ジャイヒンドへの達人のクチコミ
「ダールブジヤ」を頼んだら、ベビースターラーメンみたいな油で揚げた切れ切れのヌードルが出てきた。ところどころに胡瓜と赤ピーマンのみじん切りが散らされている。コレッテ…とメニューの説明を読み始めたら、お店の人が「こういうのもあるんですよ」とのこと。ホント?(笑)。カレーは「マトンドピアジャ」、インディアンブレッドは大根のパロータ(プラタ、パラタなどいろいろな表記があるようだが、ほぼ同じものと考えていた)。カレーがすぐに出てきて、おやっとおもった。私は自分でインディアンブレッドを少々焼くので、詰め物入りの系統は時間がかかるのを知っていた。時計を見ていたわけではないが、やはりパロータが出るまで8分から12分くらいかかってしまった。食べ初めの時点で、カレーの温度は、おそらく60度以下、かろうじて40度以上というところ。これでパロータが上出来なら救いもあったが、粉っぽく、生焼けなのは明らか。同心円の切れ込みも入っていない。縁の部分は、横から見ると半分ほどが水分が抜け切らず、透明な状態だった。人間はこのような生地を消化する力をもっていないので、食の安全みたいなところからも疑問を感じた(料理人はカットした時点で気づいたはず)。しかも…詰め物の大根が…入っていない!(笑)。みじん切りの香草、ピーマン、タマネギは入っていて、大根ももしやみじん切りにしたのかと思い、フィリングをスプーンで削り取って口に入れて前歯のみで咀嚼して目をぱちぱちさせてみたが、確認はできなかった。みじん切りが細か過ぎた?焼成で溶けてしまった?UFO?入れ忘れ?どうでもよさそうな客(私はそう見られることがすごく多い)だから?詳細は不明(笑)。
このこととは別にディナーメニューをざっと見ての感想を記しておきたい。
前菜(スナックを含む)、つまみ、サラダ、インディアンブレッドの種類の多さは十分過ぎるほど。しかるべき状態で供されれば満足度は高いと思われる。ノンヴェジタリアン向けのカレーは、バリエーションが豊富なようで、メニューの説明書きからソースの違いを把握できない。色、特徴的なスパイス、乾いた感じかさらさらかなどを、もっとわかりやすく書いた方がいいだろう。地方名はカシミールくらいで、定番がいくつか抜けている気もした。特にチキンではキーマ系がたしか3種類あったわりに、タンドール焼した肉を使ってさっと煮込む料理がなかったのは残念。マトンでは、普通のマトンカレーと「マトンドピアジャ」の両方で「カシューナッツのペーストを」とあったが、むしろそれが必要なのはコルマで、「ドピアジャ」は字義の上からも「飴色に炒めたタマネギをふんだんに入れる」ことが必要で、説明にやや妥当性を欠いていたし、味の点でもそれは感じられなかった(温度が下がったので油の分子運動が弱まり、スパイスの活性度も低くなってしまっていたためもあるだろう。適切な温度であれば、普通のマトンカレーとしては水準以上の出来と思われた)。チキン、マトンと比べると、野菜カレーは充実している。手間のかかる「コフタ」があったし、「アルゴビ」もエントリされていた。「ダールマッカニー」もあった。店との相性が良ければだが、このあたりから自分のお気に入りを拾うことはできるかもしれない。ただ、私の場合相性は悪かった。期待していたお店だけにちょっと残念である。
★
パソコンが壊れて電気街をさ迷い、収穫は何もなかった。ガードレールに腰掛けて手帳を取り出し、鶏冠のマークの付いた店(期待できるインド料理店の意)、「ジャイヒンド」で元気を補給することにした。初めての店で感じるためらいは、一瞬で解消された。「本日のシェフのおすすめ スープカレー」の文字が目に入ったからだ。この星には唐辛子ベルト地帯のようなものがあるのでは、と思い始めたのは、スープカレーと出会って以来で、本場のシェフがどんな腕を見せるかに期待は高まった。
横長のプレートに合わせた、細長く厚みのあるナン、丸いライスの上の小さなレーズン、右端のサラダ、左端のライタ、隙間のシークケバブとタンドリーチキン(腿肉)。別添えの小丼のスープカレー。それぞれの形の変化とバランスの良さ。
ナンは薄力粉多めの配合でふっくら柔らかく、塩味は薄い。他のタンドール料理も、漬かり加減、焼き加減ともに浅い。洗練された調理は、東西の区別なく、控え目の味加減に行き着くのかもしれない。一言で「ライト・エンド・フレッシュ」、これは印象の薄さにつながりかねないが、ギラッと光る赤い油が浮いたスープカレーを一口すすると、深みのあるまさしくインディアンテイスト。各種の豆、ジャガイモを主体とした、野菜から滲み出る旨みを生かしたスープには、奥の方に薬剤師的な営みといえるスパイスの緻密な計算の力が隠れている。札幌発のスープカレーの「このスパイスとこのスパイスをいれちゃいました」的な感覚からすると、行間を読む醍醐味というか、熟練の手品師のように、一手一手がベールで覆われ、前がかりになるとはぐらかされ、あれっと思うと、すっとそのものが姿を現す、といった手際の鮮やかさがある。スパイスの利かせ方に絞れば、札幌の完敗であることを認めなければならない。
トッピングされた生姜の繊細な切り口、野菜の切り揃えられ方など、包丁も冴えていて、増殖中のインド食堂とは一線を画した、都内のエスニックシーンの中では珍しい板前割烹の味と言っていい。
このこととは別にディナーメニューをざっと見ての感想を記しておきたい。
前菜(スナックを含む)、つまみ、サラダ、インディアンブレッドの種類の多さは十分過ぎるほど。しかるべき状態で供されれば満足度は高いと思われる。ノンヴェジタリアン向けのカレーは、バリエーションが豊富なようで、メニューの説明書きからソースの違いを把握できない。色、特徴的なスパイス、乾いた感じかさらさらかなどを、もっとわかりやすく書いた方がいいだろう。地方名はカシミールくらいで、定番がいくつか抜けている気もした。特にチキンではキーマ系がたしか3種類あったわりに、タンドール焼した肉を使ってさっと煮込む料理がなかったのは残念。マトンでは、普通のマトンカレーと「マトンドピアジャ」の両方で「カシューナッツのペーストを」とあったが、むしろそれが必要なのはコルマで、「ドピアジャ」は字義の上からも「飴色に炒めたタマネギをふんだんに入れる」ことが必要で、説明にやや妥当性を欠いていたし、味の点でもそれは感じられなかった(温度が下がったので油の分子運動が弱まり、スパイスの活性度も低くなってしまっていたためもあるだろう。適切な温度であれば、普通のマトンカレーとしては水準以上の出来と思われた)。チキン、マトンと比べると、野菜カレーは充実している。手間のかかる「コフタ」があったし、「アルゴビ」もエントリされていた。「ダールマッカニー」もあった。店との相性が良ければだが、このあたりから自分のお気に入りを拾うことはできるかもしれない。ただ、私の場合相性は悪かった。期待していたお店だけにちょっと残念である。
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パソコンが壊れて電気街をさ迷い、収穫は何もなかった。ガードレールに腰掛けて手帳を取り出し、鶏冠のマークの付いた店(期待できるインド料理店の意)、「ジャイヒンド」で元気を補給することにした。初めての店で感じるためらいは、一瞬で解消された。「本日のシェフのおすすめ スープカレー」の文字が目に入ったからだ。この星には唐辛子ベルト地帯のようなものがあるのでは、と思い始めたのは、スープカレーと出会って以来で、本場のシェフがどんな腕を見せるかに期待は高まった。
横長のプレートに合わせた、細長く厚みのあるナン、丸いライスの上の小さなレーズン、右端のサラダ、左端のライタ、隙間のシークケバブとタンドリーチキン(腿肉)。別添えの小丼のスープカレー。それぞれの形の変化とバランスの良さ。
ナンは薄力粉多めの配合でふっくら柔らかく、塩味は薄い。他のタンドール料理も、漬かり加減、焼き加減ともに浅い。洗練された調理は、東西の区別なく、控え目の味加減に行き着くのかもしれない。一言で「ライト・エンド・フレッシュ」、これは印象の薄さにつながりかねないが、ギラッと光る赤い油が浮いたスープカレーを一口すすると、深みのあるまさしくインディアンテイスト。各種の豆、ジャガイモを主体とした、野菜から滲み出る旨みを生かしたスープには、奥の方に薬剤師的な営みといえるスパイスの緻密な計算の力が隠れている。札幌発のスープカレーの「このスパイスとこのスパイスをいれちゃいました」的な感覚からすると、行間を読む醍醐味というか、熟練の手品師のように、一手一手がベールで覆われ、前がかりになるとはぐらかされ、あれっと思うと、すっとそのものが姿を現す、といった手際の鮮やかさがある。スパイスの利かせ方に絞れば、札幌の完敗であることを認めなければならない。
トッピングされた生姜の繊細な切り口、野菜の切り揃えられ方など、包丁も冴えていて、増殖中のインド食堂とは一線を画した、都内のエスニックシーンの中では珍しい板前割烹の味と言っていい。