薮原十区への達人のクチコミ
こちらは麻布十番から徒歩5分ほどの東麻布にある、和食屋さん、薮原十区です。
店主さんは長野県木曽郡木祖村薮原出身とのことで店名が薮原十区となったそうです。料理長は竹中陽介氏。でも十区はどこから?という疑問は残りすが、それはさておいて。
以前は富ヶ谷にお店がありましたが、現在は東麻布に移転しました。
カウンターと席がいくつかあり、ガレージっぽい作りのちょっとモダンなお店。でも余計なものが全くなく、店主さんが一人で切り盛りしていました。
ランチもやっているらしいのですが、夜はおまかせコースのみ(¥8,400位)となっています。
●白のグラスワインその1:Bougogne Chardonnay “La Vignee” 2006 par Bouchard Pere et Fils ブルゴーニュ シャルドネ “ラ・ヴィニエ” 2006年 ブシャール・ペール・エ・フィス製
めったに飲まないAOCブルゴーニュですが、意外に和食屋さんで王道な大ネゴシアンものが出てきてびっくりしました。こちらがオーダーしたら初めて開けていたので、皆さん普通の日本酒か焼酎のようです。
割と南と北のブルゴーニュのシャルドネの混ざったような味わいで、厚みを少し感じました。ちょっとだけ白桃のような、樽の香りも感じました。
●インゲンの胡麻よごし:薄めのだし汁に浸し、味をしみこませてから白胡麻に絡ませたもの。
ややしっかりと太さとパリパリっとした食感が残るいんげん。胡麻よこしって結構甘さが強めだったりしますが、こちらは素材の味わいを残して、ほんのりとしたダシの風味で仕上げてあります。胡麻も優しい風味。
●アオリ烏賊:アオリ烏賊の周りに細かく包丁を入れてあり、それに軽く塩をして寝かせてあります。上にはおろしたての山葵がのっています。
佐賀・呼子の烏賊は鮮度が命でコリッコリの食感が身上っていうのがありますよね。それとは対極にあるもので、ねっとりとした食感と全体に染み渡った薄い塩味がよく馴染んでいて、アミノ酸をしっかりと感じる味わい。甘くて、ねっとり...これはたまりませんね。山葵とほんのりとした塩味だけで、醤油は確かに必要ありません。
●お造り:若狭の真子鰈と鳴門のとり貝。
一見色合いが優しい感じでふうん...と地味な感じですが、これがまさに滋味深い味わいでした。若さの真子鰈はコリコリっとしており、少々寝かしてあるので粘りもあって、飴色の身。噛み締めると旨みがジワっと出てきます。鳥貝はしっかりと身が厚くて、これまた食べ応えと独特の食感が楽しいです。つまも大根ではなく、かいわれ大根と胡瓜という、みずみずしいい取り合わせ。すだちをかけて頂きます。少量の醤油も、これにすだちをかければ充分足ります。
●焼き魚:かますです。夏場に旬が来る細長くて淡白ですが、身が繊細な魚。こちらも一手間加えてあり、開いてから一塩して、干してから焼いています。
かますにしてはかなり身が厚く、とても食べ応えがあります。これだけ身がガッチリあると嬉しいです。脂が乗った部分もかます独特の上品さがありながらワイルドな香りも楽しめました。焼き加減も申し分なし。添えてある茗荷の甘酢漬けも手作りでシャキシャキの食感。まさに夏の味満載。
●白のグラスワインその2:Cote du Rhone “La Chasse du Pape Prestige” 2006 コート・デュ・ローヌ “ラ・シャス・デュ・パプ プレスティージュ” 2006年
コート・デュ・ローヌの広域AOCの白ワインです。こちらもオーダーしてから開けていましたので、あまり注文する人がいないのかもしれません。
“La Chasse du Pape”とは、司祭の箱という意味で、なにか特別なものって感じがする名前です。
広域AOCなので、カジュアルな路線の味わい。ローヌの強い太陽を浴びてよく熟した白葡萄から来る、厚みのある果実感とアルコール感。割とコスメティックでフルーツシロップや缶詰のフルーツっぽい香りがするのはヴィオニエが入っているせいでしょうか。このコスメティックさとアルコール感は和食には合うかどうかちょっと疑問が残りました。
●サザエのつぼ焼き:かなり大降りなサザエを丁寧にした処理してから、ダシや醤油などを足して、炭火で焼いたものです。
サザエの身がなんとも言えない歯ごたえで、生にはない加熱したなんとも言えない食感。ギュギュっと歯を押してくる感じがたまりません。また、軽く醤油とダシ汁が入っていて、そこに更にサザエのダシがでており、少々濃いめの味ながら汁まで飲み干してしまいました。上にちょこっとのっているのは切り三つ葉で添えてあるのはしし唐とすだちです。
●深浦の生もずく:おもむろに取り分け始めたので、なんだろう?と思っていたら、昆布のような、もずくのような?と思ったらもずくでした。
ニュルニュルっとはしているのですが、歯切れがよく、もずく独特のにょろ〜っとした感じがあまりありません。刻んだ生姜が爽やかな後口で、シャキシャキっとした食感。
●野菜の炊き合わせ:それぞれ別々に煮てから、盛り合わせあります。また、器も野菜も適度に冷やしてあり涼しげな一皿。蕪、おくら、南瓜、茄子、オレンジのパプリカが薄味のダシで味付けされています。
どれも野菜の味わいがとてもよく出ていて、食感もしっかり残っています。それぞれに火入れ加減を変えてありました。茄子は一度軽く揚げてから煮てあり、それがまたなんとも言えないふわりとした味わいになっていました。
●ご飯:愛知県産の浅利のと葱の葛寄せ丼。作るところを一通り見ていたのですが、浅利の一番美味しいところで火入れをストップしていて、とても好感が持てました。浅利も身がパンパンに詰まっていて、まさに旬です。伺ったところによると、浅利は旬が段々と変わるそうで、私が伺った時期はそろそろ愛知県産が終わりに近づいていたころとなっていました。
浅利のダシがここまで出るか!とびっくりする程しっかりした味わいで塩味もたっぷり。葱が爽やかで、シャキとした食感が残っていました。また、これは葛でトロミが付いていると思われ、とても上品な舌触りでご飯にもよく絡みます。また浅利の身も柔らかく、ワタに旨みが詰まっていました。
お味噌汁はちぎった木綿豆腐入りで、赤味噌はちょっと長野っぽい味わいがしました。
●デセール:烏骨鶏卵のアイスクリーム。なんとデセールもしっかり手作り。お料理に味醂、砂糖は使いませんが、デセールには砂糖を使っていることはちゃんと伝えてくれました。ちょっと懐かしい感じに仕上げてみました、とのことで、ややシャリっとした食感がある乳脂肪分少なめなアイスクリーム。しかし、烏骨鶏卵の卵黄使用なのでなんとも言えない滋味深いコクがあり、黄味味が主張していました。サッパリしているのですが、コクがある、不思議な味です。1スクープでも満足感がありました。
温かい煎茶を頂き、終了とななりました。これだけ食べて飲んで一人¥10,000位。食べているときにはかなりあっさりした印象だから、後からお腹空くかも...と思いましたが、甘さや塩を過剰に加えていない分、素材の味を噛み締めてじっくりと食べることで、しっかり噛むので結構満腹になりました。それぞれの魚の産地なども教えてくれるので、素材について勉強にもなりました。とても真面目そうなご主人で、そんな人柄とお料理が共鳴しているようにも感じます。滋味深い魚と野菜のお料理をじっくりと食べたい方には向いていると思います。また、海がない県に生まれたからこそ、魚の美味しさを追い求めているとのことで、その姿勢は使っている素材の味わいをみれば一目瞭然です。醤油・味醂・砂糖がしっかり効いた甘辛味に慣れ親しんでいる方だと少々ストイックな味付けに感じるかもしれません。でも、たまにはこういうシンプルな味付けで素材とじっくり向き合うお料理も新しい発見があるのではないでしょうか。(2008/8/5★4)
おすすめメニュー
昼 1,000~3,000円
夜 10,000~15,000円
店主さんは長野県木曽郡木祖村薮原出身とのことで店名が薮原十区となったそうです。料理長は竹中陽介氏。でも十区はどこから?という疑問は残りすが、それはさておいて。
以前は富ヶ谷にお店がありましたが、現在は東麻布に移転しました。
カウンターと席がいくつかあり、ガレージっぽい作りのちょっとモダンなお店。でも余計なものが全くなく、店主さんが一人で切り盛りしていました。
ランチもやっているらしいのですが、夜はおまかせコースのみ(¥8,400位)となっています。
●白のグラスワインその1:Bougogne Chardonnay “La Vignee” 2006 par Bouchard Pere et Fils ブルゴーニュ シャルドネ “ラ・ヴィニエ” 2006年 ブシャール・ペール・エ・フィス製
めったに飲まないAOCブルゴーニュですが、意外に和食屋さんで王道な大ネゴシアンものが出てきてびっくりしました。こちらがオーダーしたら初めて開けていたので、皆さん普通の日本酒か焼酎のようです。
割と南と北のブルゴーニュのシャルドネの混ざったような味わいで、厚みを少し感じました。ちょっとだけ白桃のような、樽の香りも感じました。
●インゲンの胡麻よごし:薄めのだし汁に浸し、味をしみこませてから白胡麻に絡ませたもの。
ややしっかりと太さとパリパリっとした食感が残るいんげん。胡麻よこしって結構甘さが強めだったりしますが、こちらは素材の味わいを残して、ほんのりとしたダシの風味で仕上げてあります。胡麻も優しい風味。
●アオリ烏賊:アオリ烏賊の周りに細かく包丁を入れてあり、それに軽く塩をして寝かせてあります。上にはおろしたての山葵がのっています。
佐賀・呼子の烏賊は鮮度が命でコリッコリの食感が身上っていうのがありますよね。それとは対極にあるもので、ねっとりとした食感と全体に染み渡った薄い塩味がよく馴染んでいて、アミノ酸をしっかりと感じる味わい。甘くて、ねっとり...これはたまりませんね。山葵とほんのりとした塩味だけで、醤油は確かに必要ありません。
●お造り:若狭の真子鰈と鳴門のとり貝。
一見色合いが優しい感じでふうん...と地味な感じですが、これがまさに滋味深い味わいでした。若さの真子鰈はコリコリっとしており、少々寝かしてあるので粘りもあって、飴色の身。噛み締めると旨みがジワっと出てきます。鳥貝はしっかりと身が厚くて、これまた食べ応えと独特の食感が楽しいです。つまも大根ではなく、かいわれ大根と胡瓜という、みずみずしいい取り合わせ。すだちをかけて頂きます。少量の醤油も、これにすだちをかければ充分足ります。
●焼き魚:かますです。夏場に旬が来る細長くて淡白ですが、身が繊細な魚。こちらも一手間加えてあり、開いてから一塩して、干してから焼いています。
かますにしてはかなり身が厚く、とても食べ応えがあります。これだけ身がガッチリあると嬉しいです。脂が乗った部分もかます独特の上品さがありながらワイルドな香りも楽しめました。焼き加減も申し分なし。添えてある茗荷の甘酢漬けも手作りでシャキシャキの食感。まさに夏の味満載。
●白のグラスワインその2:Cote du Rhone “La Chasse du Pape Prestige” 2006 コート・デュ・ローヌ “ラ・シャス・デュ・パプ プレスティージュ” 2006年
コート・デュ・ローヌの広域AOCの白ワインです。こちらもオーダーしてから開けていましたので、あまり注文する人がいないのかもしれません。
“La Chasse du Pape”とは、司祭の箱という意味で、なにか特別なものって感じがする名前です。
広域AOCなので、カジュアルな路線の味わい。ローヌの強い太陽を浴びてよく熟した白葡萄から来る、厚みのある果実感とアルコール感。割とコスメティックでフルーツシロップや缶詰のフルーツっぽい香りがするのはヴィオニエが入っているせいでしょうか。このコスメティックさとアルコール感は和食には合うかどうかちょっと疑問が残りました。
●サザエのつぼ焼き:かなり大降りなサザエを丁寧にした処理してから、ダシや醤油などを足して、炭火で焼いたものです。
サザエの身がなんとも言えない歯ごたえで、生にはない加熱したなんとも言えない食感。ギュギュっと歯を押してくる感じがたまりません。また、軽く醤油とダシ汁が入っていて、そこに更にサザエのダシがでており、少々濃いめの味ながら汁まで飲み干してしまいました。上にちょこっとのっているのは切り三つ葉で添えてあるのはしし唐とすだちです。
●深浦の生もずく:おもむろに取り分け始めたので、なんだろう?と思っていたら、昆布のような、もずくのような?と思ったらもずくでした。
ニュルニュルっとはしているのですが、歯切れがよく、もずく独特のにょろ〜っとした感じがあまりありません。刻んだ生姜が爽やかな後口で、シャキシャキっとした食感。
●野菜の炊き合わせ:それぞれ別々に煮てから、盛り合わせあります。また、器も野菜も適度に冷やしてあり涼しげな一皿。蕪、おくら、南瓜、茄子、オレンジのパプリカが薄味のダシで味付けされています。
どれも野菜の味わいがとてもよく出ていて、食感もしっかり残っています。それぞれに火入れ加減を変えてありました。茄子は一度軽く揚げてから煮てあり、それがまたなんとも言えないふわりとした味わいになっていました。
●ご飯:愛知県産の浅利のと葱の葛寄せ丼。作るところを一通り見ていたのですが、浅利の一番美味しいところで火入れをストップしていて、とても好感が持てました。浅利も身がパンパンに詰まっていて、まさに旬です。伺ったところによると、浅利は旬が段々と変わるそうで、私が伺った時期はそろそろ愛知県産が終わりに近づいていたころとなっていました。
浅利のダシがここまで出るか!とびっくりする程しっかりした味わいで塩味もたっぷり。葱が爽やかで、シャキとした食感が残っていました。また、これは葛でトロミが付いていると思われ、とても上品な舌触りでご飯にもよく絡みます。また浅利の身も柔らかく、ワタに旨みが詰まっていました。
お味噌汁はちぎった木綿豆腐入りで、赤味噌はちょっと長野っぽい味わいがしました。
●デセール:烏骨鶏卵のアイスクリーム。なんとデセールもしっかり手作り。お料理に味醂、砂糖は使いませんが、デセールには砂糖を使っていることはちゃんと伝えてくれました。ちょっと懐かしい感じに仕上げてみました、とのことで、ややシャリっとした食感がある乳脂肪分少なめなアイスクリーム。しかし、烏骨鶏卵の卵黄使用なのでなんとも言えない滋味深いコクがあり、黄味味が主張していました。サッパリしているのですが、コクがある、不思議な味です。1スクープでも満足感がありました。
温かい煎茶を頂き、終了とななりました。これだけ食べて飲んで一人¥10,000位。食べているときにはかなりあっさりした印象だから、後からお腹空くかも...と思いましたが、甘さや塩を過剰に加えていない分、素材の味を噛み締めてじっくりと食べることで、しっかり噛むので結構満腹になりました。それぞれの魚の産地なども教えてくれるので、素材について勉強にもなりました。とても真面目そうなご主人で、そんな人柄とお料理が共鳴しているようにも感じます。滋味深い魚と野菜のお料理をじっくりと食べたい方には向いていると思います。また、海がない県に生まれたからこそ、魚の美味しさを追い求めているとのことで、その姿勢は使っている素材の味わいをみれば一目瞭然です。醤油・味醂・砂糖がしっかり効いた甘辛味に慣れ親しんでいる方だと少々ストイックな味付けに感じるかもしれません。でも、たまにはこういうシンプルな味付けで素材とじっくり向き合うお料理も新しい発見があるのではないでしょうか。(2008/8/5★4)