タダシ ヤナギへの達人のクチコミ
「タダシ・ヤナギの弱点見たり」
この店の旬は春から夏にかけてまでで、冬場はがたっと落ちるんじゃなかいか。ムースは嫌いでシェフの考え方とはもともと百八十度違うわけだけれど、この店のケーキは、ソフト感、やさしい口溶け、淡い味を強調したお菓子作りも悪くないと思わせてくれたし、「クープドモンドとかなんとかのコンクールで賞を取ったなんていうのは、食べ物屋の勲章にはならん!」と長い間おもってきたから、まあそんなに頑なにならなくてもいいか、とややガードをさげたりして、自分自身「口溶けのやさしいソフトな人」になろうとこの半年間努力してもきた。だがそんなに簡単にポリシーを変えてはいけないと再認識させてくれたのが、皮肉にもタダシヤナギの二品だ。
「オペラ モデルヌ」はまずモデルヌの前にオペラそのものを履き違えている。濃いコーヒーのシロップを気泡たっぷりのビスキュイに含ませることがポイントだが、これは断じてシロップでべしょべしょにすることではない。適切な量を時間かけて刷毛で少しずつ丹精こめて塗ることでしか実現できない、フォークで軽く押すとシロップが滲み出てくるというデリケートな一線とは程遠かった。しかもコーヒーの香り苦味とも不足していて、リキュールの成分が極度に抑えられていて、突出しているのはポンシュではない砂糖水であった。チョコレートの豊饒感はどこをどう切り取っても湧き出ることはなく、各層が響き合わず、一体感が見られず、バタークリームは寒さで縮こまっていた。「キャラメル ノワゼット」はアイデア自体のユニークさは買える。ナッツの焼き菓子の上に洋梨のムースを積み上げて新しい建物を創作したわけだが、方程式が頭の中で完成され過ぎていた。そのものズバリを形にしてもいける、と判断した勘違いの原因はそこにある。もう少しアイデアを得た段階で自由度を持たせていれば、現場で試作に入ってからの調整に時間をかけられたし、大幅に違った結果がもたらされたことだろう。ナッツと洋梨の相性がいいことはよく知られている。だが、このハーモニーを軸にお菓子を仕立てる場合、洋梨のフレーバーの立ち上がりを抑え込むくらい強めのキャラメリゼを使う必要がある。なぜなら、苦味が両者の「繋ぎ」として作用するからだ。皿にナッツの焼き菓子と隣に生の洋梨の薄切りを並べて一緒に並べて食べたときと、柔らかめに煮込んで黒焦げの一歩手前のキャラメルソースをかけた洋梨を合わせたときとで、どちらがいいかを試してみれば、この組み合わせで苦味がポジティブに作用するかネガティブに作用するかは自ずと明らかになる。「繋ぎ」を疎かにしては、イメージの像においても生地本体とムース部分はばらけてしまうのである。冬場はこってり感、重厚感が好まれる季節だ。こうした要素をお菓子作りの要諦にかつて取り入れたことがなかったという弱みを計らずも露呈する結果と言えないだろうか。
この店の旬は春から夏にかけてまでで、冬場はがたっと落ちるんじゃなかいか。ムースは嫌いでシェフの考え方とはもともと百八十度違うわけだけれど、この店のケーキは、ソフト感、やさしい口溶け、淡い味を強調したお菓子作りも悪くないと思わせてくれたし、「クープドモンドとかなんとかのコンクールで賞を取ったなんていうのは、食べ物屋の勲章にはならん!」と長い間おもってきたから、まあそんなに頑なにならなくてもいいか、とややガードをさげたりして、自分自身「口溶けのやさしいソフトな人」になろうとこの半年間努力してもきた。だがそんなに簡単にポリシーを変えてはいけないと再認識させてくれたのが、皮肉にもタダシヤナギの二品だ。
「オペラ モデルヌ」はまずモデルヌの前にオペラそのものを履き違えている。濃いコーヒーのシロップを気泡たっぷりのビスキュイに含ませることがポイントだが、これは断じてシロップでべしょべしょにすることではない。適切な量を時間かけて刷毛で少しずつ丹精こめて塗ることでしか実現できない、フォークで軽く押すとシロップが滲み出てくるというデリケートな一線とは程遠かった。しかもコーヒーの香り苦味とも不足していて、リキュールの成分が極度に抑えられていて、突出しているのはポンシュではない砂糖水であった。チョコレートの豊饒感はどこをどう切り取っても湧き出ることはなく、各層が響き合わず、一体感が見られず、バタークリームは寒さで縮こまっていた。「キャラメル ノワゼット」はアイデア自体のユニークさは買える。ナッツの焼き菓子の上に洋梨のムースを積み上げて新しい建物を創作したわけだが、方程式が頭の中で完成され過ぎていた。そのものズバリを形にしてもいける、と判断した勘違いの原因はそこにある。もう少しアイデアを得た段階で自由度を持たせていれば、現場で試作に入ってからの調整に時間をかけられたし、大幅に違った結果がもたらされたことだろう。ナッツと洋梨の相性がいいことはよく知られている。だが、このハーモニーを軸にお菓子を仕立てる場合、洋梨のフレーバーの立ち上がりを抑え込むくらい強めのキャラメリゼを使う必要がある。なぜなら、苦味が両者の「繋ぎ」として作用するからだ。皿にナッツの焼き菓子と隣に生の洋梨の薄切りを並べて一緒に並べて食べたときと、柔らかめに煮込んで黒焦げの一歩手前のキャラメルソースをかけた洋梨を合わせたときとで、どちらがいいかを試してみれば、この組み合わせで苦味がポジティブに作用するかネガティブに作用するかは自ずと明らかになる。「繋ぎ」を疎かにしては、イメージの像においても生地本体とムース部分はばらけてしまうのである。冬場はこってり感、重厚感が好まれる季節だ。こうした要素をお菓子作りの要諦にかつて取り入れたことがなかったという弱みを計らずも露呈する結果と言えないだろうか。