いてくる。「ルーマリ・ロティ」にティッカと付けあわせのグリーン・サラダを巻いて、ミントソースをつけ、大口開けて頬張ると格別のうまさだ。ダル・カレーはミニ・サフランライスにかけたり、ナンにつけて食べた。記憶によれば、以前は確か、ジャポニカ米のサフランライスではなく、白いバスマティ・ライスを出していたはず。ナンは変わらず、小振りであるが、もっちりと柔らかく充分に食べ応えがある。食後は、マサラチャイ(200円)を追加して、会計はしめて1,860円。オープン当初からカイバルのホール接客を勤めるスタッフの平氏に最近の様子などを伺ってみた。ランチの客入りは半分くらい。今日のように月曜はやや少なめという。グルメ誌やメディアからも取材で取り上げられており、最近では、平日夜はほぼ満席状態だそうだ。やはり、ディナータイムが店の一番のかき入れ時のようだ。
ランチの価格帯もオープン当初は、姉妹店のダバ・インディアがカレー1種セットが800円から提供しているのに比べ、カイバルでは1,300円相当、あるいは、タンドリー・チキン1本付きセットで1,600円と客単価としては割高に感じられたが、価格設定を見直して、上述のようなランチ・メニュー構成にしたとのこと。

【kiewpieくん評価:ランチ☆☆☆】

 ランチの評価であるが、他店に比べ、充実しているティッカ類の「焼き物」を、例えばルーマリ・ロティとともに充分に楽しみたいと思う向きには再訪の価値はあるだろう。ただし、ランチのカレー、サフランライス、ナンといったアイテムだけを目当てにするのであれば、姉妹店のグルガオンもしくはダバ・インディアに行くことをお勧めする。その2店舗とも昼時のOLやサラリーマンの行列を見れば、お手ごろ価格とそれに充分見合う内容であることが容易に想像できると思う。


【ディナータイム訪問:平日夜】

 平日の夜に、会社の同僚と2名で訪問。
まずは、中ジョッキのビールを飲みつつ、オーダーを考える。やはり、外せないのはこの店の看板「カイバル・タンドリー・チキン」(鶏もも肉1本1,370円)だろう。マサラの漬け込み具合、タンドールでの焼き加減において、絶妙である。やや大振りな鶏もも肉1本を4つにカットした状態でサーブされる。スターターとして他にも、「シークカバブ・ハリミルチ」(2ピースで1,260円)を追加した。通常のシークカバブでも充分にうまいが、ここはひとつ、生の青唐辛子とカシューナッツ入りで香辛料の辛味を追求した特製シークカバブを楽しみたい。もちろん、カバブ類のお供は、薄力粉を塩と少量の水で捏ねて鉄板で焼いた「ルーマリ・ロティ」(1枚360円)は、外せない。

 この「ルーマリ・ロティ」が実に「焼き物」類と相性がいい。小麦の薄力粉と塩と少量の水だけで捏ねて、大きな中華鍋をひっくり返したような鉄板に薄く伸ばして焼いた素朴なロティだ。白いハンカチのように四つ折の状態でサーブされる。これを適当な大きさにちぎり、マクドナルドの「マック・ラップ」のように、ティッカだの、シークカバブだの、グリル野菜を包み込み、ミントソースを少量かけて頬張ると格別のうまさだ。これにマサラを振りかけた生のスライス・オニオンや青唐辛子をかじりつつ、頂く。まさにこれぞカイバルの得意とする「焼き物」料理の醍醐味だ。

 次に、野菜も摂取しなくてはと、「チャナダルサラダ」(530円)と「なすの冷製イマーム風」(2ピース:620円)も追加。インド産白ワインもフル・ボトルでオーダーした。(*白ワインは銘柄とブドウの品種を失念しておりました。スミマセン)
で、この「なすの冷製イマーム風」が素晴らしく、とくに印象に残る一品だ。翌日、ネットで調べると、どうやらオリジナルはトルコ料理らしい。地中海料理、あるいはシチリア料理にも通じるものがありそうで、当然、白ワインとも相性がいい。おそらく、ニンニクオイルで炒めたみじん切りのタマネギ、トマトを二つ切りに切り込みをしたナスの中に詰めて、野菜の煮汁とともに蒸し煮にしたものだろう。野菜の滋味深い旨みが充分に引き出されている。

 最後は、「ビンディーマサラ」(オクラとマッシュルームのトマトベースのカレー、青唐辛子トッピング:1,370円)に「タンドリー・ロティ」(1枚420円)を2人でシェアした。かなり満腹状態で会計は、1万2,000円ほど。

【kiewpieくん評価:ディナー☆☆☆☆☆】

 通常の「タンドリー・チキン」や「シークカバブ」以外にも大皿料理である「カイバル・ノンヴェジプレート」(チキンティッカ2種、ラム焼き、海老焼きのセットで1人前@1,200円でオーダーは2人前から)や「カイバル・ヴェジプレート」(自家製パニール(チーズ)、カリフラワー、ポテト、オニオン、トマトなどのグリル野菜のセットで1人前@1,000円でオーダーは2人前から)などがあり、大人数で料理をシェアするといろいろな「焼き物」を楽しめる。ボリュームがあるため、「焼き物」類はそれだけで食べるか、「ルーマリ・ロティ」(1枚360円)のようなお腹にたまらないものをお勧めする。
ここまででビールやワインの杯を重ねると、女性の場合、分量的に充分かもしれない。
男性でも、この後、「本日のビリヤニ」(フル1人前:1,580円で小ポーションのライタ付き、ハーフサイズ950円もある)や各種カレー&ナンを追加すると、かなり満腹のはず。
会計は食事+飲みを含めてひとり7,000円前後だろう。

 最後に店舗について紹介。

 都内のインド料理店の内装としては、天井が高く座席も50席以上とゆったりめである。南欧風あるいは、クッションカバーなども置いてあり、オリエンタル調で小綺麗な感じであり、彼女とのディナータイムのデートといった用途にも充分、違和感がないだろう。
結構な人気店なので、平日夜は予約をしてから行くことをお勧めする。フリーで予約なしに入るのであれば、19:00前、18:45くらいまでに入店してGood Luckを試してみるのもいいだろう。

 サラリーマンの場合、会社絡みの付き合いや幹事役を仰せつかることも多い。こんなとき、飲めて、美味しいタンドール料理を存分に楽しめて、銀座というロケーションのカイバルは貴重であり、ぜひ手帳のグルメ・リストに追加しておきたい一店だ。
私もカイバルの目論む意図と狙いにまんまとハメられたような気がします。読者の方々もぜひ一度体験してはいかがだろうか。

料理
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雰囲気
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バスモティ 浅草・両国-小岩・錦糸町(錦糸町)/ インド料理[ 平均:評価:3.6pt3.6pt ]

2008/02/29 総合4pt4pt
バスモティの写真

 錦糸町・北口にあるインド・バングラデシュ料理店バスモティ
今回は珍しい川魚をメインにした本格的なベンガル料理を試す機会があったので、ご紹介したいと思います。

 最近、私の中ではバングラデシュ=ちょっとしたマイ・ブームである。もちろん、その背景には、バングラデシュの歴史・文化やベンガル料理に対する関心があることは重要な構成要素のひとつになっている。最近の時事ニュースでも、大型サイクロンの発生でベンガル湾に面した南部を中心に大規模洪水被害に見舞われたことや、地球温暖化による海水面上昇で国土の大半が水没の危機に晒されていること、また一方では、低所得者向け小口金融貸付(マイクロクレジット)で「グラミン銀行」総裁ムハマド・ユヌス氏が2006年ノーベル平和賞を受賞したことなどがメディアで報じられている。いずれも環境問題や社会・経済面で日本でも注目を集めるトピックスである。

 きっかけは、昨年10月下旬に「国交樹立35周年」を記念して、JETRO(日本貿易振興会)・バングラデシュ輸出振興庁の主催で開催された見本市・展示会第8回バングラデシュ展
私の現在の勤務先と同じオフィスビルにJETROがあり、その5階フロアでイベントが開催されていた。初日の昼過ぎから後援者である在日バングラデシュ大使館のオープニング・セレモニーでレセプション・パーティーがあったので、野次馬根性でふらふらと会場を覗いてみると、なんと、バスモティのオーナー、アミン・ソヨッド氏にばったりとお会いしたのだ。ベンガル系としては、都内・城東地区にある中核的な存在の店である。記憶を辿れば10年ほど前は、インド・中央アジア料理ターリック(パキスタン系)、2001年に同じパキスタン系でザムザム、2005年秋から現在のオーナーであるバングラデシュ南部・ボリシャル出身のアミン氏の店バスモティへと経営が変わり、地元客を中心に人気店として定着している。私の自宅から自転車で行ける距離なので、以前はよくお店にお邪魔したものだった。

 人懐っこいアミン氏、私の顔を見るなり「こんにちは。お元気ですか? アナタ、ランチはまだ? パーティの料理をたくさん作ってきたから、よかったら食べて行きなさい。」とニコニコしながら、声をかけて下さった。見ると、会場にはホテルのバイキングのように、大きな銀皿に山盛りのタンドリー・チキンやら、幾種類もあるカレーやら、ターメリック・ライスに、カットしたナンが所狭しと並べられている。あたり一面は、カレーが醸し出すエキゾティックなスパイスのニオイがプンプン。。。 いやはや、これは、驚いた。在京バングラデシュ大使館のレセプション・パーティーで料理を提供するほどの御用達の店だったとは。錦糸町バスモティ、恐るべし。。。そんな一件があって以来、アミン氏の店に再び足が向くようになったのだ。

 ベンガル料理といえば、「魚とメシを食うベンガル人」と言われているくらいに、我われ日本人と食性が似ている。が、残念なことに、これまで3年半近く都内の純インド料理店を中心に100軒ほどいろいろ食べ歩きをしてきたが、ついぞ川魚をメインにした本場のベンガル料理にはお目にかかったことがなかった。カジキまぐろやエビ、ミックス・シーフード(冷凍食品?)を使った凡庸なシーフード系のカレーはあるにしろ、大方は日本人向けにマイルドにアレンジされており、とても現地で食べられているようなフィッシュ・カレーとは思えないものばかり。ある時など、自宅からまるっきり正反対の方角の板橋区・蓮根や西台あたりまで電車を乗り継ぎ、目星を付けていたベンガル料理店へいそいそと出掛けて行ったところ、お目当ての「ベンガル・ターリー」が大ハズレだったことがある。小ポーションの3種のカレーはベースが全部同じで単に具材を変えただけ、しかも一番期待していたエビカレーは、おなじみ中華の甘酸っぱい「エビ・チリ」ソースの味そのものだった・・・なんてこともある。お気に入りの店で一回の食事に4,000-5,000円払っても全然惜しくはないのに、こういう時は、1,800円の会計でも惜しいものだ。

 そんな経験もあり、いやがおうにも、一度は、バングラデシュの国魚とされている「イリッシュ」(*調べてみると、ニシン科の30cmくらいの魚でベンガル湾を回遊し、産卵の時期になると淡水の河に遡上するそうです)を食材に用いたおいしいベンガル系フィッシュ・カレーが食べてみたい!という儚い想いは募るばかり。が、しかし、これは?と思うようなフィッシュ・カレーには巡り会えずで、結局、頼むのは北インド系の同じようなマトンやチキンカレーとなる。やはり、扱うのが「魚」なので食材の確保や鮮度の問題もあるのだろうか。

 そんなこんなで、ひたすら北インド系のグレーヴィーでこってりしたカレーばかり普段食べていると、ときたま入るベンガル料理の店で出されるカレーとのビミョ~な「違い」がわかるようになってきた。バングラデシュ系レストランに関しては、そんなに場数を踏んだ訳ではないが、私のこれまでの経験と仮説からすると、バングラ系のカレーは総じてスパイスの使い方がマイルドである。ストレートにシャープでキレのある辛さというイメージではなく、最初の一口では、スパイスをさほど舌に感じるものでもないが、徐々にじんわりと増幅されて、香辛料としての味覚が訴求してくるような特徴を感じる。通常のスパイスに加えて、グリーン・カルダモンのさわやかな芳香、シナモンのほのかな甘みなどが構成要素として加わり、全体にマイルドでやさしい纏まり方、しかし、奥深いコクや味わいを燻し銀のようにじんわりと醸し出しているとでも表現したらいいだろうか。カレー自体は、調理の段階で計量カップ1杯の水を多めに加えるためだろうと思うが、さらっとした汁気の多いカレーに遭遇することが多く、あるいは、鶏の砂肝や骨付きマトンなどの肉を具材に用いたカレーの場合、ルゥとオイルが分離して、赤みがかった油膜が薄っすらと表面に浮かんでいたりする。行き着けの某インド料理店のホール担当氏(北インド出身)に聞くと、ベンガル人は、こうした薄く油膜を張ったようなオイリーなカレーのソース(ジョールと呼ぶのだそうだ)を、パラパラ、ふかふかの白いライスによ~くなじませて食べることを好むのだという。チャパティ(ベンガルでは、ルティ)や、南インドでおなじみのプリもあるが、やはり三度の食事の基本は、白いご飯(シャダバット)だ。

 と、それはさておき、くだんのアミン氏から耳寄りな話を聞いた。近々、魚のカレーを作るという。欣喜雀躍し、指折り数えて「お魚様」が運ばれてくるのを待つこと2ヶ月、早速、お店にディナータイムにお伺いした。まとまった数の参加者を集めての食事会で、そこに私も飛び込みで混ぜてもらったのだ。

で、その日のディナーメニューであるが、以下のような構成である。
パパドとピアジェ(豆の粉とタマネギのかき揚げ)
バングラサラダ(大根、きゅうり、トマト、青唐辛子などのみじん切り和え物)
コピバジ(キャベツの炒め物)
ムラボッタ(大根を練った和え物)
マグルマス・ブナ(川魚のカレー)
カシ・アルーカレー(骨付きヤギ肉とじゃがいものカレー)
サフランライス
シェイピタ(ライスプディングのような甘くねっとりしたデザート)
マサラチャイ

 バジやボッタというのは、現地で「トルカリ」と呼ばれている、身近にある常備野菜を用いたいわゆる「惣菜類」に相当するもので、日本人の感覚だと、小松菜のおひたしに豆腐のおからみたいな「おかず」だろうか。普段の家庭料理には、シンプルなダル・スープや幾つかの「トルカリ」に白いご飯が基本で、そこに魚や肉を用いた料理が加わると、ごちそうとなり、祝いの席の「祝膳」だ。

 で、今日のメインディッシュは、ナマズ(ベンガル語では、パンガーシュと呼ぶ)のカレーに、骨付きヤギ肉とじゃがいものカレーである。
ナマズのカレーは、大きな魚のぶつ切りの切り身なので、生姜やニンニク、タマネギなどのウェットスパイスで下味を付けて、一度素揚げをしてから、トマトなどの野菜をベースに各種スパイスとともに煮詰めて、汁気を飛ばしてある。彩りに万能ネギの緑を散らしてあり、一般に「ブナ(Bhuna)」と呼ばれるややオイリーなドライカレータイプだ。一方のヤギ肉とじゃがいものカレー。こちらも見事にカレールゥと赤い香辛料オイルが分離している。骨付きのヤギ肉は弱火でトロトロと長時間煮込んでいるため、臭みもなく、肉は柔らかい。ホール・スパイスはクローブ、カルダモンとシナモンで甘く深い香り。印象に残った一品だ。

 同席された方の中には、南インドのミールスのように、サフランライスにバジやボッタ、魚カレー、肉カレーをすべて混ぜこぜにして、手食されている方もいた。私はといえば、北インド出身の知り合いのコック氏に聞いたように、サフランライスに、骨付きヤギ肉とじゃがいもの旨みがオイルとともに凝縮されているジョールをまず全体になじませてから、ギトギトのライスを具材と交互に食べてみた。ヤギ肉は骨付きなので、むしゃぶりつく。ナマズは骨付きのまま、ぶつ切りにした大ぶりな切り身で、白身で淡白な味だ。これは、ライスなしでもいける。大皿に盛られたナマズカレーは、ウェットスパイスと野菜の旨みが凝縮されたジョールが余ったので、最後に余ったおかわり用のサフランライスを大皿にぶちまけて、ルゥとライスを充分に混ぜこぜにして皆で頂いた。まさに完食したーという感じ。
最後にチャイを飲みつつ、会費3,000円で本場のベンガル料理を存分においしく頂いた。

 最後に今回、私が参加したバスモティでの食事会について、簡単に触れておきたい。

バスモティでは、母国バングラデシュの教育・就学関係に携わる日本のNPO団体の活動を支援しており、「ベンガル語講座」や「季節のベンガル料理を楽しむ会」の会場としても利用されている。参加者からの参加費の一部は、NPO団体の活動収益金として、バングラデシュ南東部にあるチッタゴン地区にある現地小学校の児童向けの寄付金となる。今回、私が参加した「季節のベンガル料理を楽しむ会」では、通常のメニューではなかなか食べることができないような本場のバングラデシュ料理を参加者とともに「食事会」形式で交流しながら楽しむことができ、かつ、参加費の一部で現地の児童の就学を支援することができるという有益なプログラム活動の一環となっている。

関心のある方は、こちらのリンクから詳細を確認できます。
http://www.geocities.jp/shabjbangla/index.html

ベンガル料理といっても、かなりのバリエーションがあり、なかなか奥が深そうである。今回の体験も、まだまだ「序章」の扉を開いたばかりといったところです。


料理
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ベンガルカレーホーマ 大井・大森・蒲田(六郷土手)/ バングラディシュ料理[ 平均:評価:5.0pt5.0pt ]

2008/02/22 総合5pt5pt
ベンガルカレーホーマの写真

 イスラム式非菜食主義料理で米料理の代表格のひとつである「ビリヤニ」。
ここ最近では、都内でも定評のあるインド料理店、とくにパキスタン料理専門店などでは、本場の味さながらのすばらしくレベルの高い「ビリヤニ」にありつくことができるようになった。これまで「ハズレ」に出くわすことも多く、本来、香り高い「炊き込みご飯」であるはずの「ビリヤニ」が、そうした「ハズレ」の店では、粘り気のあるジャポニカ米をそのままカレーと混ぜ合わされて代用され、中華のチャーハンのごとく「炒めご飯」として、即席に客に提供されることも多かったと思う。本場のイスラム式の伝統的な調理方法である、予め下ごしらえして調理した具材とライスを重ねて蒸すというやり方では、出来上がりまでにゆうに数時間かかるという。両者は全くもって、似て非なるものであることは言わずもがなである。そんなような嘆かわしい状況にある中、「ビリヤニ」に関して、一消費者の立場からすればうれしいことに、ようやく本物志向が定着しつつある。そうした観点で見ると、東京の「インド料理」ジャンルのいまのトレンド動向を知る上でのひとつの重要なキーワードでもあり、静かなるブームの兆しさえ感じられるようだ。

 さて、それはさておき、今回はちょっと珍しい本場バングラデシュならではの「ビリヤニ」をご紹介したい。

 その「ビリヤニ」を提供しているのは、大田区六郷土手にあるベンガル料理の店「ベンガルカレーホーマ」。バングラデシュはダッカ出身の店主モハメド・ホーマユン氏が日本人の奥様と一緒にベンガル家庭料理をふるまうアットホームな店だ。(*店名は、ホーマユン氏の名前から来ているが、世界史に明るい方であれば、ピンとくるであろう。ムガル帝国第2代皇帝フーマユーン(ムガル朝創始者バーブルの息子)である!)2005年4月にオープン以来、着実に地元を中心に固定客を増やしている。無論、私もその中のリピーター客のひとり。この店自慢の料理でもある「ビリヤニ」の評判については、常連客の中には、店で一人前を食べて、さらに数人前を持ち帰りする人(私も含めて)も多いというのも頷ける。さらに心憎いことに、週1回、しかも20食限定・売り切れ御免のメニューである。(店と職場も住所もまるっきり正反対の方角という生活環境にある私自身、電車を乗り継いでディナータイムに伺ったところ、その日はたまたまランチですでに完売!なんてことも実際にありました。トホホ・・・)以来、それに懲りて、ホーマ氏に事前に来店日時を予め伝えておいた上で、店で食べる分と「お持ち帰り」する分とをしっかり確保・確認してから、いそいそと出かけるようになったのです。

 さてさて、そんなホーマ氏が丹精込めて仕込みを行い、スパイスの香り高く炊き上げるホーマ特製の本場バングラデシュ・ビリヤニ。週によっては、炊き込む具材を変えている。これまでに試す機会があったのは、「カシ(骨付きヤギ肉)・ビリヤニ」と「モログ(チキン)・ビリヤニ」のほか、一度などは珍しい小鳩の手羽や胸肉を具材に用いたビリヤニなんかもあった。さすが、もともと独立前の「東パキスタン」として本家の(西)パキスタンと同じムスリム連邦国家を形成していたお国柄、パキスタンに負けず劣らずバングラデシュ料理にも各種スパイスを用いて、素材の旨みを引き出し、さまざまな肉の食材をたっぷり・美味しく味わうというイスラム・ムガル料理の伝統が脈々と受け継がれていることを実感できる。ご存知の方も多いと思うが、本来、「ビリヤニ」や肉の具材の入らない炊き込みご飯である「プラウ」は、ムガル宮廷料理(ムグライ料理)の範疇に入る。バングラデシュ出身のシェフに話を聞いてみると、彼らは口々に、こうした肉を食材に用いた料理は、結婚式や何かのお祝いの宴席で供せられる「ごちそう」であって、普段の食事には口にすることはないという。

 なるほど、我々日本人の理解するところの「ハレ」の日のご馳走というわけだ。となれば、直接の比較が適切かどうかはさておき、使っている米も、日本の「お赤飯」に私たちが普段の日常の食事で一般に食べることのない「もち米」が使われているように、推察ではあるが、バングラデシュの「ビリヤニ」にも、現地の人々が普段の食事で食べている、彼らが「シャダバット」と呼ぶところのパラパラ、ふかふかと炊いた「白いご飯」とは違う別の種類の米を用いているのではないか。聞けば、実際にはホーマ氏の店で提供されている「ビリヤニ」には、バングラデシュ産の高級香り米と呼ばれている「カリジラ」が用いられているという。この「カリジラ」米、前回の私の投稿記事で築地にあるバングラデシュ専門料理店ジャラルを紹介した際にも言及したが、大きさはジャポニカ種の米粒の半分くらいの大きさで、一般によく「ビリヤニ」に用いられている長粒種の「バスマティ」米に比べると、かなり小粒に感じられるお米である。お米の流通卸売業者ではないので、詳しいことはわからないが、くだんのジャラル氏も、ホーマ氏もキロ当たりの単価は「バスマティ」米に比べて、高価であるという。週一回とはいえ、ホーマ氏の店では提供する「ビリヤニ」の仕込みに高価な「カリジラ」米を用いているのである。ホーマ氏曰く、「ウチの店では、カリジラ米を使っているため、ビリヤニを作る原価コストは割高で、とても採算が取れません。だから、毎日、ビリヤニ作れない。いまは週1回作るのが限度カナ。だけど、ウチのビリヤニ、おいしい。と言ってくれるお客さんいる。そういうお客さん、とても嬉しい。バングラデシュの本当の味、お客さんに知ってほしいから、ビリヤニ作るヨ。」

 そういわれてみると、都内のバングラデシュ料理店では、予約の必要な特別メニューとしてだったり、あるいは、常連客向けに「ベンガル料理の食事会」で裏メニューとして、カリジラ米を用いた「ビリヤニ」にはお目にかかったことがあるが、レギュラー・メニューの一品として常時提供しているのは珍しいかもしれない。温厚で実直な人柄のホーマ氏の顔が思い浮かぶ。

  ちなみにホーマ氏の店では、「ビリヤニ」の仕込みにおいて、10種類ほどのオリジナルの調合スパイス(ホール・スパイスを砕いたりして混ぜ合わせ、パウダー状にしたもの)と、10種類ほどのホール・スパイスの全部で合計20種類のスパイスを用いているそうだ。目視レベルで容易に確認できるものに、ベイリーフ、グリーン・カルダモン、クローブ、クミン(ジーラ)・シード、シナモン片(ベンガル語で「ダルチニ」と呼ぶ)が見え隠れしている。彩りはマタール(グリンピース)を散らしている。肉の具材である、モログ(チキン)や、カシ(骨付きヤギ肉)は、臭みを取り除き、肉質を柔らかにするのに、やはりヨーグルトとスパイスで漬け込んでおくという。こうしたスパイス類と具材をバングラデシュ産高級米カリジラで敷き詰め、香り高く炊き上げること約4時間ほどかかると聞いた。出来上がりは、すばらしく香りがよい。お皿に盛られて、目の前に置かれると、湯気がぽわ~んと、何とも言えぬスパイスの奏でる複雑でほのかな良い香りが鼻腔をくすぐる。シンプルにスライスしたレモン汁をかけるもよし。ヨーグルト・サラダである「ライタ」を少しづつ「ビリヤニ」にかけて、その酸味とともに味わうもよし。

ホーマ氏の店では、この他、バングラデシュの代表的な料理が良心的な価格で楽しめる。現地で「ナスタ(軽食)」と呼ばれる簡易な屋台スナック類では、「プリ」(450円:中にカレー風味に炒めたマッシュ・ホテト入り)、ベンガル風なすの天ぷら「ベグニ」(380円)、「シンガラ」(2ピース480円:インドでおなじみの「サモサ」をベンガル語では「シンガラ」と呼ぶ)など。タンドール料理では、大ぶりな鶏もも肉1本を特製マサラで漬け込んだ「タンドリー・チキン」(1本580円)がジューシーで柔らかく特にお勧めだ。他にも、串焼きの「シシカバブ」(1本480円)、ビーフひき肉と豆を混ぜ合わせハンバーグにように焼いた「シャーミカバブ」(380円)などがある。6時間かけて弱火でトロトロと煮込んだ骨付きマトンのスパイス煮込み「ブナ・ゴシ」(700円)はシェフ特製のお勧めの一皿だ。

カレーは、野菜・チキン・キーマ・マトン・ビーフ・シーフード(エビなど)など約25品のうち、日替わりで常時4-5種類ある。北インド系のこってり濃厚でグレーヴィーな重たいカレーとは異なり、こちらのベンガルカレーは、総じて全般にスパイスの使い方がマイルドでやさしい味わいである。やや汁気の多いカレーなので、どちらかと言うと、ルティ(チャパティ)やナンよりもライスにかけて、混ぜてよくなじませてから食べるほうが向いているかもしれない。

ディナータイムのセットは、カレー1種(日替わり4-5種の中から選択)、ナンorライス、グリーンサラダ、アチャール(または野菜の炒めもの)、日替わりの特製スープ付きで900円。カレー2種セットが1,200円、カレー3種セットで1,500円。この他、カレー1種のセットにタンドリーチキン(鶏もも肉1本)付きで、セット価格1,450円もある。
デザートは、ベンガル風ヨーグルトの「ドイ」(250円)の甘く濃厚な味わいを試してみるのもいいだろう。

 本稿でご紹介した「ビリヤニ」について。
基本的に週に1回、金曜もしくは、土曜のランチタイムから限定20食で提供される。売り切れご免のため、ディナータイムなどに確実にオーダーしたい場合は、予め、確認してから訪問することをお勧めする。「ビリヤニ(週替わり)」とグリーンサラダ、日替わりスープのセットで、1,000円があるほか、「ビリヤニ」セットにカレー1種付きで、1,480円がある。

 最後に店舗について。
店内は清潔で明るく、温かみのある洋食屋さんのような雰囲気。インド料理とはまた違ったベンガルの家庭料理の味を一皿一皿丁寧な作りで紹介している良心的な店である。ベンガル料理のジャンルでは都内の貴重な店のひとつ、注目株と思っています。ぜひ、読者の方々にもお勧めしたい「ビリヤニ」だ。

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ラヒ・パンジャービー・キッチン 中野・高円寺-三鷹(西荻窪)/ パキスタン料理[ 平均:評価:3.0pt3.0pt ]

2008/02/19 総合4pt4pt

休み明けには、パキスタンの春の記憶をお届けできたらと思っております。
2月末から3月中旬まで、パキスタン東部・パンジャブ州ラホールに帰省されていた店主のムバッシール・ラヒーン氏の心憎いリベンジ(お店のWebサイトでの予告)である。

 前回、私の投稿レポートに触れた時節の食材である、からし菜を用いたパンジャブ地方の郷土料理「サルソン・カ・サーグ」の続きの話です。

先週、電話で確認を入れてみると、今週からようやく仕込みを始める予定と聞き、3/28(金)の夜、お店に伺ってみた。
まとまった食材がお店に入荷したのがちょうど3/28。実際には、仕込みをしてメニューとして提供できるのが翌29日(土)からとなり、2日間西荻窪通いとなってしまったが。。

「香りがとてもいいんですよ。」とラヒーン氏。さて、どんなものだろうか、と期待が高まる。再訪となった土曜の夜20:30過ぎ、お店のある商店街から一本離れた路地裏には、スパイスの良い香りがあたりに漂っている。
店内はすでに3組の先客が、それぞれオーダーした料理が運ばれてくるのをいまや遅しとばかりに首を長くして待っている状態で、厨房では孤軍奮闘のラヒーン氏の姿が。幸い、先客が出た直後で最後の空きテーブルに着席することができた。が、これはゆうに1時間は待つことになるなぁ。。。(が、皆さん注文されていたカレーは、「カラヒ・ゴシュト」、「マトンキーマ」、「プラウン(海老)マサラ」だったり、と、どうやらお店の定番料理のようでした。)

 で、「お待たせして、スミマセン。」と、私のオーダーしたからし菜のカレー「サルソン・カ・サーグ」と、とうもろこしを挽いた粉で作ったロティ「マキ・キ・ロティ」が運ばれてきたのは、先客2組が会計を済ませてお店を出た小一時間後、ようやく21:30の頃である。
前述の「香りがとてもいいんですよ。」との言葉に違わず、出来立ての湯気がほんのりと立つ「サルソン・カ・サーグ」からは、よい香りがほのかにたち込めており、鼻腔をくすぐる。

 何だろう?この香りは。記憶にはあるが、ちょっと思い出せないので、うまく表現できないのがもどかしい。そんな感じの香りである。香りへの表現のもどかしさを感じつつ、視覚表現をお伝えすると、色合い的には茶褐色にも似た黒々した濃緑色とも言えるようなサグ・ペーストで、具材はからし菜のペーストのみ。日本の食材で喩えてみると、ヴィジュアル的には海苔の佃煮のようであり、あるいは、イタリアン好きの方であれば、都内の高級スーパーで売られているイタリア・リグーリア産の瓶詰めの「ペスト・ジェノヴェーゼ」と言ったら、何となくイメージして頂けるであろうか。スプーンでひと口食べてみると、細かく粉砕された、からし菜の葉っぱや茎の食感を舌に残しつつも、なめらかなペーストとなっており、その味は濃いくちだ。味が塩味とともにやや濃いめに感じられるので、ナンやロティとともに食べないと、それだけでは進まないだろう。

 現地パンジャブ地方では、必ずセットで食べるという、とうもろこしの粉を挽いて作った素朴なロティの「マキ・キ・ロティ」はどうであろうか。大きさは、北インドで一般に食べられているチャパティ大の大きさで、薄さもちょうど同じくらい。ただ、色合いが茶色みを帯びた黄色であり、素材であるとうもろこしを連想させる。やはり、北インドでおなじみのパロタと同じように鉄板に油を薄く引いて焼いたのであろう、ロティの表面には、とうもろこしを細かく挽いたざらっとした感触とともに油分を吸い込んでいる。手でちぎってみると、ナンのような柔らかな、もっちりとした弾力はなく、容易にボロっと崩れるような生地である。一口食べてみた。サクッとした舌触りで、とうもろこしの、あの粒々の、ざらっとした食感でほのかな甘みを感じる。パンジャブの大地で収穫されたとうもろこし。収穫されたとうもろこしを農家の軒先につるして乾燥させ、挽いた粉を捏ねて、おばあちゃんが炭火をおこして鉄板でひとつひとつ焼いた感じがするような、素朴な味わいだ。「サルソン・カ・サーグ」の濃いめの味付けと、「マキ・キ・ロティ」の素朴なほんのりとした甘さが、ちょうどお互いを補完しあっている。
「マキ・キ・ロティ」をもう一枚追加。したり顔で、一瞬、ニコリと微笑んだラヒーム氏が、小さな木の延べ棒でロティの生地を伸ばしている後ろ姿が厨房に見える。

 会計は、からし菜のカレー「サルソン・カ・サーグ」が980円、とうもろこしの粉で作った「マキ・キ・ロティ」が1枚400円で計1,780円。オーダーした料理の待ち時間に出していただいたクミン・シード(ジーラ)と塩味の「ソルテッド・ラッシー」は、サービスして頂いた。
こうした小さな気配りと配慮は、客としてやはり嬉しいものだ。ラヒーン氏にお礼を言い、22:00過ぎにお店を出た。

帰路、お店で出された料理の香り、素朴な味わいを思い起こす。
「サルソン・カ・サーグ」のほのかな香り。少しづつ、思い出してきた。
そうだ、南イタリアで一般に見かけるオリーブオイル漬けのドライ・トマト・・・のような酸味を感じさせるような香り。一見、何の関係性も見出せないのであるが、茹で上がりのパスタに香りのよいオリーブオイルを振りかけて、ドライ・トマト(ポモドーロ・セッキ)を刻んで食べるシンプルな南イタリアの食事での香りを個人的にはイメージした。あるいは、ケッパーと細かく刻んだオリーブのプッタネスカだろうか。。

 ともかく、パンジャブの春の到来をイメージさせる素朴な郷土料理「サルソン・カ・サーグ」と「マキ・キ・ロティ」、食材の調達と入荷があと2回ほど。西荻窪のパキスタン料理店ラヒ・パンジャービー・キッチンで4月初旬まで楽しめるので、お早めに。


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〈2008/2/19 kiewpieくん投稿 一部抜粋〉

 インド・パキスタン両国にまたがるパンジャブ平野に春の訪れを告げる風物詩、からし菜。そのからし菜の葉っぱを食材として作られる時節の郷土料理が「サルソン・カ・サーグ」である。本場では、とうもろこしを挽いた粉で作った素朴なロティの一種である「マキ・キ・ロティ」が添えられるという。東京でそんな素朴な料理を今だけの季節限定で提供しているパキスタン料理専門店はないだろうか? しかも、パンジャブ料理を得意とする店で。

 イギリスの旅行ガイドブックDorling Kindersley Travel GuidesDELHI AGRA & JAIPUR(英語版:www.dk.com)は、かなりローカルなその土地柄ならではの情報をカテゴリーごとに詳細に記述して読者に紹介している。What to Eat(どんな料理を味わうべきか) の項目のページを眺めていたら、ラジャスターン料理とともに、伝統的なパンジャブ料理のレシピが紹介されていた。

 そんな情報を読んでいたら、いてもたっても頭から離れなくなり、2月に入り、さっそく西荻窪にあるパキスタン料理専門店、「ラヒ・パンジャービー・キッチン」におじゃましてみた。 (*以下、RPKと略称)

 店名からも容易に推察できるとおり、パキスタン側のパンジャブ州は古都ラホール出身のムバッシール・ラヒーン氏が母親から教わったというパンジャブ・カシミール地方の家庭料理をふるまう小さな店だ。昨年来、数回訪問しており、私の中では最近の注目株のひとつである。ラヒーン氏が基本的にひとりで厨房を切り盛りしているので、先客の注文が立て込んでしまうと、オーダーした料理が出てくるまでかなり時間がかかるが、辛抱強く待っただけに、期待通りの丁寧な出来栄えの料理を提供してくれるのだ。

(中略)

 会計を済ませ、帰り際にラヒーン氏に、からし菜のカレー「サルソン・カ・サーグ」の話を聞いてみた。郷里のパキスタン・パンジャブ州では、ちょうど今の頃からが季節で、現地では、「サルソン・カ・サーグ」に私たちにもおなじみのバターとトマトベースの豆(ダル)カレー「ダル・マッカニー」と、とうもろこしの粉を挽いて焼いた「マキ・キ・ロティ」を添えて3点セットを食べるのだという。ラヒーン氏、一瞬、故郷の味を思い出すような、遠くを見つめるような顔をされて、「本当は、近々、パキスタンに帰りたいんですヨ。う~ん、残念ながら、いまはいい材料が日本では手に入らないなあ・・・作りたいんだけどネ。」と言っていた。

 残念ながら、今回は「サルソン・カ・サーグ」にお目見えすること叶わずであったが、素晴らしい出来栄えの「マトン・カラヒ」を試してみる機会があり、少しずつではあるが、またひとつパキスタン料理の一端に触れることができたことは幸いであった。
再訪すべき価値あるお店なので、読者の方々にもぜひお薦めしたい。

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