ル・ショコラ・ドゥ・アッシュへの達人のクチコミ
「モンサンクレール」の一番奥のショコラのコーナーで胡椒poivreを見つけてしまっとき、この店にボンボンを買いに来るのはよそうと決意した。テレビのインタヴューでルノートル氏が「ショコラに胡椒?合うわけないだろ!食えるものしか売らないよ」と発言されていたのに胸を撫で下ろし、常識はまだしっかり通用するのかと意を新たにしたが、実は最後までこの番組を見るとルノートル氏が頭の古いおじさんであることをやんわり示唆しているようにも受け取れて、胸騒ぎをおぼえた。合う合わないはともかく、ショコラという嗜好品が一人歩きをしてやがてスノッビズムと結びつき、ブランド信仰に発展して実質が忘れ去られる恐れは常にある。特にこの国ではそうした傾向が顕著だから、私の日本のショコラに対するスタンスは否定であったり肯定だったりしながら揺れ動いている。ルノートル氏のように「けしからん!」とまで言い切る自信はない。方法はあるのだろうし、表現欲求を抑えつけることは誤りだ。根底に「ショコラ愛でる」気持ちがしっかりあれば、表現者であることが求められる以上、何をどうやってもかまわないはずだ。だが、そうとばかりも言えない。例えば「モンサンクレール」でカロンセギュールというボルドーのグランクリュを封じ込めた特別なショコラを作っていた。私の懸念は、ワインをガナッシュにする以上一旦加熱し沸騰させなければならいのだから、その後にカロンセギュールの風味が残るのか、であった。ワインを料理に使う際、銘柄を問わないのが普通だ。微妙な室温の変化で持ち味が損なわれるのに、加熱後グランクリュがそれを意味するものを持ち得るはずはないのだ。だから、ロブション、ロワゾー、日本では斉須氏などのグランシェフが、銘柄は気にしないし、気にするべきではない、使うなら、南の濃いワイン、と一致した見解を述べる。日本のショコラを巡る現状は、「鹿鳴館の時代の石鹸を無理してチーズとして食べる」情況とどこか似ているのである。
そんな思いを抱えて、ある日ここにチョコっとショコラの視察に訪れた。ワインを使ったヴァージョンで言えば「ルション」があり、グランシェフの意見と同じでほっとした。胡椒もなかった。和風味はいくつかあるが、意外とオーセンティックな品揃えで、たまたま金銭感覚が麻痺していて実際に買ってみることにした。見た目もそうだが、ここのボンボンはよく言えばメゾン・デュ・ショコラを研究し尽くしている、悪く言えばオリジナリティーがない、になる。お勉強の成果をほめるべきなのかどうか、ちょっと判断がつかない。しかしコーティング薄く、口溶けが計算されていて、高品質であることは間違いない。「ルション」は太いワインフレーバーはないが、酸味を生かしている。カプチーノは技巧的。上下の混ざり具合はいい。「ユズ」はミルクチョコで、柑橘系の酸味は出ているし香りも比較的残っているが、皮を外してしまったのは残念。ミルクベースだからか。皮の苦味が欲しかった。「シルバン」のチャリチャリ感は思いっ切りメゾン・デュ・ショコラしている。限定商品の京番茶(今月はないと思う)は、ユニーク。京番茶はぐらぐら鍋で煮出して飲むお茶だから、ガナッシュにするのは的を得ているし、燻した香りがチョコに独特の刺激を与えている。これは限定を解除してもいい秀作。「バナニエ」はベルギー、フランスでも未体験のフレーバー。余韻がすごーーく長く伸びる。間を置いて、ガトーを試した。「シャントネ」は、苦甘(にがあま)がポイント。真っ黒なショーケースの中の異色の存在で、シャンパン風味のホワイトチョコムースを使った新作。このムースは、たぶん卵黄を多めにたっぷりのシャンパーニュでクレーム・アングレーズを炊いてベースを作ったのだろうと思える。煮詰めにはかなりの時間をかけた模様だ。見た目でこれと同じものを作ることは菓子職人ならそう難しくはないが、基礎部分に丁寧な仕事を感じた。この構築能力とセンスはやはりさすが。胡椒に話を戻すと、この店に持ち込むのは慎重を期していただきたい。繰り返すが不可能ではないし、やるべきとも思う。しかしそのためにはチョコと胡椒の間に通う法則性を明らかにする必要がある。それは私にはわかっているが、あえてここでは書かない。
そんな思いを抱えて、ある日ここにチョコっとショコラの視察に訪れた。ワインを使ったヴァージョンで言えば「ルション」があり、グランシェフの意見と同じでほっとした。胡椒もなかった。和風味はいくつかあるが、意外とオーセンティックな品揃えで、たまたま金銭感覚が麻痺していて実際に買ってみることにした。見た目もそうだが、ここのボンボンはよく言えばメゾン・デュ・ショコラを研究し尽くしている、悪く言えばオリジナリティーがない、になる。お勉強の成果をほめるべきなのかどうか、ちょっと判断がつかない。しかしコーティング薄く、口溶けが計算されていて、高品質であることは間違いない。「ルション」は太いワインフレーバーはないが、酸味を生かしている。カプチーノは技巧的。上下の混ざり具合はいい。「ユズ」はミルクチョコで、柑橘系の酸味は出ているし香りも比較的残っているが、皮を外してしまったのは残念。ミルクベースだからか。皮の苦味が欲しかった。「シルバン」のチャリチャリ感は思いっ切りメゾン・デュ・ショコラしている。限定商品の京番茶(今月はないと思う)は、ユニーク。京番茶はぐらぐら鍋で煮出して飲むお茶だから、ガナッシュにするのは的を得ているし、燻した香りがチョコに独特の刺激を与えている。これは限定を解除してもいい秀作。「バナニエ」はベルギー、フランスでも未体験のフレーバー。余韻がすごーーく長く伸びる。間を置いて、ガトーを試した。「シャントネ」は、苦甘(にがあま)がポイント。真っ黒なショーケースの中の異色の存在で、シャンパン風味のホワイトチョコムースを使った新作。このムースは、たぶん卵黄を多めにたっぷりのシャンパーニュでクレーム・アングレーズを炊いてベースを作ったのだろうと思える。煮詰めにはかなりの時間をかけた模様だ。見た目でこれと同じものを作ることは菓子職人ならそう難しくはないが、基礎部分に丁寧な仕事を感じた。この構築能力とセンスはやはりさすが。胡椒に話を戻すと、この店に持ち込むのは慎重を期していただきたい。繰り返すが不可能ではないし、やるべきとも思う。しかしそのためにはチョコと胡椒の間に通う法則性を明らかにする必要がある。それは私にはわかっているが、あえてここでは書かない。