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シェ・カザマへの達人のクチコミ
[投稿日:2004/08/14]
麹町に流れてくる前、海風と首都随一の商業地の風が程よく混ざる一画で働いていたのだが、その時の出来事がトラウマになっていた。地場の商店が強いその街で、ある日、ひげおじさんはまず肉屋でコロッケにソースを掛けてもらい、その足でバケットを買い求めて小脇に抱え、社に戻り、コーヒーを飲みつつ平らげて、散らばったパン屑を捨て、席を立って給湯室に向かうと、女性の囁き声が聞こえてきた。「あのバケットおじさんね…」ほとぼりが冷めた頃、もう一度コロッケとバケットが食べたくなって、両方を小脇に抱えたものの、社には戻らず、民家の固まったじめっとして日当たりの悪い地区に分け入り、雑木林を抜け、うねった坂道を上り詰め、祠を左に迂回しながら更に進んで、ようやく古びた児童公園を見つけた。腰掛けてバケットを頬張ると、どこからか女性の談笑の声が流れてきて、さらに近づいてくる。ひげおじさんが「三人娘」と呼んで恐れていた女性たちだった。目が合うと三人は表情を凍らせて黙りこくり、そのまま通り過ぎ、ひげおじさんはバケットにかじりついたままその姿を横目で追った。ややあって青空に哄笑がこだましたことは言うまでもない。そんなことがあって、「カザマ」のバケットに目が行っても買うには至らなかった。久々に訪れた麹町で、バケットを買い求めて歩きながら思う存分に頬張った。皮がぱりっとしていた。ようやく肩の荷が下りた気がした。それにしても、職場でバケットを食べるという行為が、なぜあれほどラジカルに受け取られてしまったのか、その理由は今もってよくわからない。


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