中国家郷料理 餃子房 永利への達人のクチコミ
店構えは大陸っぽいのに、でてくる麻婆豆腐はススム君。中国の特級点心師と雑誌に紹介してあるくせに、蒸篭を開けると、中の小龍包は冷凍食品とそっくり。そんなインチキ本格中華には飽き飽きしていた。オレは中国人が常食している本当の中国料理が食べたい、と心から願っていた。しかし一方では、店構えも宣伝文句も当てにならない、そんな捜索に行き詰まりを感じていた。
そんなときだった。なじみの情報屋からタレコミが入った。客の大半が中国人。大陸で中国料理を食してきた人に、現地そのままの味と語られる店。場所は池袋。山の手線内にありながら、大久保付近と並んで日本のNYと呼ばれる、人種の坩堝。公用語は中国語、韓国語と日本語。その情報屋の話は、信用できると直感したオレは、早速その店へ向かった。
日曜日の昼下がり、雨がそぼ降る池袋北口は人影もまばらだった。オレと相棒のFは手書きの地図を頼りに午後2時、店に到着した。
「永利」。ここだ。中に入ると聞こえるのは中国語とおぼしき言語のみ。ここまでの情報に間違いはない。オレは付近の客の机上の料理をつぶさに観察しながら、出されたメニューと壁に張り出された模造紙、そしてそれらの料理を照らし合わせた。
「先ず・・・前菜だな」情報屋の話にあった、[板春雨と豚挽肉、野菜乗せ辛み胡麻だれ]を注文。昼に飲むビールは旨い。そしてほどなく運ばれてきた、浦安富士ほどもある、今まで見たことのない食材の盛合せ。オレの知っている具はキュウリときくらげ、あとはパクチーぐらいか。味は胡麻だれ風味。しかし、今まで経験のない食感。生暖かい板春雨と冷たいその他の具が混ざり合って、心太とも違う頼りない滑らかさと同時に、コリコリとした歯ざわりを感じる。むう・・これはうまい・・のか?
次にたのんだ[ごろごろゲンコツ豚肉の酢豚]は・・・酢豚なのか?黒い豚肉の塊には甘酸っぱいというよりも、甘甘甘酢酢ぐらいの濃厚なたれが絡まっている。そしてニク本体は、まさにニクそのものであった。かめばかむほど血の匂いが口に広がる。内耳にステッペン・ウルフの「BORN TO BE WILD」が鳴り響いた。間違いない。日本でいう酢豚とこのメニューにかかれている酢豚は、同音異義語だ。
[青菜入り水餃子]を食べても何事も起きなかった。普通にうまい。だが、情報屋によると、これは冷凍食品との事だ。オレはそれがいやでここまで来たのではなかったか。自問自答。
[イカとニンニクの芽の炒め物]は、火を通しすぎないイカの良い旨味と、ニンニクの芽のさわやかな香り、シコシコとシャキシャキの歯ごたえが絶妙の塩加減に支えられて、中国料理の火の使い方に感嘆させられる。しかし、料理の量はやはり暴力的である。
日和ったオレとFは、最後に[ピータン入り中国粥]を頼んだ。お粥など食べに来たのではない。そんな事は十分わかっていた。しかし、安心したかったのだ。未知との遭遇で、いいかげんオレたちの胃は、食意識は、疲れきっていた。果たして、運ばれてきた粥は、ラーメンどんぶりになみなみと入れられ、オレたちは机をタップするほかなかった。
午後3時34分。会計を済ませたオレとFは、入口脇に置いてある大量の豚骨を横目で見ながら、膨張した腹部を抱えつつ、疲れた足取りで階段を上った。オレは、雨の降り止んだ空を背に歩き、そしてひとりごちた。「オレにはススム君がお似合いだぜ。カトきっちゃんだって捨てたもんじゃねえよ。」Fは隣で静かにうなづいていた。
そんなときだった。なじみの情報屋からタレコミが入った。客の大半が中国人。大陸で中国料理を食してきた人に、現地そのままの味と語られる店。場所は池袋。山の手線内にありながら、大久保付近と並んで日本のNYと呼ばれる、人種の坩堝。公用語は中国語、韓国語と日本語。その情報屋の話は、信用できると直感したオレは、早速その店へ向かった。
日曜日の昼下がり、雨がそぼ降る池袋北口は人影もまばらだった。オレと相棒のFは手書きの地図を頼りに午後2時、店に到着した。
「永利」。ここだ。中に入ると聞こえるのは中国語とおぼしき言語のみ。ここまでの情報に間違いはない。オレは付近の客の机上の料理をつぶさに観察しながら、出されたメニューと壁に張り出された模造紙、そしてそれらの料理を照らし合わせた。
「先ず・・・前菜だな」情報屋の話にあった、[板春雨と豚挽肉、野菜乗せ辛み胡麻だれ]を注文。昼に飲むビールは旨い。そしてほどなく運ばれてきた、浦安富士ほどもある、今まで見たことのない食材の盛合せ。オレの知っている具はキュウリときくらげ、あとはパクチーぐらいか。味は胡麻だれ風味。しかし、今まで経験のない食感。生暖かい板春雨と冷たいその他の具が混ざり合って、心太とも違う頼りない滑らかさと同時に、コリコリとした歯ざわりを感じる。むう・・これはうまい・・のか?
次にたのんだ[ごろごろゲンコツ豚肉の酢豚]は・・・酢豚なのか?黒い豚肉の塊には甘酸っぱいというよりも、甘甘甘酢酢ぐらいの濃厚なたれが絡まっている。そしてニク本体は、まさにニクそのものであった。かめばかむほど血の匂いが口に広がる。内耳にステッペン・ウルフの「BORN TO BE WILD」が鳴り響いた。間違いない。日本でいう酢豚とこのメニューにかかれている酢豚は、同音異義語だ。
[青菜入り水餃子]を食べても何事も起きなかった。普通にうまい。だが、情報屋によると、これは冷凍食品との事だ。オレはそれがいやでここまで来たのではなかったか。自問自答。
[イカとニンニクの芽の炒め物]は、火を通しすぎないイカの良い旨味と、ニンニクの芽のさわやかな香り、シコシコとシャキシャキの歯ごたえが絶妙の塩加減に支えられて、中国料理の火の使い方に感嘆させられる。しかし、料理の量はやはり暴力的である。
日和ったオレとFは、最後に[ピータン入り中国粥]を頼んだ。お粥など食べに来たのではない。そんな事は十分わかっていた。しかし、安心したかったのだ。未知との遭遇で、いいかげんオレたちの胃は、食意識は、疲れきっていた。果たして、運ばれてきた粥は、ラーメンどんぶりになみなみと入れられ、オレたちは机をタップするほかなかった。
午後3時34分。会計を済ませたオレとFは、入口脇に置いてある大量の豚骨を横目で見ながら、膨張した腹部を抱えつつ、疲れた足取りで階段を上った。オレは、雨の降り止んだ空を背に歩き、そしてひとりごちた。「オレにはススム君がお似合いだぜ。カトきっちゃんだって捨てたもんじゃねえよ。」Fは隣で静かにうなづいていた。