春木屋への達人のクチコミ
雪化粧した荻窪の町を湯気の立つ店に向かって歩いて中に入りマスクとサングラスと帽子とフードと手袋を全部いっぺんに外して席についた。東京に出てきて神保町がいいと聞いて行ってみて腰を抜かし、この店を知るまでラーメンはたべなかった。今では吉祥店にばかり行くようになって随分久しぶりだ。雪の日はラーメン日和とくに春木屋のあぶらはいいはずだと読んでいたがきょうの作り手はこっちの考えを汲んでくれて、何度もお玉を使って寸胴の表面をさらうようにして六個ばかりセットされた丼のあぶらの膜を均等にぐいぐい厚くした。一口目でまた少し変えたと何十回もおなじことをおもっていると気づいて心の中で苦笑するがやはりその正体はだんだんぼやけてきて消えかかる。カウンターの上には追加できるトッピングをリストした掌サイズの衝立を置いてあり、入口近くの三席に座れば左上を見上げる形になる、壁に貼った縦長の紙には見なれない味噌中華の文字が斜めに躍動している。もう一つの変化は暖簾をくぐってすぐに嫌でも目につく引き戸の右上のプラスチック板で写真撮影禁止を告げていた。秘密の素材を詰めたさらしの水藻を思わせる寸胴に生じる小波に抗する動きが物語るように、雪に閉ざされた日は土曜と言えども遠征組は少なく荻窪特有の穏やかな気風のまとまりを感じ取ることができる(2008/2/9)。
★★★★★「富士桜度」にかけてはナンバーワンだろう。仕切りの睨み合いでは負けそうになるし、立会いの出足、突き放しも見事。職人はいずれも足腰が鍛錬されていて、日頃からシコを入念に踏んでいることがうかがえる。麺を投入してからの間合い(そんきょ)にも、磨かれた技に裏打ちされた迫力が滲み、背中には横綱クラスの関取にしか見られない風情がある。サポートする序の口、序二段クラスの若者たちは、鉄砲やぶつかり稽古でさぞや仕事がキツかろうと想像するが、席の配分に気を遣ってくれるし、いつも小銭を懐中に忍ばせていて、客が立ち上がると、さっとおつりを出せるようにスタンバイしている。こうした現在の店の雰囲気に圧倒されてしまう人も少なくない。圧倒されるのは、主に女性と子供。こんなことを書くと、小泉チルドレンの女性議員にしかられてしまいそうだが、土俵はもともと女人禁制、それでいいのではないかとおもう。しかし、先代、すなわち創業者の今村氏は富士桜系ではなかった。笑みを絶やさず、まんべんなくカウンターの客を見渡して、その笑顔でつつみ込むような感じの方だった。東京で暮らし始めたころ、東京のラーメンのメッカは神保町と聞かされ、今でも盛業中の何軒かに行って、衝撃を受けた。決して東京でラーメンを食べるまいと誓った。しばらくして本物の東京ラーメンは荻窪にアリと教えられ、駅前にあった鰹節たっぷりのラーメンを一口食べて頭痛がして、その後三日間寝込んでしまった。そんなわけで春木屋に辿り着くまでにはかなりの時間を要した。「わからないように味を変えてゆかないと、客の舌の方が上になる」が持論の主人と対面して、ようやく東京にもラーメンの文化があったのだと納得した。
★富士桜度…5
★★★★★「富士桜度」にかけてはナンバーワンだろう。仕切りの睨み合いでは負けそうになるし、立会いの出足、突き放しも見事。職人はいずれも足腰が鍛錬されていて、日頃からシコを入念に踏んでいることがうかがえる。麺を投入してからの間合い(そんきょ)にも、磨かれた技に裏打ちされた迫力が滲み、背中には横綱クラスの関取にしか見られない風情がある。サポートする序の口、序二段クラスの若者たちは、鉄砲やぶつかり稽古でさぞや仕事がキツかろうと想像するが、席の配分に気を遣ってくれるし、いつも小銭を懐中に忍ばせていて、客が立ち上がると、さっとおつりを出せるようにスタンバイしている。こうした現在の店の雰囲気に圧倒されてしまう人も少なくない。圧倒されるのは、主に女性と子供。こんなことを書くと、小泉チルドレンの女性議員にしかられてしまいそうだが、土俵はもともと女人禁制、それでいいのではないかとおもう。しかし、先代、すなわち創業者の今村氏は富士桜系ではなかった。笑みを絶やさず、まんべんなくカウンターの客を見渡して、その笑顔でつつみ込むような感じの方だった。東京で暮らし始めたころ、東京のラーメンのメッカは神保町と聞かされ、今でも盛業中の何軒かに行って、衝撃を受けた。決して東京でラーメンを食べるまいと誓った。しばらくして本物の東京ラーメンは荻窪にアリと教えられ、駅前にあった鰹節たっぷりのラーメンを一口食べて頭痛がして、その後三日間寝込んでしまった。そんなわけで春木屋に辿り着くまでにはかなりの時間を要した。「わからないように味を変えてゆかないと、客の舌の方が上になる」が持論の主人と対面して、ようやく東京にもラーメンの文化があったのだと納得した。
★富士桜度…5