ビストロ ヴァンボーへの達人のクチコミ
渋谷の喧騒を少しだけ離れた所にその店はひっそりとあった。
「仏蘭西小料理」と書かれた緑色の褪せたテント以外は目立つものは何もない。ただ、ガラス窓に「営業中」とな、小さな札だけが出ていて、漸く営業しているのが判る感じので、入るのには躊躇するかもしれない。古いを通り越して、色褪せた木製のドアをそっと開けると、セピア色に色褪せた一枚の写真の様な小さな世界が動き始める。口髭を生やしたご主人、快活な笑顔の奥様…
テーブルとカウンターを合わせてわずか15席程度のこじんまりとした小さなお店であるが、テーブルに着いた途端に魔法に掛かった様な懐かしさを感じてしまう。
新しくはないけれども、こざっぱりとした店内、磨かれた厨房に掛かる鍋、煉瓦、古びた壁の絵、お店と共に年輪を重ねているだろう椅子やワインラック…
ご主人がきびきびと動く様子を時折見ながら、オーダーしたビーフ・ア・ラ・モード(ライスorパンを付けて1600円)が来るのを待つ。
「熱いのでお気を付けて下さい」
そう云って、ライスと共に運ばれてきたのは、小さな鉄鍋に入った牛肉とタンの入ったコンビネーションシチュー。
立ち昇る湯気が香しい。濃厚なソースは赤ワインに風味がする。
猫舌ではない事に感謝しながら、ソースを啜り、賽の目のお肉を口に運ぶ。
ただただ美味である。肝心の肉やタンは言わずもがなであるが、一緒に供された野菜…特に人参は甘く蕩ける様である。瞬く間に胃袋に収まり、すっかり満足して食べ終わる頃、ご主人が大きなタンを2本、オーブンに入れているのが見えた。
…これからあのタンはどんな魔法に掛かるのだろうか…
そのタンのこれからを見届けられないのを名残惜しく感じながら、席を立つ。
「ありがとうございました」
奥様とご主人がにこやかな笑顔で見送ってくれた。
店のドアの外側は初夏の明るい陽射しが新緑を照らしている。
ふっと振り返ると、その店は何事もなかったのかの様に、ひっそりと、いつもの鄙びた古い佇まいに返っていた。
「仏蘭西小料理」と書かれた緑色の褪せたテント以外は目立つものは何もない。ただ、ガラス窓に「営業中」とな、小さな札だけが出ていて、漸く営業しているのが判る感じので、入るのには躊躇するかもしれない。古いを通り越して、色褪せた木製のドアをそっと開けると、セピア色に色褪せた一枚の写真の様な小さな世界が動き始める。口髭を生やしたご主人、快活な笑顔の奥様…
テーブルとカウンターを合わせてわずか15席程度のこじんまりとした小さなお店であるが、テーブルに着いた途端に魔法に掛かった様な懐かしさを感じてしまう。
新しくはないけれども、こざっぱりとした店内、磨かれた厨房に掛かる鍋、煉瓦、古びた壁の絵、お店と共に年輪を重ねているだろう椅子やワインラック…
ご主人がきびきびと動く様子を時折見ながら、オーダーしたビーフ・ア・ラ・モード(ライスorパンを付けて1600円)が来るのを待つ。
「熱いのでお気を付けて下さい」
そう云って、ライスと共に運ばれてきたのは、小さな鉄鍋に入った牛肉とタンの入ったコンビネーションシチュー。
立ち昇る湯気が香しい。濃厚なソースは赤ワインに風味がする。
猫舌ではない事に感謝しながら、ソースを啜り、賽の目のお肉を口に運ぶ。
ただただ美味である。肝心の肉やタンは言わずもがなであるが、一緒に供された野菜…特に人参は甘く蕩ける様である。瞬く間に胃袋に収まり、すっかり満足して食べ終わる頃、ご主人が大きなタンを2本、オーブンに入れているのが見えた。
…これからあのタンはどんな魔法に掛かるのだろうか…
そのタンのこれからを見届けられないのを名残惜しく感じながら、席を立つ。
「ありがとうございました」
奥様とご主人がにこやかな笑顔で見送ってくれた。
店のドアの外側は初夏の明るい陽射しが新緑を照らしている。
ふっと振り返ると、その店は何事もなかったのかの様に、ひっそりと、いつもの鄙びた古い佇まいに返っていた。